万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

トルコの加盟でEUがイスラム化?

2007年07月13日 22時02分50秒 | ヨーロッパ
 トルコは、現在、EUへの加盟申請を行っております。国民の多くがイスラム教徒である同国の加盟は、キリスト教圏という共通の基盤の上に成立しているEUの将来をも占うとも言われています。

 ところで、トルコの加盟には、単なる宗教の相違にとどまらない問題があります。それは、仮に、トルコにおいて政教分離体制が維持できなくなった場合、イスラム教の教義がEUに内部化される可能性がある、という問題です。EUの立法や政策決定の仕組みでは、理事会の票数や欧州議会の議席数の割当てに人口比の原則が導入されています。つまり、人口を基準としますと、6889万人の人口を抱えるトルコは、ドイツに次ぐ票数と議席数を獲得できることになるのです。もちろん、制度的にはトルコ単独で法案や政策を可決させることはできないのですが、EU内におけるトルコの発言力は無視できないものとなりましょう。

 現在、トルコにおいて世俗主義を自任してきた第一党の公正発展党が親イスラム政策へと転ずる姿勢を見せる中、EU加盟のゆくへは、EU側の事情のみならず、トルコの国内事情にもかかっているのです。

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