政府の「働き方改革実現会議」は、長時間労働の抑制策などを話し合う。
○長時間労働
過労死の防止や育児・介護などと仕事を両立させるためには、長時間労働の解消は不可欠だ。
女性の社会進出を阻む要因にもなっている。
長時間労働を減らすため、政府は労働基準法を改正し残業の上限時間設定や、それを超過した場合の罰則の在り方を検討するとみられる。
労使合意があれば事実上残業が無制限にでき「青天井」との批判がある労使協定のルール見直しが焦点だ。
労基法は働く時間の上限を原則として1日8時間、週40時間までと規定している。
それを超えて働かせる場合、労使が協定を結ぶ必要がある。同法36条に基づ
くため「三六協定」と呼ばれる。
厚生労働省は一部例外を除き残業の上限を月45時間、年360時間などと定めているが、「特別条項」に合意すれば、1年の半分までは上限時間を超えることが可能だ。
一律に厳しく残業時間を制限することには、経営側の反発が予想され、実際の労働時間を記録せずサービス残業をさせるケースが出る恐れもある。
逆に、あまり緩やかでは規制として意味がない。
労使の着地点を見いだすのは簡単ではない。
○非正規雇用
厚労省によると、パートや派遣社貝といった非正規雇用は2015年で1980万人に達し、労働者の37.5%を占める。
一方で非正規の賃金水準は正社員の約60%と、待遇格差が問題になっている。
安倍首相は1月の施政方針演説で「同一労働同一賃金の実現」を宣言。
政府は6月に閣議決定した「ニッポンー億総活躍プラン」で、非正規の賃金について、正社員の80%程度である欧州並みを目指すと明示した。
しかし、同一労働同一賃金は言葉の定義が曖昧な上、日本では職務内容だけでなく能力や成果への対価として給料を支払う「職能給」制度を採用している企業が多く、職務内容に応じた賃金を支払う欧州を模倣することには疑問の声も上がる。
政府は年内に、どのような格差が歪握に当たるかを示すガイドラインを策定する。
法改正も視野に入れるが、格差縮小をどこまで実現できるかは不透明だ。
○多様な働き方
内閣府の調査では、60歳以上の65.9%が65歳を超えても働くことを希望。
しかし企業に課せられた雇用義務は65歳までで、65歳以上の就業率は21.7%と低い。
政府は高齢者の就労促進を目指すが、法律による雇用義務の拡大には根強い反発がある。
65歳までの定年延長や65歳以降の継続雇用など、企業の自発的な取り組み支援の強化が鍵となる。
柔軟な働き方も広げる。
民間企業や公的機関で働く障害者は増え続けており、2015年の民間企業における雇用者数は約45万3千人。
子育てや介護をしながら働く人も増えている。
政府は在宅勤務が可能なテレワー’クなど、情報通信技術(ICT)の活用などを進める。