某パチンコ店の駐車場で大規模な火災が発生し、約 150 台の車両に被害が発生したというニュースは耳にしたことがあるかと思います(8 月 20 日のニュースです)。
この被害車両の中には、いわゆる営業車(社有車)が含まれていたところ、どうやら運転手は業務時間中であるにもかかわらず、仕事をさぼってパチンコに興じていたそうです。
観念した運転手は勤務先の社長に対して報告を行ったところ、社長は「営業車 1 台失ったけれども、会社の宣伝が出来るなら広告費だと思って今回の件は目を瞑る」、「もし宣伝ができなければ弁償するように」と回答したそうです。
この内容は旧 Twitter(現X)を通じて瞬く間に拡散したところ、この会社には現在取引依頼が殺到しているそうです。
こんなことがあるのか!というくらいの美談です。狙っていたのかはともかく社長の対応には感服するというほかありません。
ただ、実際に自社でこんな事例が発生した場合、この社長のような対応はできるでしょうか。私ならできません。間違いなく叱りつけますし、何らかの懲戒処分や弁償を求めると思います。そして法的に考えた場合、弁償についてはやや疑義があるのですが、職務専念義務違反・服務規律違反に基づき懲戒処分を科すこと自体は何ら問題ないと考えられます。
経営者の皆様においては、上記のような社長の対応が唯一の正解とは考え、自らの首を絞めないようにしてください。
また、従業員の皆様においては、上記社長の対応は特殊例外であり、自社の社長に同様の対応は求めることは法的にも道徳的にも誤りであることを認識してください。
こういった美談(?)が出ると、変な空気が生まれ経営環境の悪化を招きかねないことから、コメントしてみました。
弁護士 湯原伸一 |