万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

過渡期の安全保障政策とは-指向性エネルギー兵器の出現

2023年08月31日 09時39分47秒 | 国際政治
 極めて近い将来において、開発競争を経て指向性エネルギー兵器は実用化されることでしょう。そして、同兵器の登場は、核兵器をも越える脅威となり、人類を地獄に突き落とすかもしれません。しかしながらその一方で、使い方を間違えない、即ち、防衛兵器に特化、限定すれば、人類を戦争の恐怖から完全に解放する可能性をも秘めていると言えます。何れにしても、現在はまさに核兵器を主軸とするNPT体制から別の体制へと移る過渡期にあり、人類は重大な岐路に立たされていると言えましょう。

 そして、過去と現在と未来が混在する過渡期ほど、不安的な時期はありません。過去の延長線上において現在の事柄を決断することができない一方で、未定の未来のみを想定してこれを決めることもできないからです。言い換えますと、過去と未来との狭間にあって、過去に対応しつつ、未来が望ましい状態となるように、賢明なる行動をとらなければならないからです。国際社会における安全保障の分野に当てはめれば、第二次世界大戦末から続く核の脅威、即ち、属国化をも伴いかねない核兵器国による核の使用や威嚇に対処しつつ、未来については、指向性エネルギー兵器を平和目的に限定するという困難な作業を同時に進めなければならないこととなります。

 それでは、各国は、どうように対処すべきなのでしょうか。指向性エネルギー兵器が実用化されていない現段階にあっては、核の脅威は消えてはいません。同兵器が防衛兵器として全世界の諸国に拡散した時点で、はじめて人類は、核の脅威から解放されるのです。このことは、指向性エネルギー兵器の出現、否、その防衛目的への限定が実現する日を待っていたのでは、現在の脅威を取り除くことはできないことを意味します。

NPT体制が如何に脆弱であって、違法並びに不法な核保有国を含めて核を手にする諸国に対してのみ、絶対的な安全並びに攻撃力を与えていることは言うまでもありません。中小の非核兵器国は、いわば、核兵器国に対して無防備の状態に置かれたままなのです。東南アジアや中央アジア等の各地域で締結されている非核兵器地帯条約も、これらの諸国の安全を保障するのではなく、核兵器国優位体制であるNPT体制を強化しているのが偽らざる現状です(南シナ海における中国の東南アジア諸国に対する傍若無人ぶりも説明し得る・・・)。

また、核兵器国の同盟諸国に提供される‘核の傘’も、核のボタンが核保有国のトップが握っていますので、必ずしも開くとは限らず、むしろ、非核兵器国の同盟国が核攻撃を受けたとしても、自国が核の報復を受けるリスクを負ってまで核兵器で反撃しようとはしないことでしょう。また、‘核の傘’の提供は、自国の安全保障の核兵器国への全面的な依存を意味しますので、主権平等の原則も形骸化してしまうのです。軍事のみならず、政治的属国化をも招くのですから、核の傘の提供を受ける非核兵器国は、‘仮想敵国’のみならず‘同盟国の脅威’にもさらされているのです(核の寡占体制は、世界権力の人類支配構想の一環なのでは・・・)。

以上の現状分析からしますと、目下、過去と未来を見据えて各国が進めるべきは、当面における核兵器国に対する抑止力としての核武装、並びに、防衛型指向性エネルギー兵器を用いた安全保障体制の同時並行的な追求のように思えます。後者が完成すれば、無用の長物と化した前者の核兵器を廃絶しても問題はありません。この観点からしますと、アメリカも同盟国の政治的独立を望まないことでしょうから、日本国政府も、同国との間の共同プロジェクトである極超音速ミサイル迎撃システムの開発に資源やコストを費やすよりも、地上配備型の防衛兵器として独自に指向性エネルギー兵器並びにより性能に優れた監視衛星の開発に取り組むべきかもしれません。また、同時に、国際社会に対しては、指向性エネルギー兵器を防衛目的に限定するための条約の制定について賛同国を募ったり、同条約の草案を作成するなど、積極的な働きかけを要しましょう。過渡期を賢く乗り切ることができれば、人類には、世界権力が描くものとは違う未来が訪れるのではないかと思うのです。

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指向性エネルギー兵器の国際的な規制問題

2023年08月30日 11時50分54秒 | 国際政治
 あらゆるテクノロジーと同じく、電磁波の技術もその利用目的次第で‘善’にも‘悪’にもなり得ます。となりますと、人類が平和を希求しているとするならば、先ずもって悪用の道を塞ぐのが筋と言うことになりましょう。平和利用への限定化に反対する国や勢力があるとすれば、それは、自らを凶悪な‘犯罪国家’と認めたに等しくなります。それでは、同テクノロジーについては、どのような規制が必要なのでしょうか。

 指向性エネルギー兵器を平和目的に限定するための方法の一つは、同技術の開発や保有等を全面的に禁じるのではなく、防衛兵器として同兵器の配備場所を地表上の自国領域内に限定することです。電磁波の距離に反比例して弱まる性質(マクスウェル方程式)並びに電力の大量供給や強力な電磁波を造り出す装置の必要性からすれば、同兵器は防衛兵器に適しており、自国内での防衛目的の配備であれば、他国や如何なる勢力もクレームの付けようがありません。また、防衛目的である限り、核拡散防止条約のように同技術の拡散を禁止する必要もないのです。

 なお、核兵器の抑止力は、相手国からの核による報復を恐れる‘恐怖による抑止力’です。同抑止力は、‘人を呪わば穴二つ’と同様に双方の刺し違いを意味します。一方、指向性エネルギー兵器の場合は、核ミサイルを発射しても物理的に破壊される、もしくは、‘使用しても無駄’という、迎撃を予測しての諦めの境地に至らしめた結果としての抑止力です。後者では、核ミサイルの使用そのものを一方的に封じますので、核攻撃を受けることなく攻撃側のみを制御するより平和的、かつ、恐怖心なき抑止力なのです。

 さて、指向性エネルギー兵器の自国領域内配備は、同時に同兵器を宇宙空間に打ち上げた人工衛星に搭載することを禁じることを意味します。現行の「宇宙条約」では、禁止の対象は大量破壊兵器であり、同条約が成立した1967年当時にあっては核兵器を想定していたのでしょう。しかしながら、今日、指向性エネルギー兵器は大量破壊兵器となり得るポテンシャリティーを有しています。否、絶対的な優位性を得るために、既に攻撃兵器として密かに実用化を急いでいる国や勢力も存在しているかもしれません。

 そこで、指向性エネルギー兵器の攻撃兵器としての利用を阻止するためには、宇宙空間における人工衛星の利用目的についても規制を設ける必要がありましょう。人工衛星については、今日、民間事業者もビジネスを目的とした衛星打ち上げプロジェクトに積極的に乗り出しており、官民共に宇宙利用を推進しています。しかも、世界経済フォーラムを擁する世界権力も宇宙開発・利用には熱心ですので、民間企業といえども、宇宙空間の利用によって人類に害を及ぼすリスクに警戒すべきかもしれません。こうした現状に鑑みますと、官民問わずに人工衛星の打ち上げに際しても、防衛のための監視・偵察であれ、商用であれ、利用目的を平和目的に限定すべきと言えましょう。

 もっとも、情報の自主的な公開を求めたとしても、人工衛星を打ち上げる側が必ずしも正直かつ誠実とは限りません。また、自己申告では不十分ですので、衛星の打ち上げ目的を外部から確認し得る仕組みも準備しなければならなくなります。つまり、打ち上げに先立って、打ち上げ側に対しては情報の開示を法的に義務づけると共に、人工衛星の構造を検査し得る中立・公平な査察制度を設ける必要がありましょう。自他両面における平和目的の立証こそ、衛星打ち上げの条件となりましょう。

 加えて、中国やロシアがこれまで実施してきた地上からの人工衛星の破壊行為も、一般国際法において禁止すべき行為の一つです。極超音速ミサイルであっても地上配備の精密レーダーによって把握できればよいのですが、監視衛星と指向性エネルギー兵器の連動的な運用が各国の安全を保障するとなりますと、監視衛星の一方的な破壊は、同時に平和の破壊を意味するからです。

 以上に述べてきました指向性エネルギー兵器を平和目的に限定する仕組みには、克服すべき問題や障壁が多々あり、その実現は容易ではないかもしれません。しかしながら、巨万の利益と支配欲のために戦争を起こそうとする勢力が存在している以上、人類は、賢く偽善や誘導を見抜き、戦争を未然に防ぐ道を見出すべきです。攻撃兵器として危険視されている指向性エネルギー兵器も利用方法によっては‘核なき世界’を越えて‘戦争なき世界’をもたらすかもしれないのですから(つづく)。

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指向性エネルギー兵器の平和利用の妨害要因

2023年08月29日 10時08分42秒 | 国際政治
 指向性エネルギー兵器が備えている光子と並ぶ高速性、並びに、近距離ほど威力を発揮し得る性質は、同兵器が防衛兵器に適していることを示しています。仮に、ミサイル発射を監視する人工衛星と同兵器を組み合わせたミサイル迎撃システムが完成すれば、核の脅威を取り除くのみならず、人類に多大な犠牲を強いてきた戦争の歴史にようやく幕が下りるかもしれません。そして、その行方は、指向性エネルギー兵器の利用方法、即ち、平和目的に限定して利用し得るかどうか、にかかっていると言えましょう。当然に、同兵器は、逆の方向に悪用されるリスクが認められるからです。

 それでは、指向性エネルギー兵器の平和利用には、どのような妨害要因があるのでしょうか。中国のレーザ-兵器開発において顕著に見られるように、先ずもって、同技術は攻撃兵器として研究されていることでしょう。近年、日本国内の研究機関等で進められてきたレーザー技術が、学術交流の名の下で中国に流出するリスクが指摘されてきました。軍事技術への転用リスクがあったからです。SFの世界では、しばしば宇宙空間や空中、あるいは、市街戦でレーザー兵器を打ち合うシーンが登場しますが、近未来では、戦闘機や戦車への搭載のみならず、ドローンといった無人機やロボットに搭載した指向性エネルギー兵器が登場するかもしれません。さらには、敵国の占領に際しても、相手国国民の抵抗を排除するために特殊な電磁波を広範囲に発信し、思考停止や無気力化による精神的な武装解除のみならず、身体的にも筋肉を弛緩させたり、麻痺させるといった使い方もありましょう。指向性エネルギー兵器は、悪魔にも奉仕し得るのです。

 また、人工衛星にしても、必ずしも平和利用に限定されるとも限りません。例えば、今般のマウイ島火災で囁かれたように、電線網などに局所的に強力な電磁波を照射すれば、大規模な破壊や火災を発生させる、あるいは、電磁パルス弾のような効果を備えたテクノロジーが開発されるかもしれません。また、大統領や首相官邸や軍事司令部など、直接に標的として定めた政治・軍事的に重要な建物や人物を宇宙空間からピンポイントで攻撃することもあり得ます。仮にこうした兵器が出現すれば、核兵器以上の脅威となりかねず、人類は新たなる脅威に直面することとなりましょう。しかも、最初に同兵器を開発した国や勢力が同技術を独占した場合、現下の核の抑止力も失われますので、一方的な‘悪魔の支配’になりかねないのです。

 加えて、たとえ宇宙空間において監視・偵察用の人工衛星を各国が運用したとしても、当該国に対する軍事行動を意図している国によって破壊されてしまう可能性もあります。実際に、中国もロシアも地上からの人工衛星破壊実験を繰り返すのみならず、キラー衛星とも呼ばれる攻撃型の人工衛星の開発に着手しています。

 同技術については、人工衛星の破壊は大量の宇宙ゴミ(デブリ)を発生させるため、今年2023年4月に日本国の長野で開催されたG7の外相会合では、自主的禁止を宣言しています。しかしながら、アメリカを含む自由主義国が同技術の開発を放棄するとなりますと、当然に、衛星破壊技術は中ロに独占されることとなります。この結果、有事に際して日米等の監視・偵察衛星が全て破壊されてしまうのみならず、仮に上述した平和利用のための防衛システムが実現したとしても(もちろん、日米で共同開発が予定されている「衛星コンステレーション」による極超音速ミサイル迎撃システムも・・・)、中ロによる他国の衛星破壊によって機能不全となる事態も当然に予測されるのです。

 「宇宙条約」等は存在し、G7諸国のような自主規制の動きはあるものの、指向性エネルギー兵器並びに宇宙空間の利用については、現状では‘無法地帯’の如きです。核兵器については声高に核廃絶が叫ばれ、NPT体制が成立すると共に、核兵器禁止条約を後押ししたICANのような国際組織も活動してきたのですが、核をも凌駕し得る近未来の軍事的脅威については、不可解なことに目立った動きは見られないのです(つづく)。

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指向性エネルギー兵器を平和実現に活用する方法

2023年08月28日 11時44分47秒 | 国際政治
 指向性エネルギー兵器の最大の特徴は、破壊力がミサイルのような固体の物質ではなく、電磁波というエネルギーである点にあります。言い換えますと、たとえ音速を越える極超音速ミサイルであっても、電磁波の速さは真空中の光速と等しいため、速度において指向性エネルギー兵器に到底及ばないのです。この電磁波の物理的な性質が、物質である核兵器を無力化する理由の一つでもあります。先に相手を破壊できれば自らは無傷となりますので、兵器間の優劣比較にあって、速度が決定要因となるケースは少なくないのです。

因みに、光速は2.9979 × 10^8 m/s であり、秒速約30万kmですが、音速は大気圧下、かつ、温度15℃において秒速約340mなそうです。その差、凡そ88万倍というのですから驚きです。しかも、核兵器を運搬するミサイルは、飛行速度を挙げようとすればするほどに小型化する必要がありますので、電磁波の高出力に必要とされる電力量からしますと、これをピンポイントで迎撃する指向性エネルギー兵器にとりましては好都合です。

 その一方で、指向性エネルギーには弱点もあります。それは、電磁波の発射地点からの距離に比例して破壊力が減少してしまう点です。破壊の対象が至近距離にある場合には、高出力のエネルギー波によって対象物は難なく破壊できますが、対象物が遠方にある場合には、相当に強力な電磁波を発生させない限り、破壊力を発揮することは難しいのです。つまり、指向性エネルギー兵器は、破壊力の規模並びにその及ぶ範囲においては、物質の核分裂を利用する核兵器に劣ると言えましょう。

 以上に指摘した指向性エネルギー兵器の長所と短所は、同テクノロジーは、防衛兵器に適していることを示唆しています。遠方から飛来してくるあらゆる固体のミサイルを近場、すなわち、自国の周辺や領域内で破壊する能力に長けているからです。日米共同開発で予定されている極超音速ミサイル迎撃システムでは、衛星に搭載された指向性エネルギー兵器による遠方でのミサイル破壊を想定しているようですが、兵器として衛星を用いる必要性は必ずしも高くはないかもしれません(人工衛星は地球を周回してるので、広域的な「衛星コンステレーション」を構築したとしても、即座にミサイルを破壊できるかどうかは分からない・・・)。ウサギとカメほどの差があって、如何なるミサイルでも飛行速度において指向性エネルギー兵器には絶対的に叶わないならば、地上配備型やイージス艦、あるいは、潜水艦搭載型であっても、領域内に到達した時点で打ち落としても十分に間に合うはずであるからです。

 ただし、同防衛兵器は、自国を標的としたミサイルの発射を確実に探知し、その飛行経路を追跡する技術が必要となります。ここで期待されるのが、監視を目的とした精密なレーダーを搭載した人工衛星なのでしょう。同人工衛星がキャッチしたミサイル発射を示すデータは即座に地上に配置された指向性エネルギー兵器に送信され、公海上空、もしくは、領域内上空に到達した時点で自動的に迎撃されることとなります。人工衛星のテクノロジーは、この側面において活かされるのであり(もっとも、近距離破壊であれば、高精度の地上レーダーでも対応できるかもしれない・・・)、監視衛星と地上配置型の指向性エネルギー兵器の組み合わせた防衛システムこそ、全ての諸国の安全を確かにし、人類の忌まわしい戦争の歴史に終止符を打つ可能性を秘めているとも言えましょう。

 しかも、仮に、同システムが完成すれば、自らの領域を越えて敵国のミサイル基地を事前に攻撃する必要性も消滅します。また、同兵器システムは、実際にミサイルが発射された後に作動しますので、動かぬ物的証拠をもって正当防衛として迎撃することもできます。現状では、ミサイル発射の兆候を正確に掴むことは困難とされておりますし、また、‘強い疑い’の段階で敵基地を予防的に攻撃しますと、先制攻撃を仕掛けたと見なされるリスクもあるからです。しかしながら、同システムが平和に貢献するためには、国際社会は、幾つかの問題に取り組む必要がありましょう(つづく)。

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非核兵器国による指向性エネルギー兵器の開発

2023年08月25日 12時42分11秒 | 国際政治
 現在、指向性エネルギー兵器の開発は、世界軍事力ランキングにあって上位を占めるような軍事大国を中心に進められています。日本国もその一国であり、先日、日米両国政府が共同プロジェクトとして開発に合意した極超音速ミサイル迎撃システムでも、同技術の導入が予測されます。中国やロシア等によるミサイル発射を瞬時に把握するためには、これらの諸国の領空を越える宇宙空間からの監視が必要ですので、衛星ネットワークと指向性エネルギー兵器を組み合わせは、グローバルな視点からは極めて合理的な発想と言えましょう。

 計画されている「衛星コンステレーション」は、地球全体のカバーを目的としているのですが、一国の防衛並びに安全保障の観点からしますと、必ずしもこれほどに大規模なシステムを要しないのかもしれません。監視対象が地球全体でなければ、単体の衛星、あるいは、監視対象を限定した衛星であっても、ミサイルの迎撃に活用できるかもしれないからです。地球規模の迎撃システムの開発は、技術力や資金力に乏しい中小国にとりましては手の届かないプロジェクトなのですが、衛星コンステレーションタイプではない、よりシンプルなシステムであれば、そのハードルの高さは格段に低くなりましょう。

 それでは、仮に、同システムが特定の軍事大国や勢力に独占されず、中小諸国も宇宙空間を利用したミサイル迎撃システムの開発に成功しますと、国際社会にあって、どのような変化が生じるのでしょうか。先ずもって指摘し得るのは、指向性エネルギー兵器については、NPTのような一部の諸国にのみ、その保有を認めるような条約は存在していないことです。しかも、迎撃の主たる対象は物体であるミサイルですので、1983年の「特定通常兵器使用禁止制限条約」第4議定書によって禁止されているレーザー兵器にも当たりません(人体の損傷が対象・・・)。攻撃目的である場合には、大量破壊兵器の宇宙空間への配備を禁じた「宇宙条約」に違反する可能性が高いのですが、少なくとも防衛が目的であれば、何れの国も、国際法に抵触することなく防衛兵器として同兵器を開発・保有することができるのです。この点は、核兵器とは著しく異なっており、常に核兵器国からの核攻撃あるいは核による威嚇に曝されてきた中小の非核兵器国に採りましては、NPTという‘不条理な縛り’から解放されることを意味します。

 また、人工衛星の打ち上げについても、法的な枠組みは、1976年9月に発行した「宇宙物体登録条約」が存在するのみです。このため、米中ロのみならず、日本国も、最近では今年2023年1月に、情報収集衛星として「レーダー7号機」の打ち上げに成功し(「レーダー5号機」の後継)、現在、「設計寿命を過ぎたものを含めレーダー5基、光学3基の計8基と、観測データを地上受信局に転送する「データ中継衛星」の1基」が運用されているそうです(科学技術振興機構ホームページより)。偵察衛星の打ち上げ自体は違法行為ではありませんので、日本国に限らず、何れに国であっても国際法上の問題は生じません。また、米中ロとも自らが行なってきた行為ですので、批判のしようもないのです。

 以上のことから、仮に中小諸国が防衛手段として宇宙空間を利用した迎撃システムを保有するに至りますと、核兵器は無用の長物になると共に、核兵器国との間の軍事同盟に頼らずとも全ての諸国が自国を単独で自衛することもできるようになります。現状のNPT体制よりも、中小の非核兵器国の安全は格段に高まることでしょう。核兵器の場合には、その比類なき破壊力故に技術拡散に法的な制限が課せられたのですが、防衛、すなわち、平和を実現する手段としての迎撃システムの技術であるならば、逆に、その技術的な拡散は推進されるべきこととなるのです。

しかしながら、全ての諸国による迎撃システムの保有がもたらす‘迎撃システムによる平和は、自動的、かつ、無条件に訪れるわけではありません。指向性エネルギー兵器であれ、人工衛星であれ、悪用を防止し、攻撃用兵器として転用されない仕組みを要するからです(つづく)。

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指向性エネルギー兵器は‘大量破壊兵器’なのか?

2023年08月24日 10時49分50秒 | 国際政治
 1967年10月10日に成立した「宇宙条約」では、その第4条において大量破壊兵器の打ち上げが禁止されています。同条約については、アメリカのみならず、中国もロシアも締約国です。それでは、指向性エネルギー兵器は、同条約が禁じる‘大量破壊兵器’に当たるのでしょうか。

第4条の条文では、「条約の当事国、核兵器及び他の種類の大量破壊兵器を運ぶ物体を地球を回る軌道に乗せないこと、これらの兵器を天体に設置しないこと並びに他のいかなる方法によってもこれらの兵器を宇宙空間に配置しないことを約する。・・・」とあります。仮に日米両国が共同開発に乗り出した極超音速ミサイル迎撃システムのように、宇宙空間に打ち上げられた衛星に搭載された指向性エネルギー兵器が純粋に防衛目的であれば、同兵器は、宇宙条約が禁じる大量破壊兵器には該当しないことでしょう。高出力の電磁波やビームによる破壊の対象は、小型化されたミサイルですし、同兵器の使用が夥しい数の人々の命を奪い、都市を破壊するわけでもないからです。むしろ、攻撃目的の大量破壊兵器を破壊する防衛兵器ですので、軍事分野での利用でありながら、宇宙空間の平和利用の際たる事例となるかもしれません。

しかしながら、その一方で、宇宙空間に配置された指向性エネルギー兵器は、攻撃兵器として使用される可能性がないわけではありません。極超音速ミサイル防衛システムは、レーダーに捕獲が困難な超低空ミサイルをも迎撃対象としていることでしょうから、同システムは、大気圏を飛行するあらゆる飛翔体を破壊する能力を秘めていることでしょう。戦闘機や爆撃機のみならず、ドローンといった無人攻撃機も撃墜し得るかもしれません。実際に、宇宙配備型ではないものの、米空軍研究所(AFRL)は、群れを成して飛来するドローンによるスウォーム攻撃を撃退する「THOR(Tactical High-Power Operational Responder)」という技術開発に既に成功しています。指向性エネルギー兵器については‘陰謀論’と見なされがちですが、現実には、実用化の段階にあると言えましょう。

そして、指向性エネルギー兵器のポテンシャリティーは、同兵器が大量破壊兵器となり得る可能性を強く示唆しています。様々な性質や効果の異なる電磁波、素粒子ビーム、マイクロ波などを使い分けますと、広範囲かつ人体に対して害を与える兵器となり得るからです。即死とならないまでも、遅効的な効果により死に至らしめるかもしれませんし、致死的な病気を誘発するかもしれません。また、マウイ島火災に際して疑われたように、高出力のレーザー等を標的とする箇所に照射することで、電子機器の無力化のみならず、大規模な都市火災や崩壊を引き起こす技術も開発されているかもしれません。なお、大量破壊兵器とは認定されないまでも、指向性エネルギー兵器は、1983年12月に発行した「特定通常兵器使用禁止制限条約」等に違反するのではないかとする指摘があります(同条約では、レーザー兵器については第4議定書において扱っており、回復不可能な失明をもたらすレーザー兵器を全面的に禁止している・・・)。

以上に述べたように、指向性エネルギー兵器は、攻撃兵器として使用される場合、大量破壊兵器、あるいは、非人道的兵器に転じる可能性があります。仮に攻撃用の衛星が打ち上げられた場合、同行為は、宇宙条約違反となりましょう。しかしながら、国際社会には、IAEAといった組織や核査察のような査察システムは存在しませんので、外部から各国政府、並びに、民間企業による衛星打ち上げの真の目的を知ることは困難です。言い換えますと、衛星兵器については、‘野放し’の状態にあるのです。

人工衛星の打ち上げを口実として北朝鮮はミサイル発射実験を繰り返していますが、指向性エネルギー兵器を搭載した衛星兵器という新たな兵器が出現しつつある今日、北朝鮮の実験は、大陸弾道弾の試射ではなく、同タイプの衛星兵器の打ち上げである可能性も否定はできなくなってきます。ここに、‘北朝鮮による核開発問題’がリフレインされるのであり、中小国でも同兵器を開発・保有することができるのであれば、それは同時に、国際社会全体における指向性エネルギー兵器をめぐる破壊力と抑止力との問題を改めて問うているように思えるのです。

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指向性エネルギー兵器の登場によるゲーム・チェンジ

2023年08月23日 12時39分47秒 | 国際政治
 既に実用化段階にあるとされる指向性エネルギー兵器の登場は、国際社会における防衛や安全保障のあり方を根底から揺るがす可能性を秘めています。その理由は、あらゆるミサイルを迎撃する技術として、戦後、人類を滅亡させかねない大量破壊兵器とされてきた核兵器をも無力化してしまうからです。ミサイル攻撃という攻撃方法そのものをも過去のものとして葬り去るのですから、軍事分野に与えるその衝撃は計り知れません。しかしながら、‘核なき世界’への期待は、いささか早計に過ぎるように思えます。指向性エネルギー兵器については、決して楽観視することができない幾つかの負の側面を挙げることができるからです。先ずもって指摘され得るのは、核の抑止力をも無力化する点です。

 今般、日米間で合意された極超音速ミサイルの迎撃システムは、同ミサイルを先行して開発してきた中国やロシアに対する対抗措置であり、防衛手段として構想されています。同構想においては、まさしく指向性エネルギー兵器を、核兵器を事実上、強制的に廃絶させてしまう手段として理解されており、このプロジェクトが成功すれば、中国もロシア等も、日米並びに同技術を共有すると想定されるNATO諸国に対して、手も足も出なくなりましょう。

 このケースでは、共同開発国となる日本国にとりましては、アメリカの‘核の傘’に伴う不確実性が解消され、遥かに自国の防衛に貢献します。衛星に搭載されたセンサーが瞬時に敵国による核ミサイルの発射を感知し、強力な電磁波あるいはレーザー等によって自動的にこれを破壊するからです。言い換えますと、そこには核のボタンに指をかけて逡巡するアメリカ大統領の姿はなく、大量のデータを一瞬で解析するAI?がミサイル破壊の決断者なのです。もはや日本国には、‘核の傘が開かない’事態を心配する必要はありません。かくして同盟国にして核兵器国であるアメリカへの依存度は著しく低下しますので、日本国にとりましては、NPT体制下における不利な立場を解消させ、事実上失われてきた政治的独立性をも回復できますので、一石二鳥の技術と言えましょう。

 このように、日米共同開発による宇宙空間ミサイル迎撃シルテムは、中ロ、並びに、北朝鮮等の攻撃性の高い‘危険国家’の核を一方的に無力化するため、核の抑止力の喪失を補っても余りある恩恵が期待されます。同ケースでは、少なくともアメリカの同盟国は核の抑止力の喪失は恐れる必要はありません。より強力な’封じ手’を手にしたからです。しかしながら、その一方で、中国やロシアの軍事分野における技術開発力を侮ることはできません。これらの諸国は、持てる資源や人材をつぎ込んで、同様のシステムの開発に心血を注ぐことでしょう。しかも、その目標は、アメリカ陣営に先んじて同システムの開発に成功することであるはずです。一歩でも先んじれば、絶対的な優位性を得ることができるからです。

 仮に、中ロ等の諸国が先に同システムを完成させ、宇宙空間に配備した場合、これらの諸国は、先ずもって後発組の同システム構築を妨害するのみならず、‘仮想敵国’、即ち、アメリカ陣営諸国が備えてきた核の抑止力を無力化できます。自らが同システムを独占している間は、何れの国からも‘抑止’されることなく、極超音速ミサイルであれ、何であれ、自由自在に他国、並びに、個人をもピンポイントで攻撃し得るのです。もちろん、世界権力が背後から全ての軍事大国を操って技術開発を進め、システムの開発に成功した暁にはそれらを独占するというディストピア的な未来も予測されましょう。もっとも、技術開発の遅れを自覚してか、これまで国連等を枠組みとして「宇宙空間における軍備競争の防止(PAROS)決議」や「宇宙に最初に兵器を配置しない(NFP)決議」を積極的に推進してきたのは、ロシアや中国でした(なお、近年、後者の決議案提出はロシア一国のみとなり、中国が技術的にキャッチアップしたことの現れであるかもしれない・・・)。

 指向性エネルギー兵器においては、核兵器よりも相互抑止による均衡状態=平和を保つことは困難となりそうです。核兵器であれば、北朝鮮といった経済力並びに技術力において低レベルにあっても、開発・保有することができます。言い換えますと、核が最強となる時代であれば、現核兵器国のみならず中小諸国を含む全ての非核兵器国も核武装し、全体として相互抑止力を働かせる道もあり得ます。しかしながら、指向性エネルギー兵器については、映画「スターウォーズ」にも登場するSFの世界のファンタジーと見なされてきたように、現状にあっては核兵器よりもコスト並びに技術レベルにおいて開発・保有のハードルは相当に高いものと推測されるのです。

 使用に際して膨大な電力を要するともなればなおさらなのですが、このことは、核が無力化する以上、指向性エネルギー兵器については、国際社会において、様々な観点からの議論を要することを意味しています。核が無力化されても、指向性エネルギー兵器の特定の国家、あるいは、勢力による独占は、人類にとりましてより危険な状態となります。その一方で、全ての諸国に同技術が拡散した場合に何が起きるのか、という問題についてもプラス・マイナスの両面から考えてみる必要がありましょう。宇宙空間については1967年10月10日に発効した「宇宙条約」が存在し、その第4条にあって大量破壊兵器の打ち上げが禁止されていのですが、近年の宇宙開発競争を見る限り、同条約も形骸化しているとしか言い様がないからです(つづく)。

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宇宙空間ミサイル迎撃システムによる核の無力化問題

2023年08月22日 11時53分53秒 | 国際政治
 先日、訪米した日本国の岸田首相とアメリカのバイデン大統領との間で、日米首脳会談が開かれました。両国首脳会談は、水面下で進められてきた各種分野における日米協力のビジュアル化に過ぎず、周到な根回しや調整によって合意内容は事前に決まっていたようです。同会談の合意事項の一つが、中国やロシアが開発において先行しているとされる極超音速ミサイルを迎撃する宇宙空間システムの共同開発です。10年以内、即ち、2033年までの完成を目指しているのですが、同システムの出現によって、人類は重大な局面を迎えるのではないかと思うのです。

先ずもって指摘されるのは、同システムによる核兵器の無力化です。報道に依りますと、同共同開発プロジェクトが狙いを定めるターゲットは、音速よりも高速で飛来する極超音速ミサイルです。とは申しますものの、同ミサイルよりも高速で飛ぶ固体の兵器は存在しませんので、極超音速ミサイルを頂点とする全てのミサイルを迎撃し得るシステムとなることは言うまでもありません。何れの種類のミサイルであれ、また、如何なる場所や兵器から発射されたものであっても、多数の人工衛星をネットワーク上に接続させた「衛星コンステレーション」が瞬時に感知し、同衛星に搭載された指向性エネルギー兵器によって確実に破壊してしまうのです。このことは、全ての核保有国が、同兵器を保有する意味を完全に失うことを意味します。発射した核ミサイルは悉く破壊されてしまうのであれば、核兵器の使用は無駄な行為以外の何ものでもなくなるからです。かつてレーガン大統領がSDI構想を打ち上げた際に宣言したように、核兵器は無力化される日がようやく訪れるのです。

核ミサイルを100%の確立で打ち落とす技術の登場は、核拡散防止条約や核兵器禁止条約といった法的な‘縛り’よりも、遥かに効果的です。何故ならば、前者の核拡散防止条約では一部の諸国が核兵器を合法的に保有し続けることができますし、後者の核兵器禁止条約では、そもそも核保有国が加盟していないのですから、全くもって宣言的な効果しか期待できないからです。不平等、かつ、非現実的な条約を制定し、‘核なき世界’を追求する偽善的なポーズをもって‘自己満足’、すなわち、実質的には不条理な‘核ある世界’を固定化するよりも、先端的なテクノロジーをもって物理的に核攻撃を封じてしまう方が、余程、‘核なき世界’への近道と言えましょう。

以上に述べたように、宇宙空間に構築するミサイル迎撃システムには、核攻撃という手段を消滅させてしまいますので、核廃絶を目指す平和主義者の人々も賛意を示すことでしょう。念願が叶って、ようやく人類は、核の脅威から完全に解放されるからです。しかしながら、事はそう単純ではないように思えます。しばし冷静になって考えてみますと、宇宙空間を利用したミサイル迎撃システムの登場は、手放しには歓迎できそうありません。

何故ならば、力の抑止力の側面からしますと、核兵器の無力化は、核の抑止力をも消滅させます。指向性エネルギー兵器における抑止力の問題は、核兵器よりも深刻となるかもしれません。そして、同システム、あるいは、類似のシステムは、中国やロシア等の国家によっても開発され得ることです。しかも、このことは、防衛目的とは限らず、指向性エネルギー兵器が攻撃兵器やテロリズムの道具として使用される可能性を強く示唆します。つまり、指向性エネルギー兵器は、宇宙空間の利用によって核兵器に代る新たな人類の脅威となるリスクも認められるのです。加えて、民間企業も人工衛星の打ち上げる今日、同システムの保有者は、必ずしも‘国家’とは限りません。核の時代の終焉は、超越した大量破壊兵器、あるいは、人類攻撃兵器としての指向性エネルギーの時代の幕開けを告げるかもしれないのです(つづく)。

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マウイ島火災の真実とは?

2023年08月21日 11時55分31秒 | 国際政治
 2023年8月8日に発生したマウイ島火災については、指向性エネルギー兵器による攻撃説など、様々な憶測が飛び交うこととなりました。目下、最も疑わしい説として拡散しているのは、スマートシティ建設、あるいは、富裕層向けリゾート再開発のための住民立ち退きを目的とした政府筋並びに再開発事業者による放火説です。既に不動産業者が被災者からの土地買収に乗り出しているからです。その一方で、当初話題となった指向性エネルギー兵器説については、流布された画像がフェイクであることが判明したことから、こちらは‘陰謀説’として‘却下’されることともなったのですが、可能性0%として同説を完全否定することはできるのでしょうか。

 火災発生当初にアップされた指向性エネルギー兵器の画像がフェイクであることは事実なのでしょう。すなわち、指向性エネルギー兵器を実際に使用するには大量の電力を要するのですが、今日のテクノロジーは、一つの街を瞬時に焼き尽くすほどの電力を、宇宙空間を旋回している衛星(指向性エネルギー兵器)に供給できるほどには発達していないようです。日米で共同開発が合意されたとする「衛星コンステレーション」の構築による極超音速ミサイル迎撃システムも、開発目標は10年以内とされていることも、この点を裏付けていると言えるでしょう。電磁レールガンであれ、高出力レーザー兵器であれ、あるいは、高出力マイクロ波であれ、米国、中国、ロシア等が開発した兵器は何れも地上配備か艦隊搭載型であり、宇宙衛星からの発射できる段階には至っていないようなのです。

 以上の諸点から、指向性エネルギー兵器説はしぼんでしまったのですが、その一方で、マウイ島火災には、通常の山火事とは異なる特徴が見受けられます。それは、(1)地域的限定性、(2)驚異的な延焼速度、(3)高温による燃焼を挙げることができます。今のところ、これらの疑問点に対する科学的、かつ、合理的な説明はありませんので、別の方法による指向性エネルギー説も、あながち全否定はできないように思えます。仮にあり得るとすれば、推理のキーワードは、‘電線網’です。

 第一に、マウイ島火災は、強風によって送電線が切れたことにより、発火したと説明されています。とは申しますものの、送電線が切断された原因は、必ずしも強風とは限りません。しかも、NASAが公表した画像を見ますと、出火場所はラハイナ地域のみではなく、二カ所です(三か所説もある・・・)。送電線が複数の箇所で同時に切れる確率はそれ程高いようには思えず、人為性が強く疑われます。

 第二に、被災者の証言を挙げることができます。ある被災者は、‘およそ全ての電柱がなぎ倒されていた’と語っています。また、メディアの取材によれば、火元とされる電線は垂れ下がり、地面は黒く焦げていたそうです。そして、この現場を撮影した住民は、「電話線と電線が切れて、ズズズという音と火柱が出たんだ」と述べているのです。

 これらの二つのみではあまりにも情報量や判断材料が乏しいと言わざるを得ないのですが、幾つかの不審点を考え合わせますと、一つの可能性が浮かび上がって来るように思えます。それは、ラハイナの街に張り巡らされている電線の一カ所に、極めて強い電流が流される、あるいは、電磁波やレーザーが照射され、その衝撃が極めて速い速度で電線網を伝ってラハイナ全域に高熱と火災をもたらしたのではないか、というものです。言い換えますと、電線網が張り巡らされていたからこそ、多くの住民が居住するラハイナ地域全体が一気に炎に包まれたのかもしれません。

 もちろん、敢えて指向性エネルギー兵器を使用しなくとも、こうした惨事を引き起こす破壊装置を造ることができないわけではありません。本稿も多々ある推理の一つに過ぎず、指向性エネルギー兵器の使用が確定されたわけではないものの、中国の地球観測衛星がハワイ島に対してレーザー照射を行なっていたのは事実です。おそらく、人工衛星からのピンポイント式のレーザー照射技術は既に確立しているのでしょう

 軍事の専門家ではありませんので、本推理は的外れであるかもしれないのですが、軍事大国、あるいは、世界権力によって宇宙空間の軍事利用が推進さている今日、マウイ島火災については、指向性エネルギー兵器説も捨てきれないように思えるのです。

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ハワイの山火事と指向性エネルギー兵器問題

2023年08月18日 09時28分48秒 | 国際政治
 今月の8月8日に発生したとされるハワイのマウイ島の山火事については、送電線の落下が原因とされています。このため、国立気象局による森林火災発生の警告を無視したとして、電力会社ハワイ・エレクトリックを相手どった集団訴訟も起こされることとなったのですが、同山火事の原因については所謂陰謀説が囁かれることとなりました。

 ハワイの山火事の原因に関する陰謀説とは、何者かによって既に開発されていた指向性エネルギー兵器が使用されたのではないか、というものです。確かに、同山火事には、不審な点がないわけではありません。

 第一に、発生当日にNASAの地球観測衛星ランドサット8号に撮影された映像を見ますと、主たる火災地域は、マウイ島の中心地であり、歴史的景観を残すハワイ王朝の首都でもあったラハイナ一帯であり、山火事と言うよりも都市火災に見えます。周辺の森林地帯は燃えておらず、ラハイナ以外で激しい火災が確認されるのは、キヘイ北東部の一カ所のみです。森林火災(wildfire)という表現はイメージ操作かもしれず、ラハイナ火災と言った方が適切であるかもしれません。「爆弾が落ちたみたい」という住民の証言もあり、ラハイナの街は、恰も爆撃を受けた焼け野原の如くとなりました。

 第二の不審点は、延焼の早さです。NASAの説明に依りますと、火の手はラハイナ一帯に瞬く間に広まったそうです(時速100キロメートルとも・・・)。主たる原因としては、ハリケーンの影響による強い風と乾燥した空気が挙げられているものの、リゾート地としては異常なまでの延焼速度です。多くの人々が逃げ遅れたとされており、火の周りの早さも、陰謀が疑われた理由と言えましょう。当時の風速も、‘何かにつかまっていなければ経っていられない’程の強風とされる25メートル(時速90キロメートル)とされていますが、避難する人々の様子を映した動画や画像を見る限り、それ程の強い風は吹いていなかったようにも見えます。

 また、第三の疑わしい点として、火力の強さを挙げることができましょう。行方不明者の捜索が難航している事に加え、発見された犠牲者の方々にあっても身元の確認が困難を極めているそうです。マウイ警察のジョン・ペレティエ署長は、12日の時点で街全体の3%しか捜索できず、DNA鑑定で身元が確認できたのは2名に過ぎないと述べています。今なお同島の人口凡そ1万3千人のうち1000人以上の住民の行方がわからず、凄まじい火力と高温によって多くの人々が犠牲となったことを示唆しています。仮に、行方不明とされる方々が姿を留めていないとすれば、その温度は、1200度を超えることとなりましょう(火葬炉の温度は800から1200度という・・・)。

 このように幾つかの不可解な点が見られるのですが、ここでもう一つ、ハワイに関する情報があります。それは、今年の1月28日に、中国の地球観測衛星がハワイ島の最高峰であるマウナケア山頂に緑色のレーザーを照射していたというものです。同衛星Daqi―1は上海航天技術研究院を中心に開発され、2022年4月に長征4Cロケット打ち上げられました。表向きはオゾンや二酸化炭素などの温暖化ガスを測定する大気環境観測衛星とされていますが、軍事目的である可能性も指摘されていました。仮に、同レーザー照射が軍事目的であるとすれば、この時、既に懸念の声が上がったように、超低空飛行ミサイルの航路の作成、あるいは、指向性エネルギー兵器のための実験であった可能性も否定はできなくなってくるのです。

 果たして、マウイ島の火災は、自然災害(wildfire)なのでしょうか?メディア等では‘山火事’と決めつけていますが、上述したように不審な点が幾つか見られます。先ずもって、中立・公平な機関による科学的調査による原因究明が要するのですが、真相を明らかにするためには、(1)自然災害なのか、人災なのか、(2)人災の場合には、人によるミスや過失なのか、意図的謀略であるのか、(3)謀略の場合、手段は指向性エネルギー兵器なのか、その他の手段を用いたのか、そして(4)謀略の場合、中国、ロシア、アメリカ、世界権力・・・のいずれであるのか、といった問題を一つ一つ解明してゆく必要がありましょう(つづく)。

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極超音速ミサイル迎撃とハワイの山火事

2023年08月17日 11時58分50秒 | 国際政治
 ここ数日、二つの記事が耳目を集めています。その一つは、安全保障の分野における日米間の協力プロジェクトとしての極超音速ミサイル迎撃システムの共同開発であり、もう一つは、ハワイ島における山火事です。一見、この二つの記事には全く関連性がないように見えます。しかしながら、両者には、あるテクノロジーを介して接点があるように思えます。

 二つの記事を結ぶ接点と推測されるのは、指向性エネルギー兵器の技術です。日米間の極超音速ミサイル迎撃システムの共同開発については、明日18日に予定されている日米首脳会談で合意されるとも報じられていますが、‘日米共同’を謳いながらも実質的にはアメリカ主導のプロジェクトのようです。アメリカ側としては、初期段階において超音速ミサイルの発射を察知できるように、多数の人工衛星をネットワークで結び、これらを一体化して運用する「衛星コンステレーション」を構想しているとされます。レーガン政権時代に計画され、米ソ冷戦の終焉を機に消滅した「スターウォーズ計画(戦略防衛構想)」が再始動した感もあるのですが、同「衛星コンステレーション」が完成すれば、地球全体をすっぽりとカバーし得る宇宙からの監視網が構築されることとになります。因みに日本国でも、第二次世界大戦時から指向性エネルギー兵器の開発に着手しており、戦後にあっても、1970年代から高出力レーザシステムの開発が進められており、‘独自技術’の提供が期待されているのかもしれません。

 そして、おそらく監視ネットワークの先には、指向性エネルギー兵器の活用、すなわち、「衛星コンステレーション」を構成する各衛星に搭載した指向性エネルギー兵器によるミサイル迎撃も視野に入れていることでしょう。同迎撃システムについては「より遠方で迎撃する手段」として説明されており、既存の地対空型の迎撃装置とは別次元の迎撃方法が想定されていることが窺えるからです。‘より遠方’で極超音速ミサイルを迎撃するには、地球を取り囲む形で宇宙空間に配置された衛星群にあって最もミサイル発射地点に近い衛星からレーザーを照射して破壊するのが、最も確実かつ効率的な方法となりましょう。

 報道に依れば、同システムは10年以内での開発が目標とされていますが、潜水艦発射のSLBM、並びに、移動式ICBMや地下ミサイル基地から発射される、極超音速ミサイルを含む如何なるミサイルでも確実に迎撃し得るシステムの開発に成功すれば、核兵器を完全に無力化しますので、少なくとも共同開発に携わった日米両国をはじめ「衛星コンステレーション」を利用し得る諸国にとりましては朗報と言えましょう(ただし、同システムの完成を恐れた中ロによる軍事行動を誘発するリスク、並びに、同様のシステムを中ロが開発する可能性も・・・)。1983年3月23日に「スターウォーズ計画」を公表したSDI演説でも、レーガン大統領は「核兵器を時代遅れにする」と述べています。

 かくして‘新しいミサイル防衛システム’には、核の脅威から人類を解放する希望の光ともなり得るのですが(もっとも、技術的なハードルが高く、昨日の記事で指摘したような核武装による相互抑止のような即時的、かつ、全世界の諸国の安全を護る効果は期待できない・・・)、その一方で、指向性エネルギー兵器は、防衛面のみならず攻撃面にも利用し得ることは疑いようもありません。そして、指向性エネルギー兵器の攻撃面に対する人々の恐怖心や警戒感が、ハワイの山火事に関する真偽不明の‘陰謀説’を生み出すこととなったのです(つづく)。
 

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核武装は‘絶対悪’なのか?-日本国の選択肢

2023年08月16日 10時58分33秒 | 日本政治
 日本国は、第二次世界大戦の末期にあって原子爆弾が投下された、唯一の被爆国として知られています。広島並びに長崎における原爆による惨状は筆舌に尽くしがたく、壮絶な被爆の経験は、日本国にあって激しい反核運動や核廃絶運動の原点ともなってきました。その多くは、‘民間人をも大量に殺戮する非人道的な兵器である原子爆弾が、二度と炸裂することがあってはならない’とする一途な願いから発しているのでしょう。かくして、原子爆弾という存在そのものが‘絶対悪’とされ、日本国の核武装の選択肢もはじめから‘存在してはならないもの’としてタブー視されてきたのです。

 しかしながら、現下のウクライナ紛争のみならず台湾有事も現実味を帯び、第三次世界大戦への拡大さえ懸念される今日、核武装を‘絶対悪’と見なす論調は、むしろ、核兵器国の軍事行動をサポートしかねないリスクがあります。これは、善意が悪に利用されるリスクとも言えましょう。このように考える主たる理由には、以下の二つがあります。

 第一の理由は、核兵器には、攻撃面における破壊力のみならず、破壊力と比例する強力な抑止力が認められる点です。核兵器の存在そのものを‘絶対悪’と見なす考え方は、前者、すなわち、破壊力という一面でしか核兵器を評価していません。平和=核兵器の廃絶という主張は、破壊力の一面性において成り立つのであって、抑止力という核兵器の裏側の一面を視点に加えますと、脆くも論理が崩壊してしまいます。平和=核の抑止力の完備という別の可能性が提起されるからです。平和が善であるならば、後者の選択肢も善と言わざるを得ないのです。なお、冷戦期に唱えられた相互確証破壊論も、その名とは裏腹に核の抑止力に立脚した理論であり、相互確証抑止論と表現した方がその本質を言い当てているかもしれません。

 第二の理由は、‘持つ者と持たざる者’との残酷なまでの非対称性です。第二次世界大戦末期にあって、連合国陣営、枢軸国陣営を問わずに原子爆弾の開発に各国が鎬を削ったように、核保有の有無は、戦争の勝敗を決する物理的な決定要因となり得ます。言い換えますと、核兵器は、それを保有する側のみが、破壊力並びに抑止力の両者を享受することができるのです(古典的な勢力均衡論も核兵器国相互間にしか働かない・・・)。

 かつては、核兵器の保有の有無による絶対的な非対称性は、開発・保有の時間差によって齎されてきました。アメリカを最初の保有国としますと、その後、イギリス、ソ連、フランス、中国、インド、イスラエル、パキスタンと続き、開発に成功した国から順次に攻撃・防御の両面における絶対的な優位性を獲得していったのです。仮に、核兵器の開発・保有に制限がない状態が続いたとすれば、やがて全世界の諸国が核兵器を保有するに至ったことでしょう。しかしながら、核兵器の破壊力のみに注目してこれを危険視する見方は、国際社会における核拡散防止条約の成立を後押しします。かくして同条約が成立した70年代以降、時間差ではなく国際条約による縛りによって、核兵器に絶対的な非対称性が固定化されてしまうのです。NPT体制にあって核保有を試みようとすれば、国際法に違反する行為としてバッシングされるのみならず、ウクライナ紛争を見る限り、有事に際しても同条約からの脱退オプションがタブー視されているのが現状なのです(おそらく、核の独占体制を維持したい世界権力の意向・・・)。

 軍事同盟国の間にも生じる保護・非保護関係を軸とする非対称性については別に論じるとしても(‘核の傘’の提供による属国化・・・)、軍事大国による核兵器の独占状態が、必ずしも平和に寄与していないことは、ロシアや中国等の行動を見れば明らかです。中国が台湾の武力併合を虎視眈々と狙い、日本国の支配にも野心を抱く今日、核武装の選択肢は、唯一の被爆国を根拠として‘絶対悪’として排除すべきなのでしょうか(恐怖心は得てして判断力を鈍らせてしまう・・・)。日本国が核を保有すれば、日中間に核の相互抑止が働きますので、懸念されている日中戦争が起きるリスクも低下することでしょう。核の抑止力によって戦争が未然に防止され、1億2千万人ともされる日本国民の命を守ることができるとすれば、次善の策として許容されるべきではないかと思うのです。

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分裂する日本国の保守層-三次元戦争の視点

2023年08月15日 12時09分03秒 | 日本政治
 昭和天皇の玉音放送をもって国民に終戦が告げられた8月15日は、日本国民にとりまして特別な日でした。毎年、厳かな空気に覆われ、誰もが神妙な心持ちでこの日を迎えてきたました。しかしながら、今年は、どこか漂う空気が違っているようにも思えます。空気を変えてしまった要因の一つは、おそらく安部元首相の暗殺事件にあったのかもしれません。何故ならば、この事件を機に、疑いの段階にあったものが、事実であることが判明してしまったからです。その疑いとは、保守政党、否、政界全体が、偽旗作戦も厭わない世界権力の下部組織なのではないかというものです。

 数年前までであれば、麻生副総裁の‘戦う覚悟’発言も、保守層全体から擁護論が湧き上がったことでしょう。しかしながら、グローバルな巨大利権集団である世界権力が、新興宗教団体をも利用しながら各国の政治家を背後から操っていたとなりますと、国民の政治に対する認識も大きく違ってきます。‘二度あることは三度ある’を逆から読めば‘三度あったことは二度あった’ともなるのですが、世界権力による露骨なまでの第三次世界大戦への誘導は、過去の二度の世界大戦もまた意図された戦争であった可能性を強く示唆しているのです。
 
 戦時にあっては、交戦状態にある双方の国が相手国を絶対悪と見なし、愛国心を鼓舞すると共に敵国の打倒をもって自らの大義の実現を主張するものです。しかしながら、現実の戦争を見ますと、正当防衛を主張し得る純粋な防衛戦争は稀であり、何れの国も自らを正当化する口実を準備しています。ロシアによる一方的な侵略と見なされているウクライナ紛争でさえ、ウクライナ側に非が全くないわけではありません。慎重に細部まで観察しますと、内戦を激化させ、平和的な解決に失敗したゼレンスキー大統領に戦争責任がないとは言えないのです。民族紛争であれ、領土問題であれ、何であれ、世界権力にとりまして、全世界に戦争の‘口実’が転がっている方が望ましいのでしょう(台湾問題もその一つ・・・)。

 加えて、いざ開戦ともなれば、時の為政者が掲げる大義によって国民は扇動され、国に命を捧げる行為が崇高な自己犠牲として奨励されます。この崇高な精神も、それが心から賞賛されるのは防衛戦争、すなわち、正当防衛に限られるのですが(少なくとも今日の価値観では・・・)、古今東西を問わず、戦争における自国民の犠牲は致し方ないことと見なされてきたのです。この犠牲に対する崇敬と甘受の精神にも、戦争を自己の目的や利益のために悪用したい者達は利用価値を見出しているのでしょう。とりわけ三次元に位置する世界権力は、何れの国民に対しても保護責任を負う立場にはなく、戦争を起こすことに成功さえすれば、上部から敵味方に関係なく全ての国の国民、つまり人類を‘虐殺’することができるのですから。戦争のみならず、革命やパンデミックも同様の構図なのかもしれません。

 過去において世界権力が世界大戦を引き起こしてきたとすれば、自国内部にあってもその協力者が存在していたことは想像に難くありません。信憑性は定かではないものの、枢軸国の指導者であったヒトラーやスターリンのみならず、連合国医陣営のルーズベルト大統領やチャーチル首相も世界権力のパペットであったとする説もあります。枢軸国側で戦った日本国にあっても、当時の戦争指導者達が真に日本国民を慮っていたのか、疑問がないわけではないのです。

 このように考えますと、今日、日本国内の保守層は、二つに分かれる可能性があるように思えます。その一つは、中国大陸や朝鮮半島といった‘外地’をも包摂している大日本帝国系の保守であり、今日のグローバリスト、すなわち世界権力を後ろ盾とする人々です。CIAやKCIAのサポートも受けていたとされる元統一教会との関係を考慮しますと、故安部首相や麻生副総裁をはじめ、自民党の政治家の大半はこの系譜に属するのでしょう(海外優先の姿勢を見る限り、岸田首相も同系譜では・・・)。もう一つの保守とは、日本国並びに日本人の命を大切に思う一般の保守層の人々です。そして、今日、前者の’保守’を偽旗ではないかと疑っているのは、後者の保守層なのです。

 前者の人々は、自らの後ろ盾である以上、世界権力が命じる第三次世界大戦へのシナリオに従うのでしょうが、第三次世界大戦を三次元戦争と見なす後者の人々にとりましては、戦争回避こそが至上命題となりましょう。戦争反対は平和主義を唱えてきた左派勢力と主張を同じくしながらも、戦争を望まない後者の保守の方がよほど日本国並びに日本国民を大事に思っているのではないかと思うのです。

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‘戦う覚悟’よりも‘戦わない覚悟’を-台湾の核保有

2023年08月14日 10時45分25秒 | 国際政治
 台湾における麻生自民党副総裁の‘戦う覚悟発言’については、‘抑止力の強化’という前置きが強調されたことで、今では、日本国内の保守層を中心にマスメディアによる政権批判誘導と見なす傾向にあります。同副総裁は、ストレートに台湾有事に際しての対中開戦を主張したわけではなく、‘日米台三国間による連携を基盤とした有事体制の強化が、中国に対する心理的な圧力となって同国の軍事行動を抑制する’と述べたに過ぎないとする解釈は成り立ちます。その一方で、抑止力を期待した一種の威嚇であれ、言語表現としては明らかに戦争を想定していますので、意図された‘挑発’と見なされる要素を含んでいることも疑い得ないことです。

 過去の歴史にあって戦争を機に巨万の富とグローバルな支配力を手中にしてきた世界権力、並びに、同勢力と麻生副総裁との間のパーソナルな人脈を考慮しますと、第三次世界大戦への誘導発言であった可能性も否定はできなくなります。そして、もう一つ、同推理を補強する指摘があるとすれば、頑なに‘他の有効な手段’を無視する姿勢を挙げることができましょう。

 ‘他の有効な手段’の内、最も高い効果を期待できるのは台湾の核武装です。国共内戦に敗れた国民党が台湾に政府を移した後、時のアメリカ政府も蒋介石総統も、中国大陸奪還を諦めず、暫くの間反転攻勢の機会を伺っていました。しかしながら、1964年10月16日に中国が初の核実験に施行すると、これを機に台湾は大陸反攻路線の断念を余儀なくされます。核保有国となった中国に対する軍事行動が、核兵器による台湾、並びに、同国を支援するアメリカに対する報復を意味したからです(1970年3月には核兵器不拡散条約が発効・・・)。

 核兵器をめぐる60年代の米中台の関係は、中国が台湾の武力併合を狙う今日にあっては、逆パターンとなる可能性を示唆しています。台湾が核で武装すれば、中国側も、核の報復を受けるリスクを負うことになります。独裁体制を盤石としたい習近平国家主席も、核の報復リスクは人心の離反を招きかねないのですから、台湾侵攻には慎重にならざるを得なくなりましょう。そもそも、自己優先の傾向が強いとされる中国人の多くは、自らの命や財産を危険に晒す‘祖国統一’は、内心、‘指導者’によるはた迷惑な行為と考えていることでしょう。

 麻生副総裁が述べた‘戦う覚悟’とは、戦争遂行能力の増強を以て抑止力とする表現です。しかしながら、孫子の兵法の説く‘戦わずして勝つ’が上策であるならば、敢えて戦う姿勢をアピールしなくとも、台湾の核保有に言及した方が、余程、中国にショックを与え、かつ、現実的な抑止力となるはずです(中国からどのような反応が返ってくるのか、興味深い・・・)。この点からしますと、麻生副総裁は、核の抑止力について説明した上で、戦争を回避する手段としての台湾の核武装、あるいは、核防衛を表明すべきでした。そして、敢えてこの手段に触れなかったところが、麻生副総裁の発言の意図が強く疑われる理由でもあるのです。

 ウクライナ紛争についても、「ブダベスト覚書」によってウクライナが核放棄に応じたことがロシアによる軍事介入を招いた一因として指摘されています。核兵器が強力な盾となる現実を直視すれば、台湾の核保有こそ、戦争を未然に防止する近道かもしれません。核の抑止力の具備は、‘戦わない覚悟’でもあります。この‘戦わない覚悟’は、世界権力が描く第三次世界大戦シナリオからの離脱をも意味しており、三次元戦争において人類側が平和という勝利を手にするための道ともなり得ましょう。

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麻生副総裁の「戦う覚悟」を考えるー三次元戦争の視点

2023年08月11日 12時35分05秒 | 国際政治
 今月の8月8日、台湾の首都台北市を訪問していた自民党の麻生副総裁の発言が、内外に波紋を広げることとなりました。マスメディアの多くが「戦う覚悟」の表明として報じたため、賛否両論の反応が引き起こされたからです。もっとも、同発言には、‘戦争を起こさないための抑止力’という前置きがあり、必ずしも中国に対する武力行使を訴えたわけではないようです。「日本、台湾、米国をはじめとした有志国に強い抑止力を機能させる覚悟が求められている。戦う覚悟だ」と述べているのですから。しかしながら、麻生副総裁の背景を考慮しますと、「戦う覚悟」発言には、何らかの意図が込められていたようにも思えるのです。

 同発言に対する中国側の様子を覗いますと、ヒステリックなまでの過激な反発を見せています。在日中国大使館の報道官は‘身の程知らず’や‘でたらめ’といった罵詈雑言で応じるに留まらず、同談話では、「もし日本の一部の人間が中国内政と日本の安全保障を絡めるなら、日本は誤った道に入ることになる」とも述べています。後者は日本国に対する武力攻撃を含意していますので、台湾有事はもはや中台の二カ国間の問題ではなく、将来的には中国対日本国を含む親台陣営との対立となることを予測しているとも言えましょう。

 その一方で、中国側による同恫喝的な過剰反応は、上述した麻生副総裁の「日本、台湾、米国をはじめとした有志国」に対応したものです。麻生副総裁は事前に日本国政府とも調整を図っていますので、同発言は、日本国政府の意向を汲んだものでもあります。この点に注目しますと、国際社会では、日本側の「戦う覚悟」発言⇒中国の反発⇒台湾有事の国際化・・・という流れが生じていることが分かります。アメリカのバイデン政権が近い将来における対中戦争を視野に入れた対中強硬政策に歩を進め、日本国の岸田政権もNATOとの連携を強化していますので、その先には、ユーラシア大陸の西部におけるウクライナ紛争と東部における台湾有事の両者がリンケージする形での第三次世界大戦が待っているかもしれません。第三次世界大戦の対立構図は、アメリカを盟主とする有志陣営対中ロ陣営となるのでしょう。

 それでは、第三次世界大戦にまで及びかねない国際社会の潮流は、人類史における自然な流れなのでしょうか。第一次世界大戦並びに第三次世界大戦の事例を見る限り、世界大戦の背景には、巨大な戦争利権を有する国際勢力、否、世界権力が暗躍しているのが常です。過去の世界大戦にあっては黒幕の存在に気がつかずに人類は辛酸を嘗めたのですが、情報化社会を迎えた今日では、多くの人々が世界大戦の計画性を疑っています。今般の麻生副総裁の発言、並びに、中国の過剰反応も、世界権力が温めてきた‘第三次世界大戦シナリオ’、あるいは、‘世界支配工程表’に書き込まれていた可能性も否定はできないのです。

 麻生副総裁と言えば、フランシスコというクリスチャンネームを持つイエズス会の信者として知られています。日本国にキリスト教を伝えたのも、イエズス会士のフランシスコ・ザビエルであり、現在のローマ教皇の名も奇しくもフランシスコです。イエズス会はその結成以来、軍隊を模した厳格な組織形態をもって積極的に世界戦略を展開し、各国の政治にも裏から介入してきました。このため、時のローマ教皇から解散命令を下され、各国の君主からも追放される憂き目にもあってきたのですが、今日にあって世界権力の一角を占めています。しかも、イエズス会士にはユダヤ教からの改宗者が多く、ユダヤ系の人脈との繋がりも認められるのです。麻生副総裁も、ロスチャイルド家の分家とされるデホン家に子女を嫁しており、世界権力のメンバーに連なっていると言えましょう。

 第三次世界大戦とは、世界権力との戦いともなる三次元戦争という側面があります。麻生副総裁の発言に対してはとりわけ若者層からの反発が強く、‘戦争に巻き込むな’、‘戦争に行かされるのは若者である’、あるいは、‘自らが真っ先に戦場に行け’、といった手厳しい批判の声も聞かれるそうです。極一部の私的利益のために戦争が起こされ、組織的な誘導作戦に騙された罪もない国民が犠牲になることはあってはならず、麻生副総裁の発言は、抑止力の強化が目的と説明されてはいても、時期が時期だけに、世界大戦への導火線である疑いが拭い去れないのです。

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