外国で一時的個人的無目的に暮らすということは

猫と酒とアルジャジーラな日々

中国旅行(6) ウイグル自治区で食べたもの~前編~

2012-07-30 18:04:41 | ウイグル・中国

ウイグル料理の横綱、ラグメンさま
(写真を撮り忘れたので、ウィキペディアから取りました・・・)



ウイグル料理ときいて、私の頭に浮かんでくるもの。
それは盛大に白い煙を立てながら、カワプ(ケバブ、つまり串焼き羊肉のこと)を焼く男達。
カマドから出したばかりの、ほかほかの黄金色のナン(分厚い円盤状のパン)。
買い食いしたカワマンタ(かぼちゃ入りの包子)や、屋台で食べたサモサ(羊肉入りの小さなパイみたいなもの)。
そしてもちろん、何度も食べたラグメンやポロ・・・ああ、思い出すだけでお腹が空いてくる。

羊肉がよく登場するところ(ちなみにウイグル人はムスリムなので、豚肉は食べない)、パンが主食だけれど、お米の料理も愛されているところ、味付けにトマトを使うところなど、ウイグル料理とトルコ料理の間には共通点が多い気がするが、中国の影響か、ウイグルではトルコよりもずっとたくさん麺類が食べられているように思う。
ちなみに麺類はどこで食べても手打ち、餃子の類も皮から手作り、パン類はかまど焼き、ケバブは炭火焼である。
これで美味しくないわけがない。

地元民にもっとも愛されているウイグル料理は、ラグメンだそうである。
ウイグル人にとってのラグメンは、イタリア人にとってのピッツァみたいなものだと、私は推測します。
ラグメンは、羊肉のこま切れや野菜を炒めて、茹でたうどんにかけた料理である。
味の決め手はトマト。安価で美味しくて、野菜も食べられるので、私も大好きになった。

食堂でラグメンを食べるウイグル人を観察したところ、麺と具を箸で食べ尽くしたあと、皿を持ち上げて、残った汁を最後の一滴まで飲み干すのが、彼らの流儀のようだった。
あの大きくて浅い平皿を持ち上げて口をつけ、こぼれないように傾けながら、底に残った汁を飲み干すのなんて、ウイグル人ってスゴイ。
私にはとてもできない。肉や野菜のエキスが出ていて、美味しいに違いないけど・・・。

ラグメンも美味しいが、ポロはその上を行くと、私は個人的に思う。
ポロはピラフの一種である。
羊肉のぶつ切りを人参の千切りや玉ねぎと一緒に炒め、出た汁に水を足して、米を炊く。
具は途中で取り出しておき、炊き上がったごはんの上にのっけて食べる。
羊肉のかたまりを使うため、ラグメンよりは高級だが、その分ボリュームと満足感があるのだ。

私が初めてポロを食べたのは、カシュガル郊外のバザールに出ていた屋台だった。
給食用の鍋みたいな、巨大な鍋がふたつ置いてあって、ひとつには羊肉の煮込みが、もうひとつには羊の油でテカテカ光ったご飯が入っている。
注文すると、鍋の後ろに仁王立ちしている体格のいいおじさんが、丼に景気よくよそってくれる。
おじさんの背後には、木の板でこしらえた簡易テーブルとベンチで客席がしつらえてあり、地元の家族連れがせっせとポロを掻き込んでいる。
私たちも隅っこに腰を下ろして仲間入りをする。
丼にてんこ盛りのそのポロを、私は余さず平らげた。
だって私の好みにぴったりの味だったんですもの。
よく煮込んであって、口の中でとろける羊肉には、ほのかな甘みがある。
羊の出汁で炊いたご飯も、いい感じに脂っこくてステキ。
口の中が脂っこくなりすぎたら、お茶で口直し。
ヤカンに入ったお茶(ジャスミンティーっぽい味と香り)は飲み放題である。
お茶はどこの店でもたいてい、無料で飲み放題だ。
本当は、冷えたビールがあればもっと嬉しいのだが、そんなことを口に出すわけにはいかないので、大人しくお茶を啜る。

カシュガル最後の夜に食べたカワプ(ケバブのこと)も、忘れられない味だ。
街のいたるところにあるカワプ屋の前は、いつ通っても、忍者の煙幕のような白い煙が充満している。
店先の路上で、炭火のグリルに串を並べて焼き、その背後に巨大な扇風機を配置して、通行人に向けて煙と肉の焼ける匂いを拡散させるのが彼らのやり方だ。
そんなことされたら、つい引き寄せられて、店に入っちゃう・・・。
私が入った店は、狭いけど大盛況だった。
ヨーグルトやスパイスにマリネしてから焼くタイプのカワプを3串と、ナン1枚を注文して、焼きあがるまで他の客の食事風景を観察する。
彼らは太くて長い金串を口元に運び、よく焼けたかたまり肉をじかに歯で食いちぎっていた。
さすが遊牧民である。
私はナンで串を包み込むようにして、ナンごとお肉を串から引き抜いたのち、ちぎったナンで肉を包んで食べる方式をとった。
このお肉が汁気たっぷりで、柔らかくて、臭みがなくて、焼き具合も味付けも絶妙だった。
中国旅行中に食べたもので、一番美味しかったのは、このカワプかもしれない・・・。

私がはるばるウイグル自治区まで旅することは、おそらくもうないだろう。
つまりカシュガルの、このお店のカワプを食べることは、もう二度とない。
だからこれは私にとって、幻のカワプなのである。


幻のカワプ・・・


ウルムチのカワプ屋さん


カシュガルのポロ屋さんで食べたポロ


カシュガルの屋台村(?)で食べたサモサ。中身の羊肉が見えるよう、ちょっと外皮をちぎってみた。わかりにくいけど・・・


かわいいナン屋さん



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2 コメント

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ウイグルのポロは最高です! (Zhen)
2020-02-13 18:45:26
僕もウイグルのポロが好きです。ラグメンよりポロです。ウイグルで買ったスパイスと骨付き羊肉、にんじん、玉ねぎで、あの味の再現を日本でチャレンジしていますが、遠く及ばずです。
羊肉串は、色々なところで食べましたが、チョ~ウマイですね。ただ最近は、以前に比較すると、脂っぽさと塩味がマイルドになり、ウイグルも健康志向になったのか?と思ったりしています。
>私がはるばるウイグル自治区まで旅することは、おそらくもうないだろう。
こんな悲しいこと言わないでください。是非、再訪してください。
Zhenさんへ (michi)
2020-02-16 03:01:05
ポロ美味しいですよね~蕨にお住まいなら、西川口でウイグル料理が食べられますよね。私は自分で作る根性がなくて~でも現地の味が一番ですよね~

経済的・時間的な問題から、専門分野の中東・イタリア以外のところへ旅することがなかなか出来なくなってまして。でも余裕が出来たらまた行きたいです。行きたいところがいっぱい・・・

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