マキペディア(発行人・牧野紀之)

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森永ヒ素ミルク事件60年

2015年06月23日 | マ行
重度化する被害者支援課題

 森永乳業の粉ミルク製造過程でヒ素が混入し、飲んだ乳児130人が死亡、1万3000人に健康被害が出た森永ヒ素ミルク事件から今年で60年になる。

 被害者らでつくる「森永ひ素ミルク中毒の被害者を守る会」(事務局・大阪市北区、会員約2200人)の全国総会が21日、岡山市で開かれた。各地の会員代表196人と、厚生労働省や森永乳業の関係者ら計約280人が出席した。

 最初に、亡くなった被害者に祈りを捧げた。「守る会」理事長で被害者の桑田正彦さんは「私たちは60歳になった。事件の風化防止や高齢化に備え、一層、取り組みを強化しなくてはならない」とあいさつした。

 被害者の救済にあたる公益財団法人ひかり協会(本部事務局・大阪市)によると、明らかになっている被害者数は1万3440人。このうち、896人(今年3月末時点)に知的障害や肢体障害などがある。

 被害者が年をとり、障害の重度化や単身で暮らす人たちへの生活支援が課題となっている。

 協会のまとめ(2011年度)では、障害がある被害者のうち24%で、障害が重度化していた。昨年時点で両親など親族と同居している人は23%、単身生活は19%だった。将来の方向性について聞くと、単身生活は28%に増えた。協会の塩田隆常務理事は、「将来の単身生活に備える支援が今後さらに求められる」と話す。

注・森永ヒ素ミルク事件

 1955年、森永乳業徳島工場の粉ミルクの製造工程でヒ素が過って混入。急性ヒ素中寿で乳児130人が死亡し、西日本を中心に1万3000人に健康被害が出た。69年、大阪大学の故・丸山博教授らが被害児を追跡調査し、脳性まひや知的障害などの後遺症をつきとめ問題が再燃。73年、被害者団体と森永乳業、厚生省(当時)が生涯にわたる生活支援費支給などの恒久救済措置をとることで合意した。

  (朝日、2015年06月22日。北村有樹子、中村通子)
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