ベラルーシの部屋ブログ

東欧の国ベラルーシでボランティアを行っているチロ基金の活動や、現地からの情報を日本語で紹介しています

「チェルノブイリのバックグラウンド」(1) ストロンチウム90

2012-03-17 | 放射能関連情報
 私はミンスク市立の児童図書館内にある日本文化情報センターで働いています。
 同僚である図書館員から
「うちの図書館の貸し出しコーナーにこういう本があるわよ。」
と本を貸してもらいました。
 灯台下暗し・・・。児童図書館で子ども向けの本しかないと思い込んでいた私を許してください・・・。

 借りた本のタイトルを訳してみると「チェルノブイリのバックグラウンド」
 1990年出版なので、チェルノブイリ原発事故が起きて4年目に発行された本、ということになります。
 しかし4年しか経っていないのに、かなり詳しいことが載っていました。特にストロンチウム90についての記述は目を引きました。
 内容を簡単ですが日本語に訳してこのブログに掲載します。

 著者は(執筆当時)ベラルーシ大学助教授のアレクサンドル・リュツコ。専門は物理数学。出版社は「ベラルーシ・ソビエト・百科事典社」です。
 何だか難しそうな内容のことが書かれているのでは? と思ったのですが、児童図書館に置いてあるだけあって、中学生でも分かる(つまり私でも分かる)噛み砕いた文章でした。

 以下、ストロンチウム90についての記述を中心に抜粋しました。( )内の文章は私からのコメントです。

 
・・・・・・・・
 
 ストロンチウム90を含む小麦を製粉し、小麦粉にすると、100あったストロンチウム90の量がおよそ30-70へと減少した。

 ジャガイモ、ビートの皮をむくと含んでいたストロンチウム90が40%減少した。
 セシウム137もほぼ同じ割合で減少した。

 ストロンチウム90を含む牛乳から生クリームを作ると5%しか残らなかった。(95%は乳清のほうへ移行した、ということですね。ただしベラルーシの生クリームは乳脂肪率10%のものが多いです。)

 セシウム137を含む牛乳からバターを作ると、1.5%しか残らなかった。
 サワークリームを作ると、9%残った。
 チーズを作ると、10%残った。
 カッテージチーズを作ると21%残った。

 ストロンチウム90もセシウム137も食肉の中では豚肉が一番蓄積量が低かった。
 
 1986年の事故後の調査ではベラルーシ北部の野生の鹿の肉のほうが、南部の放射能汚染地域で飼育されていた肉牛の肉より10倍多く汚染していた。
 鹿がエサとしている森の苔が高い被ばく量であることが原因である。

 放射能性核種は川や湖の水底にたまりやすい。貝類、甲殻類、水草に放射能は蓄積しやすい。
 
 魚はエサ、そしてえらを通して被ばくする。そこから各種内臓に蓄積していくが、特に高い値で蓄積するのは肝臓である。
 しかし最も危険なのは魚の卵である。
 汚染された魚の身や卵を食べるのはよくない。出汁を取って、スープやブイヨン類を作るのはやめておくこと。

 ジャガイモ、ビート、スイバ、キノコはゆでるとセシウムの50-80%がゆで汁に移行する。
 
 果物は比較的放射能を含まない。しかし種は多く含んでいるので、食べないこと。
 
 1989年の秋にベラルーシ各地で収穫されたリンゴを集めて測定したが、汚染地域でとれたリンゴも「きれい」で食べることができた。
 リンゴは比較的放射能を蓄積しない果物だと言える。

 生の野菜や果物はよく洗う。 
 骨からとった出汁を使った料理は食べる回数をできるだけ減らす。
 危険なキノコは食べない。
 

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 事故から4年後の時点でもちゃんとストロンチウム90のことを研究していたのですね。
 でもこの本の中でも
「ストロンチウムは新陳代謝により体外に排出されるが、そのスピードは非常に遅い。」
「効果的な排出方法はない。」
としています。
 できるだけストロンチウム90を含まない食品を食べるようにし、また調理の下ごしらえに工夫し、またふだんからカルシウム不足にならないようにすることを提言しています。
 

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