まさおさまの 何でも倫理学

日々のささいなことから世界平和まで、何でも倫理学的に語ってしまいます。

狩りから農耕へ

2021-05-08 13:18:46 | キャリア形成論
図の一番左側の列を説明していきます。
森から出たサルははじめのうち狩りをすることによって食物を得ていたわけですが、
狩りというのは大変です。
常に狩りが成功するとは限りませんし、
それ以前に、いつも獲物が見つかるとは限りません。
獲物に出会えなかったり、狩りに失敗したりすると、
その間ずっと飢えていなくてはならないのです。
食料を確保できないかもしれないというのは、
生物にとって常に存亡の危機にさらされているということです。

この問題を根本的に解消したのが、
「農耕・牧畜」という新しい文化でした。
狩りとの類比でわかりやすいので牧畜を例にとって説明すると、
狩りというのは捕まえた獲物を全部食べてしまう文化です。
これを続けていると食料の安定供給はできません。
そこで狩りをして大量に獲物を捕らえたときに、
獲物を全部食べてしまわずに、オスとメスを残しておいて、
このつがいが逃げてしまわないように、
柵か何かの中で飼育し、自分たちの管理下で子どもを産ませます。
その子どもが大きく育ったら食べるのですが、
その時もまた全部食べてしまわずに、オスとメスを残しておくのです。
これを無限に繰り返すのが牧畜であり、
これによって人類は日々の食料確保の問題から解放されるのです。

同じことを動物ではなく植物で行うのが農耕になります。
採れた植物をすべて食べてしまうのが採集生活ですが、
全部食べてしまわずに種を少し残しておいて、
自分たちの管理下で栽培して収穫し、
そしてまた植えるということを繰り返すのです。
牧畜も画期的な文化でしたが、
農耕のほうはさらに飛躍的な発展を人類にもたらしました。
穀物は食べる時に加熱する必要がありますが、
加熱しなければかなり長い期間保存しておくことができるからです。
人間は農耕によって、今日や明日の分だけでなく、
何年も先までの食料を収穫し蓄えておくことができるようになりました。
もはや目先の食料の確保に日々追われる必要はなくなったのです。
これにより人類は食料確保以外のことに時間を割けるようになり、
人間の文化は一気に花開いていくことになります。

文化のことを英語で culture と言いますが、
culture は「耕す」という言葉、つまり「農耕」という言葉に由来します。
農耕は人類が生み出した文化のひとつですが、
人類の歴史を大きく変えた最も偉大な文化であり、
文化の中の文化、「The 文化」と言っても過言ではなく、
したがって農耕を意味する culture が、文化全般を意味する言葉にもなったのです。

農耕というのがどれほど凄い文化であったか理解いただけたでしょうか。
今後のブログ記事で説明いたしますが、皆さんが職業選択の自由で悩めるのも、
元はと言えば、人類が農耕という文化を生み出したおかげなのです。
もしもそれがなかったら、皆さんは今ごろ大学で学ぶどころか、
小中高で学ぶことすらなく、毎日ひたすらその日の食料を確保するために、
狩猟採集に走り回っていたことでしょう。
誰だかわからないけれど農耕という文化を発明してくれた祖先に、
日々感謝しながら大学生活を送ってください。

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