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『おみおくりの作法』(映画メモ)

『おみおくりの作法』(2013年、ウベルト・パゾリーニ監督)

地味ではあるが、心に迫る作品。ここ数年で見た映画のベスト1かも。

ロンドンのケニントン地区で民生係をしているジョン・メイ(エディ・マーサン)は44歳独身。

彼の仕事は、担当地区で孤独死した人を調べ、身寄りを探し、葬儀を出し、埋葬すること。たいてい家族は見つからず、メイ一人だけが葬儀に参列することになる。

メイの仕事はとにかく丁寧で、亡くなった一人ひとりのことを考えながら心を込めてみおくっている。今まで孤独死した人のアルバムを(プライベートで)作っているくらいなのだ。

しかし、地区の経費削減のために解雇されることになってしまうメイ。

自分の時間を使いながら最後の仕事をするメイだが・・・

ラストは「そうきたか」という素晴らしい演出。

評価されなくても心をこめて仕事をするメイのプロフェッショナルぶりを見習いたいと思った。

なお、原題はStill Lifeなのだが、邦題はイマイチ内容の良さが伝わらないかも。
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自分の体で神の栄光を現わしなさい

自分の体で神の栄光を現わしなさい
(コリントの信徒への手紙Ⅰ 6章20節)
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『午後の曳航』(読書メモ)

三島由紀夫『午後の曳航』新潮文庫

幼い頃に父親を亡くした13歳の登は、横浜で舶来品を扱う店を経営する若い母と二人暮らし(豪邸なのでお手伝いさんはいるが)。二等航海士の竜二が母親とつき合うようになり、竜二に対する憧れが、やがて軽蔑と憎しみに変わるという物語。

改めて、三島由紀夫の文章力・構成力が常人離れしていることを感じた。

特に、登をマインド・コントロールする友人「首領」の言動が、その後の日本で起こる猟奇的事件を暗示していて怖い。

ちなみに、三島作品はあまり好きではない。なぜなら、ストーリーが計算・計画されているのを感じてしまうから(特に『金閣寺』『仮面の告白』)。

がゆえに、海外で人気があるのだろう。

しかし、今回の作品は自然に読むことができ、好感を持てた。

ただ、衝撃のラストを読むと、やはり三島の計算を感じてしまった。


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『ぐるりのこと。』(映画メモ)

『ぐるりのこと。』(2008年、橋口亮輔監督)

木村多江とリリー・フランキーの演技に鷲づかみにされた。

靴の修理屋を辞めて法廷画家となったカナオ(リリー・フランキー)と小さな出版社に勤める翔子(木村多江)は新婚夫婦。

女癖が悪く頼りないカナオに対し、翔子はしっかりもの。しかし、生まれた子供が亡くなってしまい、翔子は悲しみのあまり仕事を辞め、次第に壊れていく

そんな翔子に、淡々と寄りそうカナオ

胸が絞めつけられるような状況の中で、夫婦のあり方が試される。

木村多江による迫真の演技と、リリー・フランキーの自然体が光っていた。

ちなみに、夫婦のストーリーと並行して、さまざまな法廷シーン(宮崎事件、サリン事件、池田小学校襲撃事件、園児殺人事件等)があり、「人間の業」について深く考えさせられる構成になっている。

たいへな状況にあっても、「寄り添う」ことの大切さをしみじみと感じた。





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すべてはあなたからいただいたもの、わたしたちは御手から受け取って、差し出したにすぎません

すべてはあなたからいただいたもの、わたしたちは御手から受け取って、差し出したにすぎません
(歴代誌上29章14節)

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『蜩ノ記』(読書メモ)

葉室麟『蜩ノ記(ひぐらしのき)』祥伝社文庫

日経新聞で紹介されていたので買ってみた。

葉室麟の作品を初めて読むが、藤沢周平に池波正太郎をミックスしたようなテイストである。つまり、静謐さをベースにしつつ、エンタメ性も入っているという印象。

10年後に切腹を命じされている戸田秋谷(しゅうこく)は、藩の歴史書である家譜を編纂するため、家族とともに向山村に幽閉されているのだが、そこに、監視&編纂補助のために若い藩士・檀野庄三郎が遣わされる。

ちなみに、切腹の理由は「藩主の側室と密通した罪」なのであるが、人格者の秋谷と接するうちに、濡れ衣であることがわかる。果たして秋谷は助かるのか、という物語。

本書を読んで一番感銘を受けたのは、村の子ども源吉の精神性である。

源吉は、秋谷の子どもの幾太郎の友達なのだが、家は貧乏で、おやじは飲んだくれ。しかし、自分の境遇を呪いもせず、おやじを尊敬し、妹や母親を大事にしている。

(ネタバレで恐縮だが)最後に死んでしまうのだけれど、その死に様がすごい(今思い出しても感動してしまう)。

源吉のようになりたいが、難しそうである。



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『プール』(映画メモ)

『プール』(2009年、大森美香監督)

舞台はタイのチェンマイ

プールのあるゲストハウスで働く(経営している?)京子(小林聡美)のもとに、娘のさよ(伽奈)が卒業旅行にやってくる。

この二人が、同じくゲストハウスで働く市尾(加瀬亮)や、近所に住む菊子(もたいまさこ)、母親を探しているビー(シッテイチャイ・コンピラ)と交流するという物語。

さよが滞在している数日間に、少しぎくしゃくしていた母と娘の距離が縮まるという点がメインストーリーなのだが、他にドラマティックなことが起こるわけではない。

チェンマイの街を散策し、買い物し、ごはんを食べる。そんな様子が写されて、映画が終わる。

しかし、なぜか癒されるから不思議である。

それは、観ている側もチェンマイのゲストハウスで過ごしている気持ちになるからだろう。

姉妹作品である『めがね』『かもめ食堂』も観たくなった。




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わたしたちは知っているのです。苦難は忍耐を、忍耐は練達を、練達は希望を生むということを。

わたしたちは知っているのです。苦難は忍耐を、忍耐は練達を、練達は希望を生むということを。
(ローマの信徒への手紙5章4節)

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『にんじん』(読書メモ)

ルナール(中条省平訳)『にんじん』光文社古典新訳文庫

これは読むのがつらい本である。

なぜなら、家庭内虐待の本だから。

ルピック家の次男である主人公は家族や友人から「にんじん」というあだ名で呼ばれており(赤毛でそばかすがあるため)、特に母親からいじめを受けている。

たとえば、にんじんがおねしょをしてしまったときに、小便入りのスープを息子に飲ませるという衝撃的なことまでしてしまう。

そういう話しが延々と続くので読むのを止めようかと何度も思ったが、なんとか読んだ。

というのは、そのような酷い状況の中でも、にんじんは工夫しながら生きる術を身につけていくからである。

解説の中では「自己形成小説」という言い方がされていた。

なお、本書は作者ルナールの自伝的小説である。つまり、本書は、母親に対するリベンジ本なのだ。それだけ虐待が耐え難かったのだろうが、そのような人生を歩まざるをえなかったルナールが気の毒に思えた。





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あなたの名前を呼べたなら

『あなたの名前を呼べたなら』(2018年、ロヘナ・ゲラ監督)

舞台はインドの大都市ムンバイ

建設会社の御曹司アシュヴィン(ビベーク・ゴーンバル)の家(高級マンション)でメイドをしているラトナ (ティロタマ・ショーム)は、19歳で結婚したものの、4か月で夫に死なれてしまった未亡人。

田舎の妹のために仕送りをし、技術を身につけるため、仕事の合間に裁縫教室で学ぶラトナ。夢はファッションデザイナーである。

婚約相手の浮気で結婚が破断となったアシュヴィンとラトナの間に恋が芽生えるが、身分の違いが二人を遠ざける

「彼女の身にもなれ。一生、メイド上がりだと言われて苦しむ」という友人からの忠告が現実的である。

はたして恋の行方は?

とにかく、ハンデを負いながらも前を向いて歩むラトナの姿に感動してしまった。

ちなみに、本作は、インド映画というより、ヨーロッパ映画のような雰囲気がただよっている。

ラストもよかった。




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