マキペディア(発行人・牧野紀之)

本当の百科事典を考える

ベーメ

2014年03月19日 | ハ行
 01、ヤコブ・ベーメ(1574-1624)は、ドイツの神秘主義者である。貧しい農民の子として生まれたが、幼い頃から霊的体験をもち靴匠として生計をたてながら『アウローラ』(一六一二年)、『神的存在の三つの原理』(一六一九年)などの著作をあらわした。

 ヘーゲルはその『哲学史講義』で、「実際に彼によってはじめてドイツに独自の性格をもつ哲学が現われ た」と述べて、ベーメを高く評価している。彼の根本理念は、善と悪・愛と怒り・神と悪魔というような対立的なものを、たえまない闘争のうちにありながら、しかも絶対的な神的統一のうちにあるものとして把捉することにあり、その思弁的性格をヘーゲルは積極的に評価しているのである。

 だが同時に彼の表現が乱脈であり、叙述に一貫性がないことをも認めており、「苦悩(Qual)」を「源泉(Quelle)」や「質(Qualitaet)」と結びつけるというようなベーメの自己流の用語法を「語呂合わせ(Wortspiel)」だといって批判してもいる。

 しかしそれにもかかわらずヘーゲルは、統一的なものが苦悩によって区別される、というべーメの見解を肯定的に評価し、「苦悩〔ということば〕によって、絶対的否定性とよばれているもの・自己へと関係する否定的なもの・またそれゆえに絶対的な肯定が表現されている」と述べている。

 また「質」という概念はべーメの哲学の主要概念の一つであって、『アウロ-ラ』には「質は物の運動性・源泉・ないしは駆動(Treiben)である」と述べられている。(寺沢1、391頁)

 02、ブルーノらと共にルネサンス期の人文主義に影響されるところが大であった。新プラトン的。人間を小宇宙と捉えた。(初版「哲学事典」平凡社より抜粋)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする