井沢満ブログ

後進に伝えたい技術論もないわけではなく、「井沢満の脚本講座」をたまに、後はのんびりよしなしごとを綴って行きます。

雪冷え、飛び切り燗

2019年02月27日 | 日本語

しばらく顔を見ないと寂しくなる人がいて、三田佳子さんが
その数少ないお一人だ。

というわけで、先月食事をご一緒したばかりだが
昨夜も会食。大いに語り合い、そのうちお付きの
マネージャーさんより外から電話で、もう4時間が
経過していて、そろそろご帰還をとの催促だった。
この間も時間を忘れ、4時間半が経っていた。

飲みは私ばかりで日本酒のぬる燗2合、三田さんは
盃に二杯程度。

一度書いたことがあるが、日本は酒の温度にも細かい段階があり、
きれいな名前がつけられている。

 

「雪冷え」5℃
「花冷え」10℃
「涼冷え」15℃

以上が冷酒。

「冷や」20℃

冷やが常温。

以下が燗酒である。


「日向燗」30℃
「人肌燗」35℃
「ぬる燗」40℃
「上燗」45℃
「熱燗」50℃
「飛び切り燗」55℃

 

 

日本人として「雪冷え」と「飛び切り燗」の2語程度は心得ておきたい。

色彩も茶とグレーとに、濃淡と明度に応じて細かい名前がびっしり
つけられていて、日本人の繊細な感性に改めて驚嘆する。

伝統的な和食の時代には舌も、敏感であったと思われる。
土地の旬のものを濃厚な味付けなしに食していた時代だが、結局
それが健康維持にも叶っているようだ。

偉そうなことを書いているが、私もおそらく人肌燗とぬる燗の
区別はつかない。

明治維新期に、慌ただしく西欧文明を取り入れ、それは
致し方なかったことだが、やり過ぎた。今にして
思えば西欧の野蛮な”文明”まで識別なしに受け入れてしまい、
敗戦がそこに拍車をかけた。

昨今の言葉の貧困もまた、その一環であり内館牧子著、
「カネを積まれても使いたくない日本語」を読んだら
「頭の中の植民地化」という言葉があり、膝を打った。
私のかねがねの主張「日本語は国の防波堤」に通じる。


2 コメント

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美しい名前ですね。 (ポテ太)
2019-02-27 15:20:59
毎日、更新を楽しみにしております。
「冷や」を頼んでも「冷酒」を持って来られると、がっかりします。それなりのお店でもこのような場合が多いです。そのくせ、品書きには銘酒がずら~り。

説明が面倒なので、最近は「常温で」と頼むようになりました。
専門店のこだわりが無くなりつつあるような気がします。
日本語は国の防波堤 (芦屋川)
2019-02-27 19:54:20
『カネを積まれても使いたくない日本語』に、
国語学者の大野晋さんが「戦争に負けるとはこういうことかもしれないな。
頭の中を植民地にされたんだよ」と言ったという話がでてきて、
あ、これが井沢先生のおっしゃっていた
「日本語は国の防波堤」ということなんだ、
と思いました。
今日の記事のような、繊細で美しい日本語のお話や、日本語の使い方、意外な由来なども含め、
「日本語は国の防波堤」というテーマで、
井沢先生に本を出版していただけたらと思っております。