
[写真]岡田候補の応援演説をする、郡司彰農相、2009年5月16日、ホテルオークラ、民主党ホームページから。
野田佳彦首相は終盤国会での社会保障と税の一体改革の採決を絶対にするため、内閣改造を断行。2012年6月4日(月)、(第1次)野田第2次改造内閣が発足しました。岡田副総理最側近の郡司彰農相が誕生し、岡田・郡司農政として、農業委員会・JAの規制見直しを含んだ成長戦略(日本再生戦略)を重視した陣立て。これにより、社会保障と税の一体改革法案の会期内(6月21日まで)の衆院採決に向けた修正協議と、新成長戦略改め日本再生戦略の策定など成長戦略を実現できる内閣になった、と私はみています。
国会会期中の内閣改造は、第163回特別国会の第3次小泉内閣以来、7年・17会期ぶり。民主党と自民党の修正協議を経て、一体改革法案を必ず成立させたい野田総理の一ミリもぶれない意思の表れ。
元自民党衆院議員で現在は民主党参院議員である2人の問責大臣(国交大臣だった前田武志さん、防衛大臣だった田中直紀さん)をやむなく更迭。参議院自民党が提出した問責理由は、前田さんは本来県警が判断すべき公選法違反疑惑であり、田中さんは漠然と能力不足を指摘したものであり、大いに疑問があります。しかし、不条理を飲み込むのが政治家の存在意義。一体改革を優先するために、総理の判断は100%正しい。元自民党衆院議員で国民新党参院議員の自見庄三郎国民新党代表も、本人の希望で閣外に去りました。このほか、小川敏夫法相の4人の参院議員が閣外に。そして、今国会で、自民党議員から指摘があり警視庁の中国(前)大使館員摘発による一連の疑惑にからんだ鹿野道彦農相も閣外に。
これにかわり、郡司彰農相が就任。元自民党衆院議員で民主党衆院議員の滝実(たき・まこと)さんが法相に。おなじく元自民党衆院議員の松下忠洋・国民新党衆院議員が郵政民営化担当相(兼)内閣府金融担当相に就任しました。さらに羽田孜元首相の長男である参院民主党国対委員長の羽田雄一郎国交相、民間人の森本敏(もりもと・さとし)防衛相(防大9期)が就任しました。
なお、郵政見直し法(改正郵政民営化法=平成24年法律30号)の成立により、「郵政改革担当」は「郵政民営化担当」に名称が変更されました。
このように自民党出身者4人が閣外に去り、自民党出身者2人が初入閣となりました。
野田さんは「内閣改造で機能強化」と言っていましたが、「野田民主党内閣の自由主義機能強化」の改造といえるでしょう。リベラル色が強い新党さきがけ、社民連を経て、第1次民主党を結成した、鳩山由紀夫元首相、菅直人前首相の時代は去り、民主党と自民党の自由主義保守二大政党による政治が始まりました。これからは、「与党としての実績」が総選挙たびに争点になります。要は、「不況なら代えろ」が政権交代の合い言葉になります。野田内閣は残り任期で一体改革と同時に、成長戦略を仕上げなければなりません。一方、党内のリベラル勢力が、公明党なども含めた第三極との連携を模索するという構図が、我が国デモクラシーに必要です。要は、自由主義が当たり前であり、それを選挙の争点にしてはいけない政治。それが私たちが政権選択権を持つ、政治を国民の手に取り戻した二大政党デモクラシーです。もちろん、今後は民主党初当選の自由主義者が育ってきますから、自民党出身の閣僚は自民党政権のみ、民主党出身の閣僚は民主党政権のみという分かりやすい格好にいずれなります。過去の行いは、私たち有権者に見える化、透明化、トレーサビリティーになります。
岡田副総理最側近の郡司農相が誕生しました。岡田さんは2010年10月7日の記者会見で「郡司さんも非常に親しい人」と語っています。昨年の3党合意では直接支払い(農業者戸別所得補償)の政策効果の検証で民主党を代表しました。郡司さんの参院議員としての任期は2016年7月まであります。けさ書いた「◎農業委員会とJA廃止もあるか? 岡田克也さんの「やさしい新自由主義」が始まった」でも指摘した、岡田行政刷新相率いる「規制・制度改革委員会 農業ワーキンググループ」との連携も、「ツー」「カー」で進んでいくでしょう。
郡司さんは2009年5月16日の民主党代表選では、岡田候補の応援演説に立ちました。この部分は残念ながらNHK中継は入っていませんでした。
郡司さんは岡田代表時代のエピソードを2つ披露。
一つは、郡司参院農水委員長が参院職員から「委員長招待をやりますか?」と言われたときのエピソード。委員長招待とは、会期末に委員長が与野党の委員を招いて、税金で飲めや歌えのどんちゃん騒ぎをする国会の秘めた慣例。これを「止めたい」と岡田代表に相談しに行くと「止めれば」とひと言で返されたとのこと。そして、「次の委員長招待の機会はどうなるかなと思っていたら、参議院事務局職員はそもそもお伺いを立てに来ませんでした」と、税金の無駄づかいを野党議員ながら仕分けできたとのこと。
もう一つは、2005年1月18日に民主党経理局長になったときに岡田代表から「郡司君、経理局長は嫌われるのが仕事だよ。嫌われないと、良い仕事はできないよ」と言われたとのエピソード。2つとも、ヒジョーに岡田さんらしい。私は歴史的な郡司演説だったと考えます。このときの両院議員総会では当時200人ほどいた衆参民主党議員のうち、数票が浮動票だとされていました。おそらく私はこの数票の浮動票は郡司演説を聴いて、対抗馬の鳩山由紀夫候補に流れたと考えます。それも含めて、郡司演説は歴史的だったでしょう。
この後、同じホテル内で開かれた岡田陣営残念会で、岡田さんは「鳩山新代表から幹事長就任を要請された」と明かした上で、「今回のこの選挙で応援していただいた方には、これからご恩返しをさせていただきます」と演説しました。この演説について私は「来るべき総選挙で政権交代(政権獲得)をしたら、応援してくれた人にはポストを配分するという意味だ」と解釈したところ、岡田筋は「そんなことできるような人ならとっくに総理になってますよ」と違う解釈を示しました。岡田筋はあまりに近すぎてこういう解釈になったのでしょうが、どうやら、私の解釈の方が、「マックス・ヴェーバー岡田」の政治的資源の配分という考え方に沿っていたようです。岡田筋はこれについては、筆者に一目置いてくれたようです。
こうやって政治的資源が配分される。代表選のたびにwikipediaで検索して政治行動(投票行動)を考える「wikipedia民主主義」が民主党内政局を大きく動かす傾向がありますが、それは無理。「検索がどうした答えは見つかったか」という趣旨の歌詞のヒットソングがトータス松本さんにあると思いますが、民主党代表は2009年9月17日からは内閣総理大臣なんです。宰相の器はwikipediaでは分かりません。だから「鹿野首相」なんてのはあり得ないんです。wikipediaを見る暇があったら、映画を見た方がいいし、宰相の器が分からなければ、良い先輩を一人見つければいい。良い先輩は与党では政務三役であることが多いので、赤坂で飲んでいても見つかりません。要は、岡田さんが推薦する候補に投票すればいいんですよ、というのが私の結論ですね。
滝法相は既に第46回衆院選不出馬を発表しており、思い出入閣となります。思い出入閣は、福田改造内閣の鈴木恒夫文科大臣以来となります(【思い出入閣】文科相に引退表明の麻生派・鈴木恒夫さん)。滝法相は3月30日の社会保障の安定財源を確保するための税制抜本改革ための消費税増税法案の閣議決定では、政務三役として正しい選択をしました。
[写真]民主党総務委員長として仕事納めであいさつする滝実法相、2010年12月、筆者撮影。
[写真]羽田孜政治生活40周年記念行事であいさつする羽田雄一郎国交相、2009年12月、筆者撮影。
[写真]復興副大臣として答弁する松下忠洋金融・郵政民営化担当相、2012年5月30日、衆院インターネット審議中継から。
防衛大臣には海上自衛官を15年間務めた森本敏さん(防大9期)を起用。自衛官出身の防衛大臣(防衛庁長官)は小泉内閣の中谷元衆院議員(防大24期)以来2人目。中谷さんは陸上自衛官を4年間勤めており、当時の野党・民主党から、日本国憲法66条の「シビリアン・コントロール」に関して質問が集中しました。森本さんについては、麻生内閣が衆院解散後の2009年8月に、防衛参事官制度(内局、背広組)拡充のために新設した防衛相補佐官に就任しながら、鳩山内閣発足にともない1ヶ月で退任した経緯があります。一方で、参議院外交防衛委員会の最大の実力者になりつつある自民党の佐藤正久シャドウ防衛副大臣(防大27期)が陸上自衛隊に24年間勤め、一等陸佐にまでなっていることから、森本防衛相起用の実績で、政権交代後の「佐藤防衛相」に道を拓くために、参院で防衛省に影響力をもつベテラン議員の意向が働いた可能性があります。
[画像]森本敏防衛相、2011年3月23日、参議院予算委員会、参議院インターネット審議中継から。
岡田・郡司農政をはじめ、野田自由主義内閣を応援しましょう。
そのうえで、景気が悪ければ野党、景気が良ければ与党。総選挙なんて、しょせん、そんなものなんですよ。政治は私の生活を良くするための道具に過ぎません。それが私が17年間めざし続けた保守二大政党制です。どうぞよろしくお願いいたします。
谷垣禎一シャドウ首相と石原伸晃自民党幹事長もがんばってください!!
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