外国で一時的個人的無目的に暮らすということは

猫と酒とアルジャジーラな日々

中国旅行(2) 下準備

2012-06-08 00:07:25 | ウイグル・中国

果物屋の看板猫を撫でる 上海にて




中国を個人旅行するにあたって、私がやった下準備とは、もちろん語学学習である。
中国では英語があまり通じないらしいし、いちおう語学マニアのはしくれ(?)として、多少なりとも現地の言葉を勉強しておくのが当然の義務やわ!と思いついたのだ。
我ながらヒマで物好きである。

問題は、「どの言語を勉強するか」、である。
もちろん中国に行くのだから、中国語(の標準語である北京語)は必須だが、主要な滞在先のウイグル自治区では、ウイグル語も使用されているのだ。長年の占領の結果、ウイグル人も中国語が話せるわけだが、私はできれば彼らと、彼らの言語で話したかった。それに、ウイグル語はトゥルク語系の言語なので、トルコを勉強した私には、比較的とっつきやすいように思えた。

そんなわけで、出発前の約1ヶ月間、中国語とウイグル語の学習に精を出すことになった。
「上海に行くんやったら、中国語の上海方言も勉強しといたほうがええんやないか?」と、私の心の中に住んでいる陽気なおじさん悪魔が囁いたが(彼は「ラジオスペイン語講座礼賛」の記事にも登場した)、黙殺することにした。冗談もたいがいにしてほしいわ、そんなにできるわけないやん!

中国語に関しては、書店で超初心者用のテキストを購入して、発音練習と、基本文例・重要語彙の丸暗記をする一方、NHKラジオ講座も聴き始めた。
こんな短期間で文法を覚えるのはムリなので、文法学習は省略して、丸暗記に徹することにする。中国語の文法はわりとシンプルだそうだから、実はさほど時間がかからないのかもしれないけど。

それにしても、中国語の発音は、なんであんなに難しいんでしょう?
ムリ!似たような発音の子音がたくさんありすぎる。区別して発音しようと思ったら、舌がつりそう。有気音と無気音の違いを聞き分ける、なんていうのも、耳のあまりよくない私には不可能。それにあの「四声」はなんなん?あの4パターンの「音の上がり下がり」を間違ったら、別の意味の単語になってしまうって、どういうことやねん!だいたい、似たような発音の単語が多過ぎて覚えられへん!やっぱり中国語なんか勉強するんじゃなかった・・・などと、ひたすらボヤきながら、暗記作業をしていた私。
結局、頭に入ったのは、「これください」、「いくらですか?」、「高すぎる、もっと安いのはありませんか?」、「トイレどこですか?」、「冷たいビールありますか?」などの、サバイバルに必要な最低限のフレーズのみであった。

中国語に比べたら、ウイグル語は比較的楽だった。
先ほども触れたように、ウイグル語はトゥルク語系の言語であり、トルコ語の親戚筋にあたる。そのため、文法構造がトルコ語に酷似しているし、共通の語彙も多い。数字なんか、ほとんど一緒。またウイグル語の表記には、なぜかアラビア文字が用いられているが、アラビア語学習経験者でもある私には、とりたてて問題はない。
ただし発音がトルコ語とかなり違うので、聞き取りは困難だし、もちろんトルコ語と全く似ていない単語もたくさんあるから、それらは一から暗記しないといけない。

一番の問題は、ウイグル語のテキストが手に入らないことだった。
ネットでざっと調べたところ、現在入手可能なウイグル語の独習書は、大学書林の「現代ウイグル語四週間」のみのようだった。しかもこの本は、税抜きで7500円もするのだ。さすがマイナー言語である。2週間の旅行のために、わざわざそんな高い本を買うわけにはいかないので、その代わりに、インターネット上で見つけたウイグル語学習用サイト、「ウイグル語ことはじめ/マレビトの目から見たウイグル/新疆瓦版」で勉強することにした。
このサイトの最大の特徴はなんといっても、「恋のかけひき」関係の例文が多いことである。
例えば・・・

「君と会いたかった」
「オレは君が好きだ」
「君はオレのこと好きかい?」
「私もあなたのこと、好きには好きよ」
「でも友だちとして好きなの」
「お前がいなくちゃ生きられないんだ」
「私のことは忘れて」

といった具合である。
観光旅行で数日滞在するだけの私が、こんなフレーズを口にすることがあるかどうか、はなはだ疑問だったが、サイトの筆者によると、ウイグル男性は脊髄反射で女性を口説くらしいので、必要に迫られることがないとも限らないのかも・・・というわけで、好奇心も手伝って、私はこれらの例文の丸暗記に励むこととなった。

ウイグル語の発音や表記の規則、場面別の文例、ジャンル別の単語リストなどが、笑いのツボを直撃する愉快な説明文とともに載せられていて、非常に素晴らしいサイトなのだが、残念なことに、「トイレどこですか?」、「バス停はどこですか?」、「テイクアウトします」、「メニューを見せていただけますか?」などの、旅行に必須のフレーズがほとんど載っていなかった。また文法説明が少ないため、覚えた例文が応用しにくいのだった。

1ヶ月間の学習の後、私の中国語は、「トイレはどこか質問できても、相手の返事が全く理解できない」程度であり、ウイグル語のほうはというと、「ナンパをさりげなく断ることはできるが、トイレの場所を質問することが出来ない」といった、非常に微妙なレベルであった。

実際に旅行してみて、このお勉強がどのくらい役に立ったの?という質問には、「さっぱり役に立たなかった」と、「あんまり役に立たなかった」の中間くらいだった、と答えるしかない。買い物や観光、ホテル探しなどの際に多少は役に立ったものの、それ以上ではなかった。やはり私には語学の才能がにゃい・・・はっきり言って、時間の無駄だったかも。ウイグル人の若者はぜんっぜんナンパしてくれなかったし、ふん、なにさ~。



アパックホジャの霊廟 カシュガルにて



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2 コメント

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ウイグル語テキストについて (hasuge)
2012-06-08 09:54:28
 ウイグル語テキストですが、2007年に東京外国語大学AA研で行なわれたウイグル語研修のテキストが公開されています。ダウンロード可能ですので、これをお試しになってはいかがでしょうか。http://www.aa.tufs.ac.jp/ja/training/ilc/ilc-list/20071
Unknown (ウイグル語のテキスト)
2012-06-09 00:56:03
hasugeさん、テキスト情報ありがとうございました。実は、もうウイグル語や中国語のことは忘れようと思っていたのですが、またいずれ魔が差して、勉強したくなる日が来るかもしれないので、ダウンロードしておきます。インターネットって、素晴らしい・・・

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