みどりの一期一会

当事者の経験と情報を伝えあい、あらたなコミュニケーションツールとしての可能性を模索したい。

東京都に抗議署名を!/上野千鶴子さん講演拒否事件で研究者が呼びかけ。

2006-01-24 05:53:40 | ジェンダー/上野千鶴子
「上野千鶴子さんの講演を東京都が拒否」に対し、
研究者のみなさんが呼びかけ、市民もいっしょになって
広く抗議署名がはじまっています。

国分寺市民の実行委員会が企画していた
人権講座の講演は「当事者主権」です。

そもそも、このブログは昨年3月26日にひらいた
上野千鶴子さんの「当事者主権」講演会のために
つくったものですから、わたしとしても、
東京都の暴挙に、つよいいきどおりを感じています。

東京都に抗議する!署名はここから。

この署名は、だれでもできます。
署名の第一次締め切りは、
1月26日正午です。


趣旨に賛同される方は、
東京都に抗議する!
のURLを、ぜひ
「あなたのブログにリンク」
「友達にメールで送る」
「HPにアップする」などしていただいて、
この署名をひとりでも多くの人に広げてください。


以下は、抗議文の全文です。
------------------------------------------------------------
東京都知事         石原慎太郎 殿
東京都教育委員会 教育長  中村 正彦 殿
東京都教育委員会 各位

                抗 議 文

上野千鶴子東大教授の国分寺市「人権に関する講座」講師の拒否について、
これを「言論・思想・学問の自由」への重大な侵害として抗議する

1 言論の自由の侵害について

 報道によれば、今回の拒否の一因として、同教授がその講演において「ジェンダー・フリ-という言葉を使うかも」という危惧があった故だとされている。ひとりの学者/知識人がその専門的知見において、その著書または講演のなかでいかなる用語を用いるかは、学問・思想・言論の自由によって保証されている。学問・思想・言論の自由は、民主主義社会の根幹であり、なんぴともこれを冒すことはできない。
 まして、その講演が開催され、実際に発話されたのではないにもかかわらず、その用語が発せられるだろうという“憶測”によって、前もってその言論を封じたということは、戦前の「弁士中止」にまさる暴挙であり、民主憲法下の官庁にあるまじき行為である。
 このような愚挙がまかり通れば、今後、同様の“憶測”、”偏見 ”に基づいて、官憲の気に入らぬ学者/知識人の言論が政治権力によって封殺される惧れが強くなる。日本が戦前に辿ったこの道を行くことをだれが望むであろうか。それが日本の社会に住むひとびとの幸福な未来を描くと、誰が思うであろうか。

2 学問と思想の自由の侵害について

 ジェンダー理論は国際的に認知された思想・知見・学問である。現在欧米及びアジアの主要大学において、ジェンダー理論の講座を置かない大学はなく、社会科学、文化科学の諸分野でジェンダー理論を用いずに最新の研究を開拓することは困難である。
 いっぽうでは、それは1975年、第一回世界女性会議以降、世界のいたるところで太古から実行されてきたあらゆる種類の女性への差別を撤廃し、人間同士の間の平等を実現するという国際的な行動と連動し、その理論的な基盤を提供してきた。学問と社会的改良とは両輪となって人類の進歩に貢献してきたし、これからもそうである。
 しかしながら、「ジェンダー理論」は、同時期に国際的に認知された「ポストコロニアル理論」と同様に、3~40年の歴史しかもっていない。したがって日本の人々のあいだにその用語および理論への理解が定着するにはまだまだ時間がかかるであろう。
 しかし、それは喧伝されているように「日本の伝統に反する」「外国製の」思想ではない。なぜならば、すでに明治時代からわれわれの先輩たちは、女性もまた参政権を得るために、また女性としての自立権を得るために血のにじむ努力をしてきたからである。この人々は新憲法によってその権利を保証されるまでは、弾圧と沈黙を強いられてきた。いまだに、在日朝鮮人をはじめとする外国籍市民は、参政権すら得ていない。日本の、また世界のひとびとが平等な権利を獲得するための、長い旅程の半ばにわれわれはいる。
 そのようなわれわれ自身の知見と努力の歴史の上に、国際的な運動のうねりと学問の進歩によって、われわれは国際的な用語としての「ジェンダー」とその問題を解明し、解決することをめざすジェンダー理論を獲得したのである。思えば、日本社会に生きるわれわれは、常に有用な智恵を世界に学び、これを自己のうちに内在する問題と融和させ、独自のものとして実践してきたのではなかったか。そこにこそ日本の社会の進歩があった。女性学・ジェンダー研究者は、今まさにそのために研鑽、努力している。その教えをうけた無数の学生、教育現場で実践する教師、地域で活動する社会人は、グローバルな運動の広範な基盤をなしている。上野氏はその先駆的なひとりである。今回の事件についてわれわれは強い危惧の念を覚えている。先人の尊い努力によってようやくに獲得できた思想、学問、行動の自由の息の根を止めさせてはならない。

3 ジェンダーへの無理解について

 ジェンダーは、もっとも簡潔に「性別に関わる差別と権力関係」と定義することができる。したがって「ジェンダー・フリー」という観念は、「性別に関わる差別と権力関係」による、「社会的、身体的、精神的束縛から自由になること」という意味に理解される。
 したがって、それは「女らしさ」や「男らしさ」という個人の性格や人格にまで介入するものではない。まして、喧伝されているように、「男らしさ」や「女らしさ」を「否定」し、人間を「中性化」するものでは断じてない。人格は個人の権利であり、人間にとっての自由そのものである。そしてまさにそのゆえに、「女らしさ」や「男らしさ」は、外から押付けられてはならないものである。
 しかしながら、これまで慣習的な性差別が「男らしさ」「女らしさ」の名のもとに行われてきたことも事実である。ジェンダー理論は、まさしく、そうした自然らしさのかげに隠れた権力関係のメカニズムを明らかにし、外から押し付けられた規範から、すべての人を解放することをめざすものである。
 「すべての人間が、差別されず、平等に、自分らしく生きること」に異議を唱える者はいないだろう。ジェンダー理論はそれを実現することを目指す。その目的を共有できるのであれば、目的を達成するためにはどうすべきかについて、社会のみなが、行政をもふくめて自由に論議し、理解を深めあうべきである。
 それにもかかわらず、東京都は、議論を深めあうどころか、一面的に「ジェンダー・フリー」という「ことば」を諸悪の根源として悪魔化し、ジェンダー・フリー教育への無理解と誤解をもとに、まさに学問としてのジェンダー理論の研究および研究者を弾圧したのである。このことが学問と思想の自由に与える脅威は甚大である。

 以上の理由をもって、われわれは東京都知事、教育庁に抗議し、これを公開する。

     2006年1月23日

呼びかけ人  
若桑みどり(イメージ&ジェンダー研究会・ジェンダー史学会・美術史学会・歴史学研究会)
米田佐代子(総合女性史研究会代表)
井上輝子(和光大学)
細谷実(倫理学会・ジェンダー史学会・関東学院大学)
加藤秀一(明治学院大学)
------------------------------------------------------------



2006年1月10日・毎日新聞記事。 

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9 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
リンクします! (mukai-m)
2006-01-24 10:01:06
予定が入っているため、今すぐとは行きませんが、エントリーを書いたらすぐリンクします。

「ちょっと待った!」と言わなければ、ヘンなことがまかり通る世相がますます妙なことになってしまうから。
返信する
これ・・・ (ん?)
2006-01-24 11:21:53
ガーデニングのTBPから来たんだけど・・・なんですか?これ?
返信する
Unknown (Unknown)
2006-01-24 16:56:20
同じくトラックバックピープルからきましたが、ガーデニングと関係なくないですか?

関係ないTBはルール違反ですよ。



これは削除して頂いても結構です。
返信する
Unknown (るな)
2006-01-24 16:59:21
メールも合わせて受けとりました。

さっそく署名送りました。

情報提供、ありがとうございました。

返信する
Unknown (みどり)
2006-01-24 18:34:45
★mukai-mさん

早速記事にしていただいて、TBありがとう。相互TBしときました。

おかしいことはおかしいと言いたいですね。



★ん?さん

★Unknownさん

コメントとご指摘、ありがとうございます。

基本的には、花の記事が圧倒的に多いですし、花を楽しみに見に来て下さる人も多いのですが、大雪で花がなくて・・・・・以前からからノンジャンル気味で、カテゴリーが決まらない、浮気なわたしです。最近は特にノンジャンルになってますね。

で悩んだうえで、「人気ブログランキング」は、記事によって変えるようにしてるのですが、「ガーデニングのTBP」「トラックバックピープル」という意味がよく分かりません。そこを見たことがないのですが、ずっと前にpingに設定してるかも知れませんので、一度みてみます。



★るなさん

コメント、書けるんですね。よかったあ。心配して増ました。

メール、ご迷惑じゃなかったですか? 今回ばかりは、アドレス帳のほとんどに送っちゃいました。なのに、署名までしていただいてありがとう。
返信する
賛同します (むく)
2006-01-24 23:00:39
私のブログにのせました。

みどりさんのブログも紹介しましたがいいでしょうか?tbもしました。多くの方に賛同して頂きたいです。
返信する
Unknown (tn)
2006-01-25 08:32:16
私もこの件で都教委などに対して激しい怒りを感じている点では、決して人後に落ちる者ではないと思っているのですが、上野さんが都教委などへ公開質問状を出し、その回答待ち(今月末期限)である現在、上野さん以外の人が先走って抗議活動をするのは、正直言って拙劣だと思うし、感心しません。ですから少なくとも現時点では私は一切協力できません。
返信する
異議 (テルテル)
2006-01-26 00:25:18
今日、インターネットをやらない友人に抗議文を読んでもらって、署名をもらいました。この方たちの分はファクスで送ります。



私もそうですが彼女たちも、おかしいことはおかしいと異議申し立てしたいといいます。



上野さんが公開質問状を出し、私たちもことの成り行きをちゃんと見ていることをアピールしていくことが大切だと思っています。



返信する
お返事遅れてすみません。 (みどり)
2006-01-28 21:52:17
★むくさん

お返事、遅くなってごめんなさい。

リンクとコメント、TBありがとうございます。

ひとりでも多くのひとに伝えたいので、大歓迎です。

集まった賛同者は1808人でした。



★tnさん

さいとうさんのブログでコメントを拝見させていただいています。

この行動をどのように考え判断するかの判断は、ひとそれぞれ。少なくともわたしは、このタイミングで出すことが、上野さんを応援することになると思っています。



★テルテルさん

FAX受け取りました。ありがとう。と今ごろ言っても、もう出してしまいましたが・・・・(笑)。

上野さんには、きっとこの行動と賛同署名が大きな励ましになると思いますよ。



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