昨日(2010年5月21日)。
名古屋への出張の折にJRタカシマヤ10Fで開催されている、
『白洲次郎と正子の世界展』(2010年5月20日~31日)を観てきた。
高島屋PDF→ http://jr-takashimaya.jp/event_pdf/shirasu.pdf
前日
<粋(すい)と粋(いき)と通(つう)>について文字にしたばかりなので、
偶然の開催とは言え何か運を感じる。
白洲次郎氏(1902~85年)の私のイメージは粋(いき)と言うよりも伊達(だて)。
妻で随筆家の正子さん(1910~98年)のイメージは風雅に精通した粋人。
白洲次郎氏は“従順ならざる唯一の日本人”と称され、
その振舞は留学先の英国のジェントルマンを規範とし、
次郎氏が示した生き方は我国のダンディズムの手本として、
多くのファンを持っている。
展覧会会場には、
旧白洲邸であった武相荘館長:牧山圭男氏(白洲家・長女の娘婿)の、
ダンディズムについての興味深い文書が紹介されている。
ダンディたる要件。
1:筋を通す。
2:弱者に優しい。
3:私しない。
4:ユーモアに富む。
5:見た目にそこそこカッコいい。
次郎が「プリンシバル」を<筋を通す>と訳し、
正子が「ジェントルマンシップ」を<武士道>と訳すなら、
(私は)「ダンディズム」とは<やせ我慢>と言うべし。
~3番の「私しない」の意味が今一つ解せない。
私が次郎氏を粋(いき)と感じない理由は粋の持つ庶民性が稀薄なこと。
次郎氏の生い立ちや生業を知るほどに伊達(だて)の言葉が頭に浮かぶ。
ダンディーを広辞苑で調べるて見ると、
伊達者(だてしゃ)、洒落(しゃれ)者と訳されている。
牧山氏の示す<やせ我慢>は言い得て妙で
庶民感覚の粋(いき)と共通する伊達(だて)を知る上で、
白洲次郎氏の生き様はうってつけの教科書に思う。
白洲正子さんは、
日本的な美意識を根底に紀行や随筆を残し骨董蒐集にも長けた人物。
展覧会場には日々の生活に使用した多くの日用調度品が展示されていた。
正子さんの嗜好と思われる素朴で控え目な通好みの逸品が揃えられており、
華美で細緻な意匠を排除する造形美に深く傾倒した収集と感じる。
正子さんを紹介する言葉として印象に残った、
仏像の崇高な美しさを語り、琳派の意匠(デザイン)を論ずる人が、
案外毎日使っている御飯茶碗や皿に無頓着であったり、
普段身に付けている衣服に気を配らなかったりするが、
自分の身の回りのモノから出発しない美意識など信じない。
~次郎氏も衣服に敏感な洒落者として著名でTPOをわきまえたセンスは、
西欧文化(西欧人気質)の風を日本に運んでいる。
展覧会場には次郎氏がマッカーサーに贈った五つ星に空かした椅子を展示。
次郎氏のデザインによる木製の椅子は次郎氏の住む村の工房で製造された。
この椅子は2009年の夏にテレビ東京系『開運!なんでも鑑定団』に登場し、
ご覧になられた方も多いと思う。
図版→ http://www.tv-tokyo.co.jp/kantei/database/20090630/03.html
さらに最も私の目に留まった、
次郎氏直筆の遺言書。
遺言書
一、葬式無用。
一、戒名不用。
昭和五十五年五月。
正子、春正、兼正、桂子 様
白洲次郎 (花押)
新幹線の待ち時間までの40分程度と短い鑑賞時間だったが、
今週の私のテーマ:粋(いき)や粋(すい)の本質に触れる、
有意義な“ひと時”だった。
因みに高島屋カードを持っていれば入場料は半額の400円。
平日にもかかわらず多くの人で賑わっていた。
<ブログ内:関連記事>
5)『粋(いき)と野暮(やぼ)』を学習し『日本人気質』を探求する。
→ http://blog.goo.ne.jp/mimifuku_act08/e/500a0fa9ad7b12bd8220d7529e6cc56c
4)『九鬼周造著:いきの構造』を読み『粋(いき)な行動』を学ぶ。
→ http://blog.goo.ne.jp/mimifuku_act08/e/5fcc2e1fe15aef11caf2928e01154f03
2)『粋(すい)と粋(いき)と通(つう)』:粋人と通人の意味を考える。
→ http://blog.goo.ne.jp/mimifuku_act08/e/16fde21d9a7cd5d0336e06b0227ac1ea
1)『雨音を楽しむ』:日本文化(日本人の精神)と音の関係。
→ http://blog.goo.ne.jp/mimifuku_act08/e/f9ef76c825dfaeedd837ff7ac9dff246
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