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神は人を分け隔てなさらないことが、よく分かりました

神は人を分け隔てなさらないことが、よく分かりました
(使徒言行録10章34節)

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『実践共同体の学習』(読書メモ)

松本雄一『実践共同体の学習』白桃書房

我が国における学習論の第一人者である松本雄一先生による研究書である。
(本書は、日本経営学会賞を受賞している)

ところで、実践共同体とは何か?

松本先生によれば「あるテーマに関する関心や問題、熱意などを共有し、その分野の知識や技能を、持続的な相互交流を通じて深めていく人々の集団」だという(p. 7)

簡単に言うと「学びのコミュニティ」である。

本書では、「自治体マイスター制度」、「陶磁器産地」、「教育サービス会社」、「介護施設における学習療法」に関する事例が分析されており、どれも興味深い。

上記の教育サービス会社とは「くもん」でおなじみの公文教育研究会であり、最後の事例は、その「くもん」が提唱する「学習療法(高齢者の認知症予防のためのプログラム)」を導入した介護施設に関するものである。

最も印象に残ったのは、「介護施設における学習療法」の事例。

ちなみに、学習療法とは「音読や簡単な計算によって脳機能を活性化することで、認知症の予防や改善につなげる非薬物療法」を指し(p. 228)、「くもん学習療法センター」がサービスを提供している。

このセンターに加入した介護施設の職員は、次の4つの実践共同体を通して学習療法について学ぶ。

①月に一度、施設内で、学習療法の実践の様子を報告・共有する「月次検討会」
他施設と交流する「施設見学会」
地域・都道府県単位で事例を報告し交流を図る「事例研究会」
④年1回全国の施設が事例を発表し交流する「学習療法シンポジウム」

つまり、実践共同体が、①施設内、②施設間、③地域間、④全国にまたがっており、これらが重なり合って、職員が「重層的」に学習するしくみになっているのだ。

面白いのは、②や③で他施設と交流した職員が、「学習療法」について学ぶだけでなく、「介護のあり方」や「自分たちの施設の特徴」に気づくところ。松本先生は、これを「二次的意義」と呼んでいる。

要は、越境しながら新しいことを学ぶ過程で、「本業の意味や意義」に気づくわけだ。

本書を読み、「越境学習(領域を超えた学習)」の重要性を感じた。






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『桜桃の味』(映画メモ)

『桜桃の味』(1997年、アッバス・キアロスタミ監督)

カンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞したイラン映画である。

中年のバディ(ホマユン・エルシャディ)は、ランド・ローバーを運転しながら、テヘランの街で人探しをしている。

いったい誰を探しているのか?

それは、自分の自殺を手伝ってくれる人である。

ただし、誰でもよいというわけでもなく、ちゃんとした人を選ぶバディ。断られ続けた末に、おじいさんが引き受けてくれることに。

「誰にだって悩みはある
悩みがあるからといって死んでいたら
今に人間は全滅してしまうよ」


という言葉は響かないのだが、自殺しようとしたおじいさんのエピソードはバディに響く。

果たして彼は自殺を思いとどまるのか?

という点はよくわからないまま終わってしまうのだが、良い映画だった。

今、この時を味わう」ことの大切さが伝わってきた。







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明日できることは 今日するな

J-Powerが発行している雑誌『Global Edge』最新号を見ていたら、小説家の武田綾乃さんが好きな言葉として、

明日できることは 今日するな

が紹介されていた。西洋のことわざらしい。

今日できることは、明日に延ばすな」的な感覚を持っている自分としてはギクッとした。

「武田さんによれば、小説のアイデアを思いつく時と、それを作品としてつくりあげる時にはタイムラグがある。今できる精一杯の力で無理やりまとめようとするより、時間をかけることでもっと完璧な表現ができ、作品の完成度も高まるに違いない。未来の自分ならもっとうまくできる…。そうした熱い作家魂を支える言葉なのだ」

確かに、無理に素早くまとめるより、少し「温めて」「寝かして」おいたほうがよい仕事もある。

「明日やったほうがよい仕事は今日するな」と「今日やるべきことは明日に延ばすな」のバランスが大事だと思った。

出所:『Global Edge』(No. 64, p. 47, 取材・文/ひだい ますみ)
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どうか、あなたのお住まいである天から耳を傾け

どうか、あなたのお住まいである天から耳を傾け、聞き届けて、罪を赦してください
(歴代誌下6章21節)

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じわじわくる小説

先日読んだ『ここは私たちのいない場所』(白石一文著、新潮文庫)の解説を読み、少し驚いた

なぜなら、本作は、解説を書いている編集者の中瀬ゆかりさんのために書かれたものだからである。

「この唯一無二の物語は、いまから四年前、2015年7月5日付のメールに添付され、私の元に届けられた。本文には「つたないものですが、約束していた原稿ができたので送ります。 白石一文」と記されていた」(p. 196)

中瀬さんは、長年連れ添ったパートナー(ハードボイルド作家の白川道さん)を大動脈瘤で亡くしたばかりだったらしい。白川さんが亡くなってから80日間でこの小説が書かれたという。

中瀬さんは言う。

「誰かをどうしようもなく愛したことがある者。大事な存在を喪失したことのある者。そして、子供を持たない者。この三つのどれかに当てはまる人間なら、この小説の顕す人生観とその哲学的なメッセージに共鳴しないはずはない」(p. 197)

この小説を読み終えたときは「?」と感じたのが正直な気持ちである。しかし、物語を反芻するうちに、じわじわと生と死の問題について考えさせられる不思議な小説なのだ。

ちなみに、特定個人のために小説を書いてしまう白石さん。優しい人である。


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『ここは私たちのいない場所』(読書メモ)

白石一文『ここは私たちのいない場所』新潮文庫

50歳で大手メーカーの役員になった芹澤は独身。なぜなら、三歳で妹が亡くなったからである。というストーリーに「?」を感じながら読んだが、実に不思議な小説であった。

それまでとんとん拍子に出世してきた芹澤は、部下による不祥事をきっかけに、あっさりと会社を辞めてしまう。

まず、この行動がすごい、と思った。なぜなら、世の名誉に執着していないからだ。それはたぶん、常に「死」を意識しているからだろう。

一つ、心に残った場面がある。芹澤の大学同期で、商社で活躍している友人が、単身赴任先の南米で飛行機事故により死にかけたときの発言。

「なあ、芹澤…」「上の娘が高二で、下の息子はまだ中一だよ。そんな子供たちを残して俺が死んでしまったら女房だって途方にくれちまうにきまってるだろ」「出世なんてしてる場合じゃないと思ったよ。まじで」(p. 171)

この小説を読み、「死を意識しながら生きる」ことが、「よく生きる」ことにつながる、と思った。

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あなたの鞭、あなたの杖 それがわたしを力づける

あなたの鞭、あなたの杖 それがわたしを力づける
(詩編23章4節)

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『バイリンガル・エキサイトメント』(読書メモ)

リービ英雄『バイリンガル・エキサイトメント』岩波書店

日本語を母語としないアメリカ人であるリービさんは、小説『星条旗の聞こえない部屋』を日本語で書いた人(万葉集の翻訳で全米図書賞という凄い賞もとっている)。ちなみに、彼は日系でもなく、「英雄」は、父親の友人からとった名前である。

そんなリービさんの講演・対談・エッセイをまとめたものが本書。

リービさんは、新宿の路地裏にある木造家屋に住み、和室の書斎で四百字詰め原稿用紙に手書きしながら文章を書く。アメリカ、中国、日本を行ったり来たりしながら、日本語で文章を綴るリービさん。

「和室に座り、原稿用紙のマスに一字一字書き込む。しかし、その作業によって決して「伝統」を求めているわけではない。むしろ縦文字を通して世界の「今」はどのように浮かび上がるのか、それが面白い」(p.135)

「旅に出かけて、もどってくると、旅先で聞いた声音と、目に入った異質な文字が蘇り、いつかは日本語の原稿となる。世界を、「和訳」するように日本語で書くと、その世界はいつも新しく見えるのである」(p. 136)

異なる言葉の世界を行ったり来たりすることで「浮かび上がることに感動」する。それが、バイリンガル・エキサイトメントなのだろう。

確かに、文章を日本語で書くときと、英語で書くときでは「ものの見え方」が違うし、日本語でも、「です・ます調」と「だ・である調」、「横書き」と「縦書き」では「浮かび上がってくる発想」が異なることに気づいた。

本書を読み、「言語間の往復運動」を大事にしたいと思った。





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テレワークと評価・コミュニケーション不安

パーソル総合研究所が実施したテレワーカー1000名に対する調査によれば、「評価不安」と「コミュニケーション不安」が高かったという。

具体的には、次のような内容だ。

評価不安
「上司や同僚から仕事をさぼっていると思われていないか不安だ」38.4%
「上司から公平・公正に評価してもらえるか不安だ」34.9%

コミュニケーション不安
「非対面のやりとりは、相手の気持ちが察しにくく不安だ」39.5%
「相談しにくいと思われていないか不安だ」33.3%

同研究所の青山さんによれば、こうした不安を解消するために、「上司の観察力(部下に関する情報を把握するスキル)を高めること」と「業務進捗・ジョブアサインの透明性を高めること」が大事になるという。

経験する→振り返る→教訓を引き出す→応用する」という経験学習サイクルをしっかり回す工夫をすることで、上司の観察力や業務進捗の透明性が高まるのではないか、と思った。

出所:青山茜「まだれテレワーク職場で発生する評価不安とその解消法」HITO vol.16, p.44-46.
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