【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

[箇所付け]衆院予算審議大詰めで鳩山首相、前原国交相を処分へ

2010年03月01日 23時59分59秒 | 第174常会(2010年1~6月)空転政治主導

【衆院予算委員会 「鳩山内閣の政治姿勢」に関する集中審議 2010年3月1日】

 衆院予算委で「箇所付け問題」に関する集中審議があったので、衆院第1委員室で傍聴しました。

 この問題は与党・民主党の「逃げ切りセーフ」になるかと思いましたが、予算通過の前日に公明党などからの要請で、集中審議が設定されました。午後1時半スタートというのは、おそらくNHK「バンクーバー五輪閉会式」に時間を合わせたのだと思います。そうです、NHKは国会より強いのです(笑)。

 まず、与党・民主党の海江田万里さんの質問に答える格好で、平野博文官房長官が5分以上にわたり、ペーパーを読み上げました。この中で、

 ・箇所付け漏洩の時刻は1月28日の午後9時。
 ・三日月大造・国交政務官が、阿久津幸彦・民主党副幹事長に資料をみつくろって持っていった。
 ・この資料の数字は概算要求(2009年10月15日提出)から類推できるものだ。
 ・国交省政務3役の行為は、憲法、国家公務員法、大臣規範などに違反しない。
 ・民主党から(県連を通じて)自治体に情報が漏れ、混乱したのは遺憾だ。
 ・国交省政務3役と民主党副幹事長の間に意思疎通の問題があった。

 などとしました。

 ところで、自民党の町村信孝筆頭理事がこの答弁を聞いて、自民党の松原仁筆頭理事を呼び出して抗議していました。こういった官房長官のペーパーは「政府統一見解」として、予算委理事会に提出するのがフツウですから、ペーパーを配布するよう抗議したのだと思います。

 与党・社民党の中島隆利さん(元八代市長、比例九州単独)は、「箇所付け資料の備考欄に知事要望あり、県連要望あり、などと書いてあるのは極めて遺憾だ」としました。

 野党・自民党からは前釧路市長の伊東良孝さんが質問しました。

 前原誠司・国土交通大臣は「党から仮配分(箇所付け)の内容が出たのは、想定外で遺憾だ」としましたが、伊東さんの鋭いパンチの連発に、ついにしどろもどろになってしまいました。官僚に耳打ちされ、ペーパーを渡される前原さん。私は前原さんがしどろもどろになったのは、野党時代も含めて初めてで驚きました。しかも、官僚のペーパーを読み上げても、まるっきり意味不明の答弁でした。

 「何十年も国会と内閣が築き上げてきたルールを壊す行為だ」とボルテージがあがる伊東さんに対して、鳩山由紀夫・首相は「私どもはこういった情報が利益誘導型政治だと思われることがあってはいけない。本来はもっとオープンに全国的にやりたかったのだが、政務3役と党の間に意思疎通が十分でなかった。国交省の処分を検討したい」と答弁しました。

 2月4日の本予算審議スタートから1ヶ月間、今年の予算審議は「箇所付け」が最大の争点となりました。もっと予算書の中身に入って欲しかったのですが、これは「大前提」の話ですから、自民党の対応を、私は評価したいと思います。

 伊東議員は「まだまだ追及します」として、衆院国交委員会や、参院予算委員会などでも追及を続ける構えを見せました。

 報道によると、鳩山首相は、前原・国交相を処分する考えを示しました。2月4日に平野官房長官が馬淵澄夫・国交副大臣らを処分するととれる答弁をしていましたから、対応が後手後手に回ったことは否めません。鳩山内閣では、いたるところで、「危機意識のなさ」を感じることがたびたびあります。

 また、自民党→政府という衆院予算委では、民主党の阿久津副幹事長や、小沢一郎幹事長に質問をすることができないという制約がありました。鳩山代表(首相)には、民主党幹事長室の処分も検討して欲しいと思います。

 自民党はなかなかよくやったと思います。

(答弁の内容については、自分のノートの感触を優先していますので、正式な文言は会議録でご確認ください)

 ◇

 本予算案は、3月2日午前9時から、衆院予算委で締めくくり総括質疑。採決の結果、可決し、午後4時半の衆院本会議に送られます。自民党と共産党が「組み替え動議」を提出する予定のようです。本予算案は3案(一般会計、特別会計、政府関係機関予算)一括して、記名採決(堂々巡り)のうえ、可決。同日中に参院に送られ、憲法60条の規定(30日ルール)年度内成立が確定する予定です。

asahi.com(朝日新聞社):首相、前原国交相を処分へ 公共事業個所付け情報問題 - 政治

 鳩山由紀夫首相は1日、公表前の公共事業の「個所付け」の情報が国土交通省から民主党を通じて全国の自治体に漏れた問題について、「国交省に対して処分を行う必要がある。最高責任者は前原大臣になる」と記者団に語り、前原誠司国土交通相を処分する考えを示した。

 首相はこの日の衆院予算委員会で、処分の理由を「予算審議を経て個所付けとして決定されるべき貴重な情報が、政党との間だけの情報だったにもかかわらず、意思疎通が十分でなく各自治体に流れてしまった」と説明。「利益誘導型政治とか選挙対策とか思われてはならない。遺憾な部分はあった」と答弁した。

 ただ、首相はこの問題にかかわった国交省政務三役(大臣、副大臣、政務官)について、法令や2001年に閣議決定した政務三役の規範への違反はなかったと説明。処分内容は「検討中」としている。鳩山内閣は昨年、直嶋正行経済産業相が国内総生産(GDP)の速報値を公表前に漏らした問題では、平野博文官房長官による電話での注意にとどめている。

 平野長官は予算委で調査結果を報告。国交省政務三役の合意のもとで昨年12月16~18日に政務官と担当課長が党都道府県連にヒアリングし、1月28日に三日月大造政務官から阿久津幸彦党副幹事長に情報を伝えたとした。

     ◇

 ■個所付け問題 国土交通省の政務三役は1月末、2010年度の国直轄事業の予算配分案を記した資料を民主党だけに提示。民主党都道府県連を通じて自治体の首長らに情報が伝わった。党や自治体から陳情があった308事業の6割で概算要求段階から予算が増額され、凍結候補だった国道事業の6割で予算が復活するなど陳情を反映した配分となった。前原国交相は当初、資料の国会提出を拒んだため、野党から「国会軽視だ」などと批判を受けた。



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