万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

グローバリズムのパラドックス

2007年07月17日 18時30分03秒 | 国際政治
 80年代以降に急速に進展した市場のグローバル化を背景として、いずれの国でも”グローバル化”や”国際化”が国家挙げてのスローガンとなった観があります。しかしながら、このグローバリズムには、奇妙なパラドックスがあることに気付いている人は、そう多くはありません。

 グローバリズムのパラドックス、それは、グローバル化を掛け声に、国境を越えた人の移動を自由化すればするほど、これまで築き上げてきた現代国家が、逆方向に退行してしまうという現象です。これは、先進国ほど深刻です。何故ならば、自由、民主主義、法の支配といった諸価値を基盤に作り上げられてきた制度が、これらの価値を共有しない人々によって崩されてしまう可能性があるからです。前近代的なネポティズムや人治、あるいは、慣習的な腐敗構造が先進国に蔓延し、やがて、自らも前近代的なシステムに埋没してしまうかもしれないのです。

 時代を開くはずのグローバリズムが、実は、時代を逆行させるかもしれない、これは、心配性の私の杞憂なのでしょうか?

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