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トヨタ式「問題解決シート」

週刊東洋経済2006.1.21号に、トヨタ式の問題解決シートが紹介されていた。このシートの特徴は、A3用紙一枚にコンパクトに書き込む形式になっているところ。文書の書き方もカイゼンを重ねた結果、一目見てパッとわかる形に進化したのがこのシートだ。

問題解決のステップは次の8つに分かれている。
1)問題を明確にする
2)問題をブレークダウンする
3)達成目標を決める
4)真因を考え抜く
5)対策を立てる
6)対策をやり抜く
7)結果とプロセスを評価する
8)成果を定着させる

もう少し具体的に説明すると次のようになる。
1)本来あるべき姿と現状を比較することで問題を明確化する
2)どんな時に、そうした問題が発生したのかを整理する
3)あるべき姿と現状のギャップを埋めるための目標を設定する。測定できる数値目標の形で締め切りを設定することが大事。
4)「なぜ問題が発生するか」を5回繰り返すことで真の原因をつきとめる

ちなみに、ステップ5~8は、PDCAに対応している。
5)真因について複数の対策を立てる
6)対策をやりぬくために、担当者を明確にし実施スケジュールを決める
7)ステップ3で定めた数値目標が達成されたかどうかを評価する
8)成果を定着させるための仕組みの整備について今後の計画を立てる

ここで大切なのは、ステップ4の「真因を考え抜く」ことと、ステップ8の「成果を定着させる」ことだろう。表面的な原因しか考えていないと問題は解決されないし、一時的に成果が出たとしても定着の仕組みを整備しないと、また元に戻ってしまうからだ。

シンプルな形で、継続する。トヨタ式のカイゼンシートは、組織変革を進める上で強力なツールになると思う。
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『口笛吹いて』(重松清)

弟から『半パンデイズ』を薦められて、そのまま本棚に置きっぱなしの状態で2年。どうも読む気がしなかった。しかし、千歳空港の本屋さんで、『定年ゴジラ』を手にとってから、重松清を読むようになった。読ませる作家だなあ、と思う。特に、少年ものが上手い。

その後、『きよしこ』『口笛番長』『最後の言葉』『半パンデイズ』『ニッポンの単身赴任』を読んだが、どれもクオリティが高い。少年ものだけでなく、オジサンものも上手い。僕は、岡山に5年半いたので、小説によく出てくる岡山弁もなつかしいひびきがある。

そして、『口笛吹いて』を読んだ。昔のヒーローが冴えないサラリーマンになっていてがっかりする課長、リストラされたお父さんを負け組み扱いする息子、子供に翻弄されてうろたえる小学校教師、などが出てくる。世の中の弱者と強者、勝ち組と負け組みという視点でとらえがちな構図の中に、一点の希望が描かれているところはさすが。今まで読んだ重松さんの小説とは一味違ったリアルさを感じる作品である。

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私たちは、神の中に生き

『私たちは、神の中に生き、動き、また存在しているのです』
(使徒の働き17章28節)

これは私たち日本人にとって、わかりやすい言葉ではないだろうか。自然界のものは全て神様が作られたものであり、私たちもみな神様によって作られた。生きているというより、生かされている存在である。しかし、どうしても、私たちは自分の力で「生きている」と思ってしまう。自分の力で生きていると思うと、やはり傲慢になってしまうような気がする。
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藤巻氏の挑戦から学ぶ

日経ビジネス2008年2月25日号に、イトーヨーカ堂前取締役、藤巻幸夫氏の記事が載っていた。氏は、伊勢丹のカリスマバイヤーとして名をはせた後、社長として福助を再建させるなどの実績を持つ。2005年からは、イトーヨーカ堂の衣料事業部長として3年間、改革を進めるものの成果が上がらず、身体を壊して職を降りるらしい。

「私の反省などをお話します。一般消費者を相手として仕事をする方々の参考になれば幸いです」という藤巻氏の謙虚な姿勢と、その変革プロセスから、多くのことを学ぶことができる。

藤巻氏自身の分析によると、改革がうまくいかなかった要因は次の通り。
・変革のための人員配置の失敗
・オリジナル商品開発におけるターゲット層の見誤り
・巨大組織ゆえの難しさ

上記の問題点は、組織変革論においてしばしば強調されることと合致する。つまり、組織(特に大きな組織)を変革するためのポイントは、
・強力なチェンジエージェント(変革請負人)あるいは変革チームの結成と
・初期の成功によって、変革に弾みをつける
ことだ。

ヨーカ堂入りする際、鈴木会長から「藤巻チームを100人くらい連れて来い」と言われたものの、実際には60人しか集まられなかったという。ヨーカ堂という巨大組織を変革するのに60人では足りなかったというのが藤巻氏の弁。実際には、外部からの人材だけでなく、ヨーカ堂のキーマンを見つけて、外部と内部の人材を合わせて変革を進める必要があったと思う。その際、外部の専門家と内部のキーマンのベクトル合わせも大事だ。

次に、pbi(ペーベーイー)という戦略商品を開発するとき、ターゲットを30代としたが、実際には50代の顧客が買うケースが多く、服が身体に合わずに多くの在庫が生まれてしまったという。藤巻氏は「イトーヨーカ堂を取り巻く顧客像をつかめていなかった。私のマーケティングが甘かったわけです」と語っている。スーパーマーケット業界と百貨店業界の感覚に大きな差があったようだ。

この事例から言えるのは、組織を変革する際に大切になるのが、「外部人材と内部人材による強力な変革チームを編成すること」と「初期に目に見える成果を上げて、変革にむけて弾みをつけること」。これができたのが、初期における日産のゴーン氏による改革である。

藤巻氏の挑戦は、私たちに、貴重な学びの材料を提供してくれている。
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サーブクォル(SERVQUAL)

サーブクォル(SERVQUAL)とは、サービスの質(service quality)を測定するための尺度のこと。サービス・マーケティングの世界では「超」有名なツールである。先日参加したAMA(American Marketing Association)でも、「SERVQUAL: The First Twenty Years」と題したセッションが開かれていたので、聞いてきた。

この尺度を開発したのはParasuraman(パラシュラマン)、Zeithaml(ザイツマル)、Berry(ベリー)といったアメリカの学者たち。セッションでは、彼らが発表していたのだが、「パラシュラマンは哲学者みたいな風貌だな」とか、「このはしゃぎまくっているおばさんがザイツマルか」など、どうでもいいところに目が行ってしまった。

サーブクォルは、サービスの質を次の5つの次元で測定する。
1)有形性(Tangibles):設備・施設など物理的なサービスはどうか
2)信頼性(Reliability):約束されたサービスが確実・迅速に提供されているか
3)確実性(Assuarance):従業員が専門知識を持ち、信頼できるか
4)反応性(Responsiveness):顧客を積極的に助け、迅速にサービスしているか
5)共感性(Empathy):顧客個人への関心や配慮が行き届いているか

パラシュラマンはこの尺度が開発されてからの20年間を次のように振り返っていた。モデルを作り、それをもとに尺度を開発し、その尺度を修正したのが、最初の6-7年。その後、どのように顧客から情報を収集するか、どのようにサービスを提供する仕組みを作るかが検討された。そして、最近では、インターネット上のサービスの質を測定する試みも行われている、とのこと。

なお、サーブクォルは、いろいろな分野に適用され、レストラン向けDINESERV、ホテル向けのLODGSERV、図書館向けのLibQUAL、インターネット向けのE-SERVQUALなどが開発されている。ちなみに、僕も小樽商大の同僚とホテルにおけるサービスをサーブクウォルを使って研究したことがある。

20年間のSERVQUAL研究の動向を調べた発表では、これまでの研究は、「顧客の視点からの研究⇔経営の視点からの研究」「オペレーションの視点からの研究⇔戦略的な視点の研究」に分けることができ、最近はオペレーション志向の研究が増えているとのこと。

このセッションを聞いて、これまでの流れを理解することができた。ただ、SERVQUALの枠組み自体は固定化されていて、今後、進化していく様子は見られなかった。「もっと理論的に新しい話をしてくれよ」と思いながら聞いていたのだが、自分たちの作ったものはなかなか壊せないのだろう。
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マーケティングの学会

僕は、組織論と心理学とマーケティングの境界領域を研究しているため、それぞれの学会に参加することが多い。今、AMA(American Marketing Association)という米国のマーケティング学会に出席するためにテキサスのオースティンに来ている。初日の土曜日に発表だったため、日曜、月曜とリラックスして発表を聞くことができた。

マーケティングでは、サービス・マネジメントに関心がある。僕の発表テーマは「サービス風土とパーソナリティが、個人の顧客志向に与える影響」である。研究対象は、看護師と旅行代理店の(店頭)販売員だ。要は、彼らの顧客志向(顧客を大事にしたいと思う気持ち)が、彼らの性格によって決まるのか、それとも職場の風土に左右されるのかを明らかにしようとした研究である。

分析の結果、看護師も販売員も次の点で共通していた。
1)風土よりも性格の方が強く影響していた
2)性格の中では、「他人に共感できる特性」と「物事を正確にこなす特性」が大切になる

違っていた のは次の点
1)販売員は「情緒の安定」、看護師は「創造性」が必要となる
2)看護師は、風土の影響をあまり受けない

こうした違いが生じるのは、彼らの仕事の性質とスキルの違いによると思われる。看護師は、いろいろなアクシデントに臨機応変に対応しなければいけないので創造性が必要となり、高度な知識・スキルを持つ専門家であるため、周りの影響を受けにくいのではないか、と考察した。

看護師の顧客志向はサービス風土に影響されにくいという結果が出たが、別の分析をしてみると病院への愛着に強く関係していることがわかった。つまり、職場がサービスを重視するかどうかは、看護師が患者さんを大切にするかどうかにはあまり影響しないが、病院で働き続けたいという気持ちを高める効果があるのだ。

フロアからはいろいろ質問やコメントをもらった。
・看護師にも「情緒の安定」が必要じゃないか?
・パーソナリティにそんなに説明力があったとは驚きだ
・サービス風土には優秀な看護師を惹きつける機能があるのだろう
・サービス風土の影響力が低いのは、日本の文化がそもそもサービス重視だからじゃないか?
などなど。
やはり、発表すると視点も広がって、一人で考えているよりいいなと感じた。

2日目と3日目の発表で印象に残ったのは、「サービス・ドミナント・ロジック」「サーブクウォル、その後の20年」のセッション。やや抽象的な議論だった気もするが、現状が確認できたのがよかった。

ちなみに、日曜日のオースティンはマラソン大会が開かれていたため、街がお祭り気分で、みんな楽しそうだった。
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あなたの宝のあるところに

『あなたの宝のあるところに、あなたの心もあるからです。』
(マタイ6章21節)

先週の礼拝で、牧師さんが引用したこの聖句にギクッとした。「あなたの宝」という言葉を聴いて、自分が最近気になっていることを思い浮かべたのだが、「そこにあなたがの心がありますよ」と言われて、「自分の心はそんなところにあったのか!」と思ってしまったからだ。

ちなみに、この言葉の前には、次のような言葉がある。

『自分の宝を地上にたくわえるのはやめなさい。そこでは虫とさびで、きず物になり、また盗人が穴をあけて盗みます。自分の宝は天にたくわえなさい。そこでは、虫もさびもつかず、盗人が穴をあけて盗むこともありません。』(19-20節)

私たちは、どうしても地上に宝をたくわえようとするけれども、よく考えてみると、たくわえたものを死後の世界に持っていけるわけではない。しかし、地上にしがみついてしまうのが、人間の弱さだ。自分の宝を天にたくわえるようになりたい、と思った。
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 『明るい病院改革』

麻生泰著『明るい病院改革:誰も泣かせない新しい経営』(日本経済新聞社)を読んだ。

著者は、政治家・麻生太郎氏の弟で、麻生ラファージュセメント株式会社の社長だ。麻生グループの系列である麻生飯塚病院の改革をもとに書かれたこの本は、病院改革の一例を知る上で有益だと思った。医者ではなく、企業経営者の視点から書かれているところも特徴とえいる。

ただ、読んでいる途中は、期待した内容とは違い、少々がっかりした。なぜなら、日本の医療政策に対する提言が数多く盛り込まれて、著者の熱い思いは伝わってくるのだが、具体的な病院改革の方法という意味では、他病院との違いがよくわからなかったからだ。

でも、よく考えると、お手軽な処方箋を期待する方が甘いのかもしれないと思った。よい病院を作るためには、地道な改革の積み重ねが必要なのだろう。その意味では、リアルな現状が書かれているといえる。参考になったのは、次の2点。

第1に、病院におけるTQMの導入についてイメージを与えてくれる。飯塚病院は、早稲田大学で経営工学を専攻している棟近教授と共同研究をしているのだが、先生からの寄稿文や巻末の事例紹介が参考になった。

第2に、共同購入、請求漏れ防止、外注化における留意点など、経営者ならではの視点が盛り込まれている。外注化する場合には、ノウハウの蓄積とコスト低減のバランスを考えなければならない点が強調されている。安易な外注化を戒めているのは前回紹介した武氏の著書と共通するところだ。逆に、自前を貫くことが、他病院から業務受託するビジネスチャンスになることも提言している。

本書を読んで感じたことは、病院マネジメント高度化の鍵は事務スタッフが握っているということだ。これは、私が行っている病院の事例研究を通しても感じたこと。コストを低減しつつ、医師が医療に集中し、看護師が現場で良いケアを実践できるようなサービス・マネジメント・システムを整えるのが事務スタッフの責任になる。
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『こうしたら病院はよくなった!』

武弘道著『こうしたら病院はよくなった!』(中央経済社)を読んだ。

武氏は、埼玉県病院事業管理者。「病院事業管理者」とは、病院経営に関するすべての権限を委譲された人のこと。赤字経営だった埼玉県立4病院を3年間で黒字に転換させた彼は「埼玉のゴーン」と呼ばれている。

武氏の変革で特徴的だと思ったのは次の3点。

第1に、類似病院の経営状態を数値で徹底比較し、それをベースに意思決定しているところ(ちなみに、データは「地方公営企業年鑑」から入手している)。例えば、医師、看護師、コメディカル、事務、外部委託にかかる経費の割合を出すと、経営状態の悪い病院と良い病院の差が明確になる。そして、良い病院の経費比率に近づくように、改善を行うのである。

第2に、ムダな経費は削ると同時に、医療の質を高めるために必要な投資を惜しまないところ。変革の3年間では、共同購入や入札制度によって経費を徹底的に削る一方、医療機器購入費は増えている。ただケチればよいというものではなく、使うところには使う姿勢が大切だ。

第3に、職員の意識改革のためにコミュニケーションの機会を増やしているところ。変革の趣旨を説明する会を定期的に開き、職員との意見交換の場を設けている。また、看護部長を副院長にし、医師にボーナス査定制度を導入するなど、モチベーションアップの対策もしっかり行っている。

印象に残ったのは「経営の良い病院は一様に似ているが、経営の悪い病院はそれぞれ異なった要因で経営が悪い」という言葉。武氏の変革手法は病院に限らず、他の組織にも適用できると感じた。

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明日の記憶

千歳空港に本屋さんがある。小樽から千歳空港に着いて、駅からエスカレーターを上がると、チェックインカウンターに着く途中に、この本屋さんがある。小さな書店だが、この本屋さんの小説コーナーが好きだ。

昔から、読む小説は決まっていた。決まった著者(藤沢周平、池波正太郎、三浦綾子、遠藤周作)しか読まないという頑なな態度があったが、ここ数年、いろいろな著者の小説を読むようになった。それも、この本やさんのおかげだ。

一昨日買ったのは、萩原浩著『明日の記憶』。渡辺謙が主演の映画にもなった小説。実は、テレビでこの映画が放映されていたときに、少しだけ見たが、すぐにチャンネルを変えてしまった。50歳で若年性アルツハイマーになった主人公があまりにもいたたまれなくなり、見続けることができなくなったからだ。

しかし、なぜか小説は買ってしまった。萩原さんの小説「メリーゴーランド」を読んだものの、途中で挫折してしまった経験があるが、この小説は一気に読めた。ヘビーなテーマであるにもかかわらず、明るいタッチの文体に救われたところもある。

この小説を読むと、今まで当たり前だと思っていた自分の環境が、いかに恵まれているものであるかがわかる。アルツハイマーに罹った主人公の目を通して、家族の愛が迫ってくる。「普通に暮らす」ことのありがたさが実感できる小説である。

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