マキペディア(発行人・牧野紀之)

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「文法」へのサポート、第3部、第9章(強調の方法)、第3節

2013年08月10日 | サ行
 第6項(詳論1406頁)の (1)(第1段階)の本文(「感想」の前の部分)を次の文と代える。

 評辞に形容詞の使われる事は当たり前です。Sie ist schönでもSchön ist die Jugendでもいいでしょう。

 問題は「評辞の強調」です。と言いますとすぐにもSie isr sehr schönといった表現が頭に浮かびますが、ここで問題にするのはこのような「程度」ではありません。sehr schönのsehrはschönの「程度」を強調していますが、schönという言葉をここで使うことの「適否」を強調していません。ここで問題にするのは後者です。関口はこれを「評価的色彩の強調」(不定冠詞331頁)と言っています。

 評辞の適否には3段階(sozusagen, gleichsam, geradezu)があるとしています。

第1段階はsozusagenで、これは「不適当な言い方の弁明」です。訳せば「いわば」。
 1. Ich heiratete sozusagen aus Versehen.(私はいわば間違って結婚したようなものだ)
  英・I got married, so to speak, by mistake.

第2段階はgleichsam usw. で、「~と言うも過言にあらず」で、訳せば「いわば」「まるで」。
 2-1. Ich heiratete gleichsam aus Versehen.(私はいわば間違って結婚したようなものだ)
  英・I got married, as it were, by mistake.
2-2. Du bist gewissermaßen verliebt.(君はいわばまあ多少惚れているんだろう)

第3段階がgeradezu usw. で、「まさに~だ」で、訳せば「端的に」です。同じ働きをするものに direkt, nachgerade, gleichsam, ganz, gar, vollständig, vollends などがある。
3-1. Er beging geradezu Selbstmord.(彼はなんて事は無いまるで自殺したようなものだ)
  英・He positively committed suicide.
 3-2. Sie ist geradezu schön. (彼女は端的に美しい)
 説明・別に非常に美しいとか、どういう風に美しいというのではなく、単に schönという言葉が「多少極端かもしれないが」非常によくあてはまる、という意味である。
3-3. Du bist einfach verrückt.(君はもう完全に気が狂ったんだよ)
3-4. Deine Behauptung wirkt geradezu komisch. (君の主張はむしろこっけいな気がするよ)

 説明・この「むしろ」は、出立点となるべき否定の要素(例えば「誤っていると言うよりは(むしろ)」)を言わないで、直ちに肯定的要素に向かう「むしろ」である。これに対して「どちらかと言えばむしろ~」の意を表すには eher, mehr, vielmehr である。(以上、趣味195頁、不定冠詞331頁、作文106頁、大講座中巻180頁)

 感想・関口の説明も必ずしも明快ではありません。gleichsamを第3段階にも入れたり、局面ではgleichsam=sozusagenとしたりしています。しかし、こういう区別のあることは事実ですから、本を読む時にここを思い出して自分で身につけてゆくべきでしょう。