一級建築士の「住宅のヒントと秘訣」

注文住宅を考えたら「住宅の考え方が180度変わる」住宅勉強会やセミナー、他では聞けない住宅や建築がわかるブログ。

免振装置と制振装置のデーター偽造について(2)

2018年10月19日 16時22分20秒 | 住宅ノウハウ・実例

前回の続きです。

耐震は、地震に対して建物が被害を受けたり倒壊しないようにするための性能です。
ですから、どの建物であっても、まずこれを満たしているべきです。

その上で、

免振は、地盤と建物の間で揺れを吸収する方法です。

制震は、建物の部材で地震の揺れを吸収する方法です。

ですが、どちらも比較的新しいですし、
本当にデーター通り機能するかどうかは、まだわかりません。

木造住宅の2階建てや3階建ての場合は、免振は費用が掛かり過ぎ
費用対効果が薄いです。

通常の木造の場合は、耐震にプラスするなら制震を加えるのが通常です。


今回の免振装置と制振装置のデーター偽造について

「震度7でも倒壊はしないと思われる」とコメントされているのは、

耐震と免振、制震は別だからです。

耐震をクリアした上で、免振や制震を行っているからでしょう。

とはいえ、揺れが少なくなると損傷は少なくて済みますし
構造材の破壊も少なくなります。

データーを偽造したのは問題外ですが、偽造していなくても
メーカーが出しているデーターを完全には信用しないことです。

車のカタログの燃費データーと実際の燃費とは違うというのと
同じような感覚で、われわれ専門家は受け取らなくてはいけません。

「国交省の基準を満たしていないデーター改ざんは、なおさら問題でしょ」

というコメントを聞きました。

その通りですが、私は国交省の基準も信頼まではしていないので、
設計するときは、もっと安全をみて強くしています。

建築基準法の耐震性を満たしたら

「数百年に1度の稀に起こる地震で倒壊しない」

となっています。

阪神大震災以降は、「本当か?」と、私はこの定義を信じません。

住宅性能表示で、耐震等級2だと

「建築基準法の1.25倍の強さ」であり長期優良住宅の条件です。

本当でしょうか?

熊本大地震で長期優良住宅が倒壊したのは、なぜでしょう?
全ての建物が倒壊したのならわかりますが、

もっと耐震性の劣る旧耐震といわれる昔に造られた建物が
倒れていないのに、なぜ?

耐震等級2をクリアしていても、まだ耐震性では
設計上で気を付けなければならない問題がいろいろあるのです。

それは、真剣に取り組んで、しっかり学んで、
設計するだけでなく現場を真剣に観ていれば、わかってきます。

もし、みなさんが長期優良住宅を購入するのなら
耐震等級3の住宅を購入してください。


ここでの結論は、

長期優良住宅や住宅性能表示制度は、もし利用するなら、

それが耐震性を高めたいという理由での選択ならば、
耐震等級3のレベルにしてもらうと良いでしょう。

そうではない場合は、計算してもらって
建築基準法の1.5倍以上の耐震性をお願いした方が良いでしょう。

それだけでは、解決しないのですが、これがひとつの目安になります。


また、その上で、建物の形状、地盤状況によって、
木造であれば、制振装置をプラスアルファで付けると良いでしょう。

全てそうですが、新しい商品や工法は、偽造していなくても
後で何か問題が生じてくることが多いです。


技術を結集して、品質管理にこだわった高性能の日本車でも、
いまだにほとんどの機種で、何らかのリコールが起こっています。

現場で一棟一棟造る建物は、
例えそれが住宅メーカーの全く同じプレハブであっても

何か問題が生じているのが普通です。
それが、許容範囲かどうか、発覚する問題かどうかの違いです。

僅かな製造ミス、設計ミス、施工ミスであれば
対応できるように、データーを信じ切らずに常に余裕をもって

採用、設計、施工すべきです。

みなさんも、木造住宅なら制震装置の前に、

まず、耐震等級2ではなく3に、

建築基準法の計算なら1.5倍以上にしてもらうようにすれば

良いでしょう。

……………………………………………………………………………

ご意見があれば、お気軽にどうぞ!

メールでのお問い合せ

注文住宅 横浜市

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免振装置と制振装置のデーター偽造について(1)

2018年10月18日 09時55分34秒 | 住宅ノウハウ・実例
2018年10月18日現在、免振装置と制振装置のデーター偽造について

連日、マスコミで報道がなされています。

データー偽造については、当然問題ですが、偽造していないデーターでも、
それを信じたら実際とは全然異なるというのは、建築に限らず世の中にたくさんあります。


耐震と免振、制震はそれぞれ別々のものです。
まず、耐震を十分クリアした上で、免振や制震をプラスアルファで行うのが当然です。

免振や制震は、あくまでプラスアルファで、メーカーの宣伝している効果が
100%望めなくても当然、という前提で設計、設置しないといけません。

メーカーの免振や制震データーが、仮に偽造していなくても

1)最も効果のある条件でのデーターを取り上げて宣伝している

2)実験のデーターと現実とは、全然違った条件となっている。

ということも少なくないです。

個別に建物ごとに綿密に計算をしたとしても、

免振や制震は、地震の周期(周波数)の幅を想定して、
建物の固有との組み合わせで、それを打ち消すような働きで設定しています。

そのため、想定していなかった範囲の地震周期の場合、
有効にならなかったり、最悪、揺れを加速するということも
理論上は有り得ます。

科学が進歩していて、みなさんは計算されたものは全て正しいと
思っていらっしゃるかもしれませんが

少し前の2011年の東北大震災で、高層ビルが想定していなかった地震の周期を受け、
大きな揺れが加速し衝撃が走りました。

そういう地震の周波が来るとは、想定していなかったからです。

地震については、実はまだまだ全然わかっていないことが多いのです。

耐震や免振、制震といっても、
それぞれの大地震が来てみないとどうかわからないというのが
本当のところです。

熊本の地震も震度7が2回は想定外でしたし、

北海道地震も、あのレベルの震度での地すべり、
液状化の大きな被害は想定していませんでした。

熊本大地震で、有名国立大学の研究チームが、一番信用できる放送局の特集で
その研究過程や解析、なぜ長期優良住宅が倒壊したかという結果を
まとめたものを報道していました。

最後の最後の結論、なぜ長期優良住宅が倒壊したのか、
という結論を出したコメントの時に、私は、ズッコケました。

「いや、全然違う、放送されている解析内容からして、
 その結論は、全然違うんだけど」

という内容でした。

信用できる放送局と有名国立大学の研究チームなんだから
みなさん、私の方が間違ってると思ってるでしょ?(笑)

その放送局の担当者が、間違った理解をしていたのだろうと思いますが、
その結論は、専門用語を理解していないゆえに支離滅裂な意味になっており、
完全な間違いでした。

もし知りたいというご要望があれば、また記載します。

私が、昔から訴え続けている結論になる解析やデーターだったのに
突然、支離滅裂な結論コメントで終わったので、よく覚えていますので。


ただ、録画して、かなり月日が経って観たので、スルーしましたが

最近でも、大阪北部地震で、やはり別の有名国立大学の研究チームの発表を
専門誌で行っていました。

見出しを読んで、どういうこと?と疑問に思ったので、

しっかり読みましたが、見出し、本文中、結論と肝心な専門用語を毎回間違っているので
これも意味が通じないのです。

発行されてすぐだったので、メールで

「専門用語を間違って使ってるので、
完全に説明も結論も間違ったものになっています、
正しくはこういうことを言いたいのでは?」

と連絡しました。

10日くらいして、「間違いでした訂正をできるだけ早く行います」
という返事が専門誌から回答が来ました。

私は、そもそもこの内容には懐疑的でしたが
それは別にしても、発表するなら正しく発表していただきたいのです。

別の表現ですると、容疑者の名前を間違って報道しているようなものですから。

何がいいたいかというと、

間違ったことや、誤解させるような発表はたくさんあるので
素人は気付かなくて信じるし、

主観的なものなら違っても仕方がないのですが

専門家という肩書の人からも
その言い方だと誤解するよね、というコメントを耳にします。

ですから、報道されたことが全て正しいと思わず
正しく理解できるまでは、話半分に聞いておくべきです。

TVでの一般向けの建築に関してのニュースや解説は
専門家が出ていても、あまり見たくないのは、
おかしなコメントを聞くと嫌な気分になるからです。


さて、免振、制震、耐震、

次回、これらについて、どう考えた方が良いかをコメントします。

……………………………………………………………………………

ご意見があれば、お気軽にどうぞ!

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