万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

全ての制度は永遠に未完である

2008年12月31日 16時34分58秒 | 国際政治
2009年の世界経済 回復に必要な3つの優先事項――フィナンシャル・タイムズ(フィナンシャル・タイムズ) - goo ニュース
 時代の最先端を生きているという現代人の感覚は、何事においても、とかくに過信や傲慢を生むもののようです。金融危機が発生する以前にあっては、誰もが、現代という時代に、世界恐慌の再来を本気で心配することになるとは、想像さえしていなかったことでしょう。

 しかしながら、少しばかり謙虚になって世の中を見渡してみますと、人間とは、まだまだ未熟な存在であり、如何なる制度も、完璧にはほど遠いことに気付かされます。否、完璧な制度など、現実には存在していないかもしれません。何故ならば、時代とともに、人類が未経験の現象が起きたり、解決すべき問題が変化するからです。政治分野であれ、経済分野であれ、社会分野であれ、制度とは、常に、手痛い失敗に学び、予測される混乱の中から生まれてくるものとも言えましょう。

 全ての制度は永遠に未完である。この前提に立脚すれば、問題への取り組みも、僅かなりとも気が楽になるかもしれません。未完であるということは、可能性が無限にあることをも意味するからです。来年は、よき制度の構築に向けて、可能性を切り開く年となることを願って、本年、最後のブログ記事といたしたいと思います。今年一年、本ブログの拙い記事を読んでくださった皆さま方、ならびに、コメントをお寄せくださいました皆さま方に、心より御礼申し上げます。ありがとうございました。

 皆さま方が、よいお年をお迎えになりますように。

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中国の軍拡を直視しない日本国

2008年12月30日 16時01分31秒 | 国際政治
中国、初の空母建造へ 来年着手、15年までに中型2隻(朝日新聞) - goo ニュース
 かつて、中国の軍部高官がアメリカに対して”太平洋分割案”を提案したというニュースが流れたとき、中国の”大風呂敷”と捉えた人は多かったはずです。しかしながら、空母建造計画の報に接しますと、やはり、今後の中国の基本的な政策方針は、太平洋からインド洋にかけての海洋覇権の確立であると考えざるを得ないのです。

 中華思想に基づく行動パターンから推測しますと、中国は、アメリカを含め、日本国や他の周辺諸国の意向などは無視して、この方針を貫こうとすることでしょう。空母建造も、実力主義の表明とも言え、国際的な覇権の承認は、後から付いてくるとでも考えているようです。一方、中国の軍事的プレゼンスの増大が、アジア諸国に脅威を与え、ややもすると、独立やシーレーンの確保にさえ影響が及ぼすことは、言うまでもありません。中国の軍拡は、その意図が見えるだけに、抑止を要する現下の危機なのです。

 にもかかわらず、日本国の政府やマスコミの対応を見てみますと、必ずしも、危機意識を抱いているとは言えないようです。常々”日中友好”が強調されていますし、軍拡の事実を直視しているようにも見えません。日本国の政治感覚の麻痺が対策の遅れを生み、手遅れとなることが懸念されるのです。ここ数年来、”アジアの時代”がしきりに喧伝されてきましたが、それが、”中国支配の時代”を意味するならば、日本国は、あまりに大きなものを失うことになるのではないでしょうか。

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定額給付金―政策は理解度で決まる?

2008年12月29日 16時34分29秒 | 日本政治
定額給付金と補正予算案の分離、官房長官「理解できない」(読売新聞) - goo ニュース
 世論調査によりますと、定額給付金政策は、すこぶる評判がよくないようです。国民のみならず、景気浮上の効果は疑問、とするエコノミストの声も少なくありません。民主党が、第二次補正予算案からの切り離しを求める背景には、本政策に対する根強い懐疑論があると言えましょう。

 こうした反対論が渦巻く中で、河村官房長官は、定額給付金を第二次補正予算案から切り離す提案に対して、”理解できない”と述べ、否定的な見解を示しました。しかしながら、”理解できない”では、分離案に反対する理由を説明したことにはならないのではないでしょうか。もし、政府与党が、国民の多くの反対と専門家の意見に抗して定額給付金を支給したいのならば、反対論に対して具体的、かつ、客観的な根拠を示し、むしろ、反対者を説得する必要があります。強引に定額給付金を実施した結果、心配されたとおりの結果となってしまったら、それこそ、政府は責任を問われることになりましょう。

 官房長官の理解度によって政策の評価が決まるとなりますと、如何に効果的で理に適った政策であっても、個人の主観と理解力によって排除されてしまうことになります。政府は、反対の強い政策ほど、丁寧に説明を行うべきですし、議論と説明を尽くしても、なおも国民多数の”理解”を得られないならば、諦めることも選択肢に含めるべきと思うのです。

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日米安保に”核の傘”条項を

2008年12月28日 15時26分09秒 | 国際政治
米、日本から核兵器20発分搬出 研究用の高濃縮ウラン580キロ (共同通信) - goo ニュース
 核拡散の防止を目的としたNPT条約は、核保有国に対しては、核兵器の移譲や技術支援を行ってはならないとする一方で、非核保有国に対しても、核兵器の供与や開発支援を受けてはならなず、また、核兵器の開発を行ってはならないことを定めています。

 日本からの高濃縮ウランの核保有国であるアメリカへの移送も、この条約の文脈から理解されるのですが、果たして、アメリカは、NPT条約において、日本国に核の傘を提供する義務を負っているのでしょうか。常識的に考えれば、日米同盟もありますので、アメリカは、日本国を間接的に核で守る義務があると推測されます。しかしながら、その一方で、NPT条約には、核保有国が非核保有国に対して核の傘を提供するとする規定はなく、あくまでも、非核保有国側の期待に過ぎなくなる恐れもあります。東アジアには、非核化を保障する枠組みとしての非核地帯条約もありませんので、核の脅威は深刻なのです。中国のミサイルが日本国に照準を合わせ、北朝鮮の核保有が現実味を増す中で、現実的に考えれば、日本国には、核の脅威への対抗策が必要と言えましょう。

 もし、核武装の方針を採るならば、日米同盟を利用する間接的な方法と、自力で核武装を行う直接的な方法とがあります。間接的な方法としては、1)同盟国のアメリカ政府に対して安保の改正を打診し、アメリカによる日本国への”核の傘”の提供を条約に追加する、2)日米同盟の付属議定書として”核の傘”の提供を条文化する、といった方法が考えられます。もし、この方法が無理であるならば、2)NPT条約の改正申請、あるいは、脱退により、自力で核武装する、という直接的な方法しかなくなります。

 一方、あくまでも非核化を目指すならば、3)東アジアにおいて非核地帯条約を締結し、核保有国であるアメリカ、ロシア、中国は、追加議定書において非核化の責任を負う、4)六カ国協議を非核化のための保障機構に改変する、といった方法があります。ただし、この場合、アメリカ、ロシア、中国という三大核保有国が含まれていますので、アジア以外の地域での紛争が飛び火して、核兵器が使用される可能性は否定できません。

 最も現実性の高い方法は、NPT体制の非対称性を考慮して、日米安保に”核の傘”条項を加えることかもしれません。少なくとも、国際情勢が激しく変化する中で、現状のまま曖昧でありますと、日本国の安全保障は覚束ないと思うのです。

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国境を超える分野と超えない分野

2008年12月27日 13時13分42秒 | 国際政治
新世界秩序が導くポストアメリカの未来(2)(ニューズウィーク日本版) - goo ニュース
 最近、金融危機への効果的な対応には、広範な国際協力が不可欠であるとする論調を多く目にするようになりました。瞬時でマネーが国境を超えるという現実を考慮しますと、金融の分野に国際協調や政府間協力が必要であることは言うまでもありません。特に、金融市場のルール作りや金融政策の政策協調は、早急に取り組むべき課題ですし、そのためには、G20といった国際会議が、”立法”、あるいは、”政策決定”機能の一端を担うようになるかもしれません。

 しかしながら、その一方で、すべての政策分野において、立法をも含意する国際協調が望ましいかと言いますと、そうとも言えないように思うのです。特に、国家の独立や内政にかかわる政策領域については、むしろ、個別の国家による独自の政策を相互に尊重すべきなのかもしれません。その理由は、もし、防衛、外交、社会保障、移民、教育・・・といった政治色や社会色の強い分野に、拘束力のある政策協調が及びますと、それは、外国からの内政干渉や独立の危機を意味してしまう可能性があるからです。これでは、”国際協調”は、国家の混乱と弱体化を招き、国際システム全体としても、安定性を欠くかもしれません。

 グローバル化した経済と分立型の国民国家体系を調和させるためには、国境を超える分野と超えない分野とを見極め、それぞれ、異なる対応をすべきと思うのです。

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ソマリア沖の海賊対策は海洋治安維持活動

2008年12月26日 16時02分24秒 | 国際政治
海賊対策で自衛隊の武器使用限定容認=政府、海自派遣の一般法提出-外国船も対象(時事通信) - goo ニュース
 第二次世界大戦後、多くの人々は、自国民の保護を理由として、海外に自国の軍隊を派遣することは、戦争の一歩手前の行為と考えてきました。実際に、今年8月に起きたグルジア紛争でも、ロシアが、自国民の保護を理由として軍隊を進駐させたことは、国際世論の激しい非難を浴びたものです。

 それでは、ソマリア沖への軍隊の派遣も、同様に国際社会の秩序を乱す行為なのでしょうか。どうやら、ソマリア沖のケースは、前者とは違っているようなのです。その理由は、・・・

1)ソマリア沖への軍隊の派遣は、”航路”を守ることが目的であること。”航路”とは、すべての国々が便益を享受できる国際社会の共通インフラであり、共通インフラの安全確保には、当然に、国際協力が必要となります。

2)軍隊が派遣されても、特定の国の領域を侵犯するわけではないこと。第一義的な治安責任は、もちろん、沿岸国にありますが、外国の軍隊が派遣されても、治安維持に目的が限定されている限り、それが、特定の国の領土を占領したり、主権を侵害する行為とはなりません。

3)戦争に発展する可能性が低いこと。ソマリア沖に出没する海賊は、民間の犯罪組織と見なされており、海賊退治は、海賊の国籍国の政府が、正当に戦争に訴える理由とはなりません。

 このように考えますと、日本国政府が、ソマリア沖に海上自衛隊を派遣することは、海洋の治安維持活動のために負うべき、当然の責務と言えるかもしれません。自衛隊の海外派遣が検討される度に、憲法論争が繰り返されてきましたが、政府は、ソマリア沖の現状を直視した上で、装備を含め、現実的な対応を行うべきと思うのです。

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内閣法制局の存在意義を否定する政府

2008年12月25日 15時40分34秒 | 日本政治
政府「政教分離」答弁を撤回、公明の質問主意書に答えて(読売新聞) - goo ニュース
 もし、特定の宗教団体が国会に議員を多数送り込み、国家権力を用いて布教活動を行うとしたらどうなるのか?誰もが、この行為は、政教分離の原則を定めた憲法に違反すると考えるはずです。内閣法制局も、当然に、憲法違反と答えたのですが驚くべきことに、公明党の圧力によって、この答弁が撤回されてしまったというのです。

 撤回の根拠として、公明党は、「事実関係を仮定しての質問に、法令を当てはめて答弁したことは不適当だ」と述べたと言います。しかしながら、この理由は、撤回を正当化する根拠とはなりません。何故ならば、内閣法制局の役割とは、政府や国会が提出する法律案や行為が、憲法や法律に反していないかを事前にチェックすることにあるからです。つまり、内閣法制局は、常に、仮定の段階で、憲法や法律に照らして判断を行っているのであり、実際に具体的な事件が起きてからでなければ、判断できないとなりますと、内閣法制局の事前チェックの意味はなくなるのです。公明党の理屈が通るなら、集団的自衛権の行使に関する内閣法制局の解釈も、戦争が実際に発生してからでなければ、行うことができないことになりましょう。

 本来、内閣法制局とは、政府の内部にありながら、独立的な立場から法を解釈することによって、権力の暴走を防ぐ役割を果たしております。仮定に基づく内閣法制局への質問を禁じ、また、政府が、その答弁を自由に撤回する権限を持ちますと、内閣法制局の存在意義は失われてしまうのではないでしょうか。 

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移民労働者は雇用調整のバッファーには適さない

2008年12月24日 15時27分26秒 | 日本政治
定住外国人支援を指示=景気悪化で-麻生首相(時事通信) - goo ニュース
 不景気の影響を受けて雇用の減少も現実化している中、経団連は、移民政策支持の基本方針は変えていないようです。一方、マスコミでは、連日のように、移民労働者の解雇と生活の窮状が伝えられております。それでは、日本国政府は、経団連の要望を受け入れて、移民政策を推進すべきなのでしょうか。

 確かに、企業にとりましては、移民労働者の労働力は、廉価であるという側面において魅力的です。好景気にあって、労働力が不足した状況にあれば、なおさらのことです。しかしながら、一たび景気が反転しますと、移民労働者の負の部分が表面化します。どの国でも、まっ先に解雇の対象となるのは、移民労働者であるからです。このことは、遠路はるばる母国を離れて職に就いた人々を、路頭に迷わす結果を招くことになります。経済の調子の良い時には歓迎し(利用?)、悪くなれば首を切る、ということでは、企業は、社会的な責任を問われることになりましょう。また、解雇した後は、政治に面倒を見させるということでは、他者への負担の押し付けになってしまいます。

 移民労働者は、居住国において1)言葉が不自由であること、2)頼れる身寄りがいないこと、3)単純労働者が多いこと、4)本国に容易に帰れないこと、といったハンディがあり、再就職も困難です。この点を考えますと、移民労働者は、そもそも、雇用調整のバッファーには適さないのではないでしょうか。もし、企業がどうしても移民労働者を雇用したいならば、せめて、契約時の条件に、解雇に際し、帰国の旅費を企業側が負担することを雇用条件に加えるすべきではないかと思うのです。

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財政出動で民間が衰える?

2008年12月23日 15時51分59秒 | 日本経済
3年後、消費増税 「景気好転前提に明記」与党合意(産経新聞) - goo ニュース
 100年に一度の経済危機を前に、迅速で大規模な財政出動を求める声は決して小さくありません。麻生政権の支持率低下の原因は、第二次補正予算の成立が遅れているから、との説もあるくらいです。しかしながら、期待の大きい財政政策であっても、マイナス面が全くないわけではありません。

1)財政政策に伴う最大の欠点は、将来において、増税が不可避であることです。しかも、出動の規模が大きければ大きいほど、後の負担が大きくなります。今般、3年後の消費税の税率上げが検討されていますが、それで足りるという保障もありません。

2)財政出動の対象に経済成長の促進作用がない場合には、何年財政出動を続けても、経済は回復しません。また、大規模な財政出動を毎年続けることも無理ですので、結局、何れかの時点で行き詰ってしまうことになります。

3)財源確保のために増発された国債が、市中の資金を公的部門に集中させてしまいますと、むしろ、民間部門への資金の供給が細ることになります。ややもしますと、購買力を、民間から公的部門に強制的に移転するに過ぎなくなるかもしれません。

4)公共事業の対象が、インフラの整備が中心となりますと、関連する建設業や不動産業などの業種は助かりますが、消費財を生産している企業にその恩恵が及ぶとは限りません。また、インフラ整備では、工期が終了しますと、再び雇用不安が再発しますので、カンフル剤にしかなりません。しかも、採算性が合わない事業の場合には、維持費という負担も残ります。

 もしかしますと、財政出動型の手法では、国民の国家に対する依存度を高めるとともに、国家の市場に対する介入をも強め、さらには、民間の自己回復力や対応力を弱めることになるかもしれません。それが、さらなる停滞を生むとしますと、政府主導の景気回復策は、民間の一般企業にとりまして、本当にプラスとなるのか疑問なところです。大型の財政出動や第二の”ニューディール”待望論がうずまくなかで、この見解は、”あまのじゃく”なのでしょうか?

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国債の日銀引き受けより安全な方法

2008年12月22日 15時59分43秒 | 日本経済
「日銀引き受けで25兆円支出増」という思考実験――パンドラの箱を開ける【野口悠紀雄コラム】(ダイヤモンド・オンライン) - goo ニュース

 しばしば、財政には、ビルト・イン・スタビライザーの役割があると言われております。しかしながら、この安定化機能は、巨大な規模の変動が発生した場合、財政が、税収に依存しているがために、負担能力を超えてしまいます。例えば、1000兆円の損失を財政が被るとしますと、国家予算を長期にわたってつぎ込まなければならなくなります。これは、まさに、バブル崩壊後の日本国の財政状況です。

 この点を考慮しますと、ここはやはり、中央銀行の金融政策に期待するしかありません。ゼロ金利に限りなく近づいてしまった現状では、政策金利の調整は効果がありませんので、残された手段は限られています。政府からの直接の国債買い取り案も提起されておりますが、まず試みるべき方法とは、公開オペレーション(長期買いオペ)なのではないか、と思うのです。

 この方法は、国債の引受と同様に、基本的には債権の買い取りなのですが、より安全な理由として、以下の点が挙げられます。
1)民間金融機関からの債券買い取りになるので、金融機関の貸付能力を強化できること(黒字倒産、貸し渋りの防止、資金繰りの悪化の緩和、失業者の増大・・・)。国債買い切りにはこの効果はありません。
2)需要の拡大が、民間部門で起きること。国債買い切りでは、需要の拡大は公的部門に集中し、特に、それが”無駄”な支出であれば、長期的には国民の税負担が増加します。
3)日銀が、インフレ調整の手綱を握っていること。買いオペで購入した債券は、後に売りオペすればよく、国債買い切りでは、その後に悪性のインフレが発生した場合、コントロールが困難となります。
 なお、この手法を実施するに当たっては、日銀の買オペ対象の債権を拡大すること(PCや国債も検討?)や日銀による長期保有の承認(売りオペは、景気回復の後…)が必要となるかもしれません。

 ケインズ流の政府主導型の景気回復の手法では、民間の消費を喚起するには時間がかかり、かつ、対処療法とはなっても、経済全体への波及には限界があるかもしれません。むしろ、民間金融機関の貸し出しを能力の強化に努めることによって、雇用が維持できれば、国民の可処分所得は減少しませんので、消費の落ち込みは抑えることができます。金融危機は、金融の専門機関である日銀が、率先して解決に臨むべきと思うのです。

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裁判員は拒否できるのか?

2008年12月21日 15時31分32秒 | 日本政治
裁判員候補3人、制度反対訴え実名会見「裁きたくない」(朝日新聞) - goo ニュース
 今から4年前の5月のこと、国民に対する十分な説明も、議論もされることなく、突如、『裁判員法』、全会一致で国会で可決されました。この経緯からしましても、裁判員制度について疑問や不安を抱いている国民は、決して少なくないはずです。

 それでは、この制度に反対する人々は、抽選で裁判員に選ばれた場合、これを拒否できるのでしょうか。報道によりますと、裁判員の候補者に選ばれた方が、実名で会見を開き、その中で、もし、選ばれたら拒絶するとの見解を述べた方もいらしたようです。しかしながら、一端、法律として制定された限りは、ここは我慢して、引き受けるべきではないか、と思うのです(『裁判員法』では、正当な理由なく出頭を拒否すると10万円以下の過料も科されるそうです・・・)。もし、意に沿わない法律や納得できない法律であるならば、個人的な判断で法律上の義務を果たさなくてもよい、という事例が認められてしまいますと、これは、他の全ての法律や制度にも及ぶことになります。日教組の活動で問題となったように、様々な分野において主観的な”拒否”が多発することになりましょう。

 このように考えますと、裁判員制度への反対は、憲法第80条や18条違反を理由に違憲訴訟を起こすか、あるいは、国会に対して、『裁判員法』の廃止や見直しを求める活動を通して行うべきと思うのです。そうして国会もまた、制度導入の拙速を反省し、国民の反対と不満の声に誠実に耳を傾けるべきなのではないでしょうか。

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国債管理の苦しみが待つ財務省

2008年12月20日 15時36分45秒 | 日本経済
国債発行132兆円、4年ぶりの増額 09年度発行計画(朝日新聞) - goo ニュース
 金融危機による景気後退を受けて、来年度の新規国債発行額は、30兆円を超えるそうです。財政健全化への道は、また遠のいたようですが、財務省は、今後、国債管理に苦しむことになるのではないか、と思うのです。

 第一に、財務省は、国債の引き受け手を確保しなくてはなりません。不況が深刻化する中、どの国でも国債の大量発行を計画しています。また、これまでは、日本国の国債は、安定的に国内で消化されてきましたが、国内金融機関の経営状況次第では、日本国政府も安心はしていられません。

 第二に、民間の資金不足を引き起こさないように、十分な注意が必要です。日銀は、昨日、政策金利を0.1%に下げましたが、国債の利回りが民間債権よりも上回りますと、クラウディング・アウトという現象が起こり、企業への資金供給を細らせてしまいます。

 第三に、現在、国債の利払いのみで9兆円を超える額が支払われていますが、長期金利の上昇を防ぎませんと、政策予算にまで影響が及びます。税収の伸びが期待できませんので、利払いの増加は、即、予算の減額となるのです。

 景気対策のためとはいえ、国債増発にはリスクを伴うものであり、財務省が、リスク管理に失敗しますと、日本経済そのものの基盤が揺らぎます。そうして、政策を決定する政治の側も、景気対策にはプラス面のみならず、重大なリスクを伴うことも、よくよく考えるべきと思うのです。

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米朝トップ会談のために生き返る”金総書記”?

2008年12月19日 13時41分07秒 | アジア
北朝鮮の金総書記は健在、政府も掌握=米軍司令官(トムソンロイター) - goo ニュース
 次期大統領のオバマ氏は、選挙キャンペーン中に、条件なしで北朝鮮とのトップ会談を行うと主張していました。ところで、オバマ政権の成立と総書記健康説との間には、関係があるように思うのです。

 何故ならば、かねてから北朝鮮が熱望してきた米朝トップ会談を開くには、どうしても”金総書記”なる人物が、北朝鮮に存在していなければならないからです。もし、現時点で、脳卒中の結果、執務不可能とということが明らかになれば、当然に、米朝会談は流れ、仕切り直しをしなければなりません。それどころか、北朝鮮を代表し、外国との交渉権を持つ人物も存在しなくなるのですから、北朝鮮にとりましては、何が何でも”金総書記”に生きていてもらわなければ困るはずなのです。この北朝鮮の状況を考えますと、影武者説もあながち否定できません。

 そもそも、21世紀にもなって、秘密主義が支配する独裁国家が存在していることに無理があり、周辺諸国は、北朝鮮の面子に拘り、他者を欺こうとする詐術的な手法に、常に振り回されることになります。この手法は、短期的には上手くいっても、長期的には信頼を失うだけです。近い将来に、”オバマ大統領”が訪朝し、会談の相手が、本物か偽物かを見破る日は来るのでしょうか?

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日銀はゼロ金利政策に戻るのか

2008年12月18日 15時44分41秒 | 日本経済
日銀政策発表、中途半端なら一段の円高/株安リスク(トムソンロイター) - goo ニュース
 経済とは”生きもの”であって、経済予測ほど難しいことはありません。先の先を読んで決定することは、誰にとってもリスクに満ちた行為です。それでは、アメリカのFRBが、ゼロ金利政策に転じた今、日銀もまた、ゼロ金利政策に回帰すべきなのでしょうか。

 FRBの政策発表以降、円高がさらに更新し、その理由として、日米の金利差が逆転したため、投資家による円需要が増加したことが指摘されています。これまでの長期的な流れが逆転し、日本に資金が流れ込むことになったのです。それでは、買われた円は、何処に投資されているのでしょうか。もちろん、投資家が、日銀の政策金利である0.3%の収益に期待し、あるいは、更なる円高を見越して(投機?)、運用せずにそのまま保有しているかもしれません。一方、もし、保有している円を有効に利用しようとするならば、日本の証券市場で日本株を買い付ける可能性もあります。もし、この日本買いが民間への投資拡大を意味するならば、日本国の経済には救いとなりましょう。

 ところが、円高が進む中での株価の動向を見ますと、取り立てて大きな上昇はありませんでした。もし、証券市場への円建て投資が控えられているとしますと、もしかしますと、日本国債が、円資金の有力な受け皿になっているのかもしれません。実際に、外国投資家による国債買いには勢いがあるとする情報もあります。

 さて、それでは、日銀はどうすべきなのでしょうか。せっかくに国債の引き受け手が現れているのだから、このままの状況を維持すべきという意見もあるでしょう。しかしながら、長期的に見ますと、日本国政府の借金体質は悪化しそうですし、仮に、景気回復に伴って、円資産の売りが始まりますと、国債の暴落さえ心配されます。

 このシナリオは、ある一面を切り抜いた予測に過ぎませんし、政策には完璧なものはなく、必ずプラス面とマイナス面があるものです。ただしかし、行き過ぎた円高のリスクや不自然な資金の流れを考慮しましても、やはり、日銀は、ゼロ金利に戻した方が良いのではないか、と思うのです。

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砂漠の緑化に保湿土の開発を

2008年12月17日 16時24分13秒 | 国際政治
 今年は世界各地で温暖化が鳴りを潜め、太陽の黒点の観察や海水の温度から、厳冬の予測さえあります。地球温暖化対策の国際協力も、来年のアメリカの政権交代を見越してか、各国とも様子見の状態のようです。ところで、二酸化炭素の排出削減問題をひとまず脇に置くとしましても、環境政策には、今後とも、取り組まなければならない課題がたくさんあります。

 その中の一つに、砂漠の緑化があります。現在、なおも砂漠化現象は続いており、アジアやアフリカの人々は、食糧不足や生活不安の危険にさらされています。そこで、新たな環境技術として、保湿性、あるいは、保水性の高い土壌づくりの方法を開発してはどうかと思うのです。もちろん、積極的な植林事業も大切ですが、降水量の少ない地域では、植物の成長に限界があります。そこで、強い日差しにあっても乾燥せずに湿度を保ち、植物に水分を供給できるような土質の改良ができれば(何らかの保湿効果のある素材を散布、あるいは、混入する?)、砂漠化の問題は、おのずと解決に向かう可能性があります。

 国が積極的に産業政策の一環として、研究・技術開発を進める方法もありますし、民間の企業が独自にこれを行い、ビジネス化することもできましょう。もし、開発に成功すれば、将来的には、有力な輸出産業に成長するかもしれません。不況下にはありますが、人々に必要とされている技術の開発は、長期的には経済も、環境も救うと思うのです。

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