井沢満ブログ

後進に伝えたい技術論もないわけではなく、「井沢満の脚本講座」をたまに、後はのんびりよしなしごとを綴って行きます。

「語彙」という言葉がやっと政界でも使われ始めたのかな?

2019年02月15日 | 日本語

桜田五輪担当大臣の、池江璃花子選手への言葉が自民党内でも批判されていて、その批判内容が「語彙がない」で、やっと政界でも
「語彙」の一語が使われ始めたか、とそれはいい傾向だと思う。

一言を切り取られて報道されてしまい、真意が歪められるのを
避けるための
ノウハウはさほど難しいことではない。

まず今この時、この場でこの言葉を発したらどういうふうに
受け取られるか、その想像力を持つのが第一歩。
まして立場から必ず受けることが想定される
質問なのだから、決定的に準備不足。いや、不足ではなく
身構えがゼロ。
おおやけに発する言葉の重大さを心得ないと。
言葉というものをひょっとして、軽く考えてはいらっしゃらないか。
日本語は、多くの人が勘違いしているかと思うが、
誰でも使えるというものではない。日本人です、だから
生まれたときから日本語は知っています、というような
安易なものではない。日々鍛錬しないと
それは使いこなせない。政治家はまして、言葉が
武器なのだ。

二歩目が、想定される質問に対して予め用心深く推敲した
文言を用意しておくこと。上級になれば、
そこにジョークや報道の見出しになりそうな
キャッチーな言葉を織り込む。
ジョークはその場の空気が左右するので、何種類か
用意しておき、場合によってはカットすればよい。
その時の天候や気温、出来事を入れたければ
( )にして仮として入れておいて、差し替えたり言い換えたり
できる当意即妙の、一見その場のアドリブに聞こえる
用意周到の原稿を。これが最上級の準備かもしれない。

桜田大臣は、サイバーセキュリティも兼務していて
しかしパソコンを知らない。その事自体は責められる
ほどではないが(褒めも出来ないが)、当然初期に来るであろう質問は
容易に予測できるのだから、なぜそれに対して
用心をなさっていなかったのだろうと、そこは
緩すぎであろう。事前にサイバー犯罪に関して専門家を
呼んでレクチャを受け、そこからパソコンを自ら
使わぬ者としての、最適な言葉を拾い上げれば良い。
有能な官僚相手に、想定問答ぐらいやっておくべきだった。

失言したらしたで、当然釈明を要求されるわけだから、
それに対する答えも推敲して備えているのが
よい。あの程度の短い詫びをメモを見て読み上げるようでは
こころもとない。甘い。再び言質を取られぬようにという用心が
痛々しくもあった。だが、あの短い文言は暗記して、
カメラが捉えた時、視線が国民の目を真っ直ぐ見ている形に
しなくては。言葉とともに「見せ方」も大事である。
その場にいるのは、野党や記者たちばかりではない。
ある意味それより大事なのは、テレビカメラの向こうに
いる国民である。その国民の存在を意識されたい。
ピンチをチャンスに変えるための文言というものはある。
おそらく実直さと、運とでここまで上り詰めたお方。人がよさそうなだけに、
思わず黒子として、予定原稿を予め書いてあげたくなった。

いずれにしても、言葉で身を鎧えない人に安全管理はできない。
かといって辞任するほど悪質な失言でもないとは思うが、
世間は発した言葉の全文を読んでその文脈から真意を
探ってくれるほど親切ではない。
この世は妬み嫉み僻み、悪意敵意で出来ていて
ましてある頂点に達した人への風あたりは強い。
男社会の嫉妬は凄まじいのだ。
相手が野党なら、もっとである。

物好きに桜田大臣の言葉を推敲してみる。

「びっくりした。病気のことなので、早く治療に専念していただいて、一日も早く元気な姿になって戻ってもらいたいというのが、私の率直な気持ちだ」

⇒驚き、また胸が痛んだ。あの年齢で受け止めるには過酷過ぎる現実だと、我が娘のことを考えなおさら、つらい思いをした(あるいは、もし自分にあの年頃の娘がいたら、とつらかった)


記者:競泳の中でも有力な選手だ。

桜田五輪担当相「金メダル候補で、日本が本当に期待している選手だから、本当にがっかりしている。早く治療に専念していただいて、また元気な姿を見たい」

⇒「今は選手云々という肩書はむしろ外して、病を癒やすことにどうぞ専念していただきたい」




記者:池江選手にエールを送るとしたら?

桜田五輪担当相「とにかく治療を最優先して、元気な姿を見たい。またがんばっている姿を期待している」 ⇒「病の重圧に耐えている18歳にエールはかえって酷だと思うので、慎みたい。敢えて、今は五輪のことは忘れ治療に専念をと申し上げたい。メダルよりあなたの命が大切だ」

思いつくままで満点推敲ではないが、これだと少々一部を切り取られて報道されても「敵」に付け入られる余地はない。

辞任しないという表明も、言葉が拙い。

「職務を全力で全うするつもりだ。今までの分も挽回できるように、一生懸命頑張りたい」 ⇒「皆様ご承知のように、思いはあっても口下手で伝わらず、それを恥じている。頂いたご叱責を胸にしっかり刻み、与えられた職責を全うすることで責任を果たさせて頂きたい」


3 コメント

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また牽強付会の擁護 (菜の花)
2019-02-15 13:35:29
井沢先生 皆様 こんにちは。

桜田五輪相の失言をまた「全文を読め」という形で、擁護する人達がいることで、杉田水脈論文を思い出しました。
全体も何も、その中で【言ってはならない言葉を発した】のが問題の基本です。
政治家は常に、一言を切り取られる状況にあるのだから、全体を読まねばなどという擁護は甘やかし過ぎで、御本人の今後のためにもためにならないことは、桜田五輪相も杉田議員に対しても同じことです。
苦い反省の機会を奪わないほうがいいです。
また余計な事を (美しい日本)
2019-02-16 22:39:38
井沢先生  こんばんは

本日行われたトークイベントで、橋本聖子氏は「私はオリンピックの神様が池江璃花子の体を使って、オリンピック、パラリンピックというものをもっと大きな視点で考えなさい、と言ってきたのかなというふうに思いました。〈後略〉」などと話したそうです。

日本オリンピック委員会(JOC)副会長であり参院議員でもある方が公に、
このような思い込みの強い、独善的な意見を述べるのは、どうなのかなと思いました。


橋本聖子氏「五輪の神様が池江選手の体を使って言ってきた」
https://www.sankei.com/sports/news/190216/spo1902160033-n1.html

橋本聖子氏「五輪の神様が池江選手の体を使って…」
https://www.asahi.com/articles/ASM2J6649M2JUTQP021.html


【ハァ?】JOC副会長「五輪の神様が池江選手の体を使って…」← 訳のわからないことを言い出す・・・・・
http://exawarosu.net/archives/15732633.html
失言というレベルではなく (井沢満)
2019-02-17 07:13:26
愚かとしか言えません。
困った議員が結構います。

ある現役の女性議員は面倒見てくれと頼まれ、
立候補前に言葉の訓練を試みたのですが
自信過剰で聞く耳持たず・・・・
それでも当選しましたが、反対者への恫喝は
やらかすわ、発する言葉は拙いわ、登壇しての
スピーチでは感極まって泣きじゃくるわ(注意したのですが)、案の定選挙区ではもはや相手にされず、比例でやっと首をつないでいまだ議員をやっています。
高校のある分野の教師で、とりあえず自分は国語が出来ると勘違いしていたのでしょう。言語不自由を自覚せず、うぬぼれている人に言語の発達はありません。
作家希望者には、掃いて捨てるほどいます。そんなのは、自業自得で世の中には出られませんが、政治家はそれなりに別の要素で出ていくので、困ったものです。