福田の雑記帖

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2015年の医療環境はどうなるか(5) 「受診しなかった」を評価することは問題

2015年05月20日 17時47分38秒 | 医療、医学
 わが国の医療費は2012年度39兆2千億円で、年1兆円規模で増え、25年間で倍以上になった。2025年度には60兆円に達する見通しになっている。医療費高騰の理由は高齢化、医療レベルの発達などであるが生活習慣病患者の増加も無視できない。

 自治体や健康保険組合の一部で、加入者の健康意識を高め、医療費抑制に結びつけようとする取り組みが始まっている。一定期間、病院にかからなかったり、健康増進のための運動すれば現金や賞品をプレゼントするという試みである。

 以下は某紙に紹介された例である。

 (1)岡山県総社市では国保の財政を改善しようと、40歳以上が対象の特定健診(メタポ健診)を受け、さらに1年間誰も医者にかからなかった世帯に1万円支給する試みを始めた。2013年度は、全9067所帯(1万5872人)のうち、70世帯が支給対象となった。同市のメタポ健診の2013年度受診率は27.2%、前年度比0.4%上昇、12年度に約6800万円の赤字だった国保会計は、13年度約400万円の黒字になった。市では1万円支給の効果も一因とみる。

 (2)千葉市は13年度から、スマートフォン用の歩数計アプリを活用、「健康ポイント」をためる取り組みを試験的に始めた。参加者は1日5千歩で5ポイントもらえる。14年度は6月から半年間、約2千人が参加しウォーキングに取り組んだ。ポイントをためると景品に応募でき、800ポイントで10万円分の旅行券や自転車が抽選で当たる。

 (3)大手コンビニのローソンの健保組合は13年度から、本社と連携して年1回の健康診断を受けなかった人の夏のボーナスを15%カット、直属の上司も10%減らす仕組みを導入した。健診結果で勧められた再検査を受けなかったときは、冬季のボーナスの9~8%を減らす。健康診断受診率向上が狙いで、受診率はこれまでの97~98%から2013年度以降は100%になった。

 厚労省は医療費を少しでも抑えるためにこうした奨励策を勧奨するため法改正を予定している、と言う。

 一般的に何かの行動に対しては、声かけとかだけでは普及し難い。特に地道な努力を要する場合はほとんど効果がない。そこに現金とか商品とかをかませると効果があがる。私は、上記の試みのうち健康増進や健診受診率をあげることには賛同できるが、医療機関を受診しなかったことを評価することには賛成できない。病気を疑いながらも受診をためらう可能性も生じてくる。たった1万円のために、診断治療の機会を失いかねない。

 国民医療費の伸びを抑制することは我が国の課題であるが、厚労省の方針は短絡的である。


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