万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

危険地域への渡航は自由の濫用

2007年07月31日 20時13分02秒 | アジア
韓国政府、2人目の遺体確認 アフガンの拉致・殺害事件(共同通信) - goo ニュース

 我が国におきましても、かつて、イラクでのテロリストによる邦人人質事件をきっかけに、国家と個人の自由との衝突問題が、激しく議論されたことがありました。政府が渡航自粛勧告を発している危険地域に行くことは、この個人の自由の範囲として許されるのかどうか、なかなか議論の決着はつかなかったのです。

 確かに、個人には行動の自由があります。しかしながら、他者が犠牲になる可能性がある場合に、周りの状況を考慮せず、自らの意思のみに従って行動することは、自由の濫用に当たるのではないか、と思うのです。

 新生アフガニスタンの建国以来、アフガニスタン政府と兵士の方々は、国づくりのために、自らの命さえ犠牲にしながらテロリストと闘ってました。その犠牲と努力が、今回の事件で水泡に帰し、復活したタリバンが国民を再び苦しめようになるかもしれません。

 もちろん、悪の張本人であるテロリストが捕まり、人質が解放されることが理想的な解決ではありますが、たとえ信仰という個人の信念に基づく行動であったとしても、その代償はあまりに大きいと言わざるをえないのです。

 人間の自由は、適切な範囲において用いられてこそ価値があるのであり、その濫用は、自分自身のみならず他者をも犠牲にしかねないのです。

 

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

歴史の教訓が忘れられる日?

2007年07月31日 10時51分11秒 | アメリカ
金正日がライス長官と握手する日(ファクタ) - goo ニュース

 相手が独裁者であっても、人間とは、一片の人間性を信じて”話せばわかる”と考えがちです。しかしながら、1938年9月の”ミュンヘンの融和”や1994年の”米朝枠組み合意”を例に引くまでもなく、こうした楽観的な期待はしばしば裏切られ、結局、人類に、苦い歴史の教訓を残すことになるのです。

 さて、現代生きる人間は、過去に生きた人々と比べて賢くなっているのでしょうか。少なくとも北朝鮮の行動を見る限り、むしろ、野蛮と暴力が支配した時代に逆戻りしているようにさえ見受けられます。こうした場合、価値観の違う相手には融和政策は必ずしも通用せず、最終的に狡猾な相手を利し、自らをも危険にさらすこともあり得るのです。

 最悪の事態への備えは、常に用意しておくに越したことはありません。金正日とライス長官が握手する日、それは、歴史の教訓が忘れられた日となるかもしれないのですから。

 
 

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする