万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

相互理解は万能薬?

2007年07月19日 17時45分41秒 | 国際政治
 国家間あるいは宗教や民族間において争いが起こるたびに、マスメディアでは、相互理解こそが万能薬である、と叫ばれています。しかしながら、この万能薬、いくら飲んでも効かない場合もあるのです。

 文化や風習の違いは、比較的簡単に相互理解で解決することができます。お互いに誤解が解けて、仲良くなることもできます。しかしながら、相互の違いが価値観にある場合には、万能薬のはずの相互理解は、途端に効き目がなくなるのです。例えば、自由や民主主義を尊ぶ国の国民が、暴力主義や全体主義の国を理解したとしても、それは友好関係の礎とはなりません。むしろ、相手方に、恐怖と嫌悪を覚えることでしょう。暴虐なヒトラーやスターリンと仲良くすることは不可能です。また、宗教にあっても、相手方の宗教が、異教徒に殺害してもよい、と教えている場合には、両者の関係は良好に保つことが難しくなります。

 相互理解が隠れ蓑となって、本当の悪が見逃されてしまうことには、充分な注意が必要であると思うのです。

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