まさおさまの 何でも倫理学

日々のささいなことから世界平和まで、何でも倫理学的に語ってしまいます。

競技ダンスの採点方法

2010-11-08 22:23:27 | ダンス・ダンス・ダンス
競技ダンスは、複数のカップルが同じフロアで踊って競い合います。
その試合がどのように進められていくかを説明しましょう。
どの試合も予選、準決勝、決勝から構成されています。
(日本の学生競技ダンスの場合、団体成績も争うために、
 決勝が下位決勝戦と上位決勝戦に分けられていますが、
 これはダンスの世界ではレアなケースと言えるでしょう。)

予選は、1次予選と2次予選、
出場カップル数が多い場合には3次予選まで行われたりもします。
いっぺんに踊れるのは12カップルがいいところでしょう。
それ以上多くなるとフロアが混雑しすぎてしまいますし、
ジャッジが全カップルを見ることができなくなってしまいます。
だいたい10カップル前後を一括りとして (これをヒートと呼びます)、
いっぺんに踊らせていきます。
わかりやすい例でいくと、出場カップルが48カップルいるとしましょう。
これを12カップルずつ4つのヒートに分けます。
学生競技ダンスの場合は、あるヒートに同じ大学の選手ばかりがかたまってしまわないよう、
均等にばらけさせてヒートを構成します。
そして、第1ヒートから順番に、音楽を1分15秒から2分程度流して、
12カップルずつ同時に踊らせていくのです。

ジャッジは奇数人です。
一般的にはジャッジは7人ぐらいいるのが普通ですが、
5人とか3人とか、ごく稀に1人ジャッジということもあります。
ジャッジの数が少なければ少ないほど、
その人の好みの偏りが出て、試合結果にばらつきが出てしまうことになります。
また競技ダンスは大きく分けて、モダン (スタンダード) とラテンがあり、
習い始めは両方やりますが、しだいに専門分化していきますので、
ジャッジにも自分の専門というのものがあります。
専門のバランスを取るためにも、ジャッジの数は多いに越したことはありません。

1次予選では、48カップル中、24カップルを残して2次予選に進出させます。
1次予選は第4ヒートまであるわけですから、
各ヒートあたり6カップルを残せば、計24カップルになります。
各ジャッジはこの6カップルを目安に各ヒートの踊りを見て、
それぞれ12カップル中残したいほう6カップルにチェックを入れていきます。
もちろん、ヒートごとの偏りもありえますので、あるヒートでは5カップルだけチェックし、
別のヒートで7カップルにチェックするということも可能です。
ただし、合わせてちゃんと24カップルにチェックをしていなかった場合、
そのジャッジのすべてのチェックが無効になってしまいますので、
ヒートごとのチェック数を増減させるのは慎重に行わなければなりません。
したがって各ヒート、同数ずつチェックしていくというのが基本になります。
各ジャッジのチェックを集計して、チェックを多くもらった上位24カップルが2次予選に進出します。

2次予選はまたシャッフルして12カップルずつ2つのヒートに分け、
上げるほう12カップルにチェックして、同じことを繰り返します。
12カップルが選出された段階で、予選終了し、準決勝になります。
準決勝も同じスタイルでチェックを入れていき、
上げるほう6カップルが選ばれて、彼らが決勝進出者となります。
ここまではジャッジはずっと、上手いと思うカップルにチェックを入れる、
ということだけをしていたわけです。
しかし、これはけっこう大変な仕事です。
10カップルくらいが同時に2分弱踊っているあいだに、
全部のカップルの踊りを見て、瞬時に相対評価して上げるほうを決めるというのは、
やってみるとわかりますが、なかなか至難の業です。
特にむちゃくちゃ上手いカップルとかがいると、ついその踊りばかりが目に入ってきて、
他のすべてのカップルに目が行き届かないということが起こりがちです。
また準決勝くらいになるとみんな十分に上手ですから、
その中から6カップルだけ選ぶというのは本当に難しいのです。
それに、自分がモダン専門だった場合、ラテンなんて詳しいことはわかりませんし、
選手のほうが自分より上手だったりしますから、どれも同じに見えてしまったりするわけです。
それを2分弱のあいだに判断しなければならないので、
けっこうヒヤヒヤものだったりするわけです。

さて、いよいよ6カップルに絞られて決勝戦になりました。
今度はチェックするだけではなく、ジャッジは1位から6位まで順位をつけなければなりません。
決勝戦では踊るのは6カップルだけですから、わりと余裕をもって見ることができます。
その間にやはり相対評価をして、全カップルを順位づけていくのです。
全ジャッジがそれぞれ順位法で採点したら、スケーティングシステムという方式で集計し、
最終結果を決めていきます。
総合点や平均点の少ないほうを勝ちとするのではなく、
ジャッジの多数決で決める方法で、なかなかよく考えられたシステムだと思います。
例えばゼッケン番から番までの6組のカップルに、A~Eの5人のジャッジが、
次のようにそれぞれ順位をつけたとしましょう。

   A B C D E
 2 1 3 1 3
 3 5 6 3 5
 1 6 1 4 1
 6 2 2 2 2
 4 4 4 6 4
 5 3 5 5 6

何人かが1位をつけている選手に6位をつけているジャッジがいたりしますが、
各ジャッジが主観的に相対評価していきますので、こういうことは頻繁に起こります。
集計の際は、まずは各選手の順位を小さい順に並び替えます。

 1 1 2 3 3
 3 3 5 5 6
 1 1 1 4 6
 2 2 2 2 6
 4 4 4 4 6
 3 5 5 5 6

多数決ということですので、過半数で決していくことになります。
今回は5人ジャッジですので、ちょうど真ん中の、左から3番目の数字に着目します。
3番目の数字で小さい順に並べ替えてみましょう。

 1 1 【1】 4 6
 1 1 【2】 3 3
 2 2 【2】 2 6
 4 4 【4】 4 6
 3 3 【5】 5 6
 3 5 【5】 5 6

これで1位の選手と4位の選手は決定しました。
ゼッケン番の選手には過半数のジャッジが1位をつけていますので、
これでもう1位が確定です。
ゼッケン番とゼッケン番の選手を比べてみると、
順位の総計は番が13、番は10ですし、
しかも番の選手には1位以外には4位や6位がつけられていますので、
1位から3位と高評価ばかりを集めている番の選手のほうが、
パッと見、優勝でもよさそうな感じがしますが、
多数決で決めるスケーティングシステムでは番の選手に軍配が上がるわけです。

続いて、2位と3位、5位と6位を決めていきます。
番の選手と番の選手では、やはりパッと見は番のほうが、
2人のジャッジから1位と判定されていますし、低い評価も少ないので、
勝っているように見えます。
しかし多数決原則ですので、2位以上と評価している人が何人いるかを比べていきます。
すると、番に2位以上をつけているのは3人、
番に2位以上をつけているのが4人いますので、
スケーティングシステムでは番が2位、番は3位ということになるのです。

番と番は5位以上と評価している人数も4人ずつで同数です。
その場合は上位比較をし、真ん中の数字よりも左側の数字を足して、
数の小さい方を勝ちとします。
番は3+3=6、番は3+5=8で番の勝ちとなり、
番が5位、番が6位となるのです。
これでもまだ決まらない場合はさらに次の段階がありますが、それは省略します。
気になる方はこちらをご覧ください。

スケーティングシステムについて延々と説明してきてしまいました。
途中からはたんに説明するのが楽しくて止まらなくなってしまっただけなんですが、
何が言いたかったかというと、競技ダンスはけっきょくのところ、
各ヒートごとの相対評価をしているのだ、ということでした。
スケーティングシステムにするか、順位の総計にするかというのは運営上のルールなので、
実のところどちらでもいいのですが、とにかく1フロアで複数のカップルが踊り、
それを相対評価するのが、競技ダンスの構成的な要素となっており、
ジャッジの主観的判断を集積してできるだけ客観的かつ公平な結果を導き出すよう編み出されたのが、
スケーティングシステムだったわけです。
これでもう皆さんはダンスの順位の付け方が理解できたはずです。
最後に例題を出しておきましょう。
今度は7人ジャッジです。
解けたらコメント欄にお書き込みください。

【例題】
   A B C D E F G
 4 1 5 1 3 4 1
 1 3 2 4 2 2 4
 2 4 1 5 1 6 2
 6 2 6 3 5 5 5
 3 6 3 2 6 3 3
 5 5 4 6 4 1 6

コメント (9)
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