弁護士湯原伸一(大阪弁護士会)の右往左往日記

弁護士になって感じたことを綴っていきます(注意!!本ブログは弁護士湯原の個人的見解に過ぎません)

会社はどこまで従業員の行動を把握できるのか?

2005年10月27日 | 経験談・感じたこと
とある方から、
「このところ、テロやら暴動やらで何が起こるか分からない世の中になっている。プライベートな長期旅行であっても、できる限り従業員の所在を確認したい。そこで、長期旅行の場合、従業員に行き先と緊急連絡先を書いた書面を提出させようと考えている。大丈夫だろうか?」
と相談を受けました。

たしかに、会社側からすれば、何か事情があって連絡を取りたい!あるいは報道等によって初めて従業員の所在が分かった!という場合、適切な初動対応ができないのも事実です。
しかし、業務中であればともかく、プライベートなことにまで会社が口を挟むこと自体はあまり望ましいことではありませんし、そもそも書面提出を行わなかったからといって、会社業務に直ちに悪影響を与えるわけではないでしょう。

したがって、あまり会社側にとって都合の良い返事はできないという結論に至りました。
上記件については、制度自体を設計するのはOKだが、義務化し、書面提出を拒否した場合に懲戒処分を行う、あるいは時季変更権を行使するという運用は違法と判断される可能性が高いと結論づけ、相談者に回答を行いました(要は、提出するか否かは従業員の任意の判断に委ねられるので、会社側の目的を達成することは難しい)。

とまぁ、ここまでは一応の弁護士らしき回答な訳ですが、大変心苦しい!
弁護士たる者、依頼者の利益を最大限追求する必要があるわけですが、実際には、依頼者から嫌われたくない!と思うこともあり、今回の場合は、自分でも今ひとつだなぁと思うわけです。

弁護士って冷たい!ビジネスを分かっていない!とよくお叱りを受けますが、色々と悩んでいることは分かって欲しいですね。
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