
政府は2012年(平成24年)7月31日(火)の定例閣議で、「平成24年度特例公債法案」(180閣法2号)と「年金交付国債発行を可能とする国民年金法の一部を改正する法案」(180閣法26号)の修正を決め、衆議院に許諾を求めました。平成24年度特例公債法案の修正承諾要求は同日午後の衆議院本会議で起立表決され、賛成多数で可決しました。この表決では自民党が起立せず、反対したように見えました。
年金交付国債発行を可能とする国民年金法改正法案は議院運営委員会が付託先の委員会を決めておらず、マイナンバー法案、特例公債法案、国民年金法改正法案、補正予算案が今年度から、2014年4月の消費税率アップにかけた中期的な税財政運営のために、今国会で一体的に成立をめざすという混沌としながらも乱暴に前に進むジェットコースター並みの国会運営となってきました。
内閣が衆議院に対して提出済み法案を修正承諾要求することは今まではほとんど無く、第177通常国会での民主党の岡田克也幹事長・安住淳国対委員長体制から急増しました。これは、参院で過半数がなく、衆院で3分の2がないという憲法の空白に陥っている、第45期衆議院・第21期第22期参議院(2010年7月から)の民主党が必死にナローパス(狭い道)を前に走りながら考えるうえで生まれた苦肉の策です。ただし、多くの与党議員が提出後の法案のプロセスを理解できない状態に陥っており、そのため6月26日の造反政局、党分裂につながってしまいました。私は国難の折に自分の頭で理解できないから造反した国会議員は、ただ消え去るのみとの強い信念で臨んでいます。
「平成24年度の特例公債法案」はタイトルを「財政運営に必要な財源の確保を図るための公債の発行の特例に関する法律案」に修正しました。一見して分かるとおり、「平成24年度」の文字が消えています。6月15日の3党合意の確認書の3つめ「(年金)交付国債の削除」を具体化したもので、年金交付国債にかわり、年金特例公債(新発国債と借換債)を使い、年金特例公債で基礎年金の国庫負担2分の1から36・5%の不足部分である2・6兆円を穴埋めします。その2・6兆円分の年金特例公債は、2014年4月以降の消費税増税分で償還することが明記されています。(財務省ホームページ内の修正案原文(PDF)参照)。
「年金交付国債発行を可能とする国民年金法改正法案(180閣法26号)」については、平成24年度における年金交付国債による財源措置を削除したかわりに、平成24年度および平成25年度の基礎年金の国庫負担分確保に年金特例公債を使うことを明記しました。(厚生労働省ホームページ内の修正のポイント参照)。
ただし、今国会(9月8日)中に成立が必要なのは、むしろ、「年金特例公債を発行するための国民年金法改正法案」(180閣法26号内閣修正)であって、私見ですが、「財政運営に必要な新・特例公債法案」(180閣法2号内閣修正)が今国会中に成立しなくても借換債を短い期間の公債で回していけば、キャッシュフローは年度を通して可能なのではないだろうかと考えます。安住淳・財務大臣は10月末の時点で、税収見積額が底をつくとしていますが、実際にはそもそも平成24年度に見積もる税収がその時点で国庫に全額は言っているわけではなく、幸か不幸か、毎年、百数十兆円の国債を償還し、借換債を発行している現状では、それだけの年間のキャッシュフローは枯渇しないんだろうと私は思います。とはいえ、そもそもそれは健全でないし、財政法などに抵触する可能性もあるでしょう。国際的な評価も懸念されます。ですが、9月8日までに必ずしも成立しなくていい場合は、当初自民党が想定していた特例公債法案成立の見返りとしての解散確約戦術がとれない可能性が出てきました。民主党が9月の野田佳彦代表(総理)再選後に、秋の臨時国会を開き、財政運営に必要な新特例公債法案と消費税改正法附則第18条を具体化するための補正予算案を提出した場合は、自民党と公明党は3党合意を破棄するかどうかという匕首を突きつけられます。3党合意を破棄した場合は、自民党と公明党が第46回衆院選に勝利しても政権政党が参院で少数であるねじれ国会が永続化します。
なお今国会では、「日本郵政民営化見直し法案」と「原子力規制委員会設置法案」の閣法総計5本が内閣による撤回要求が衆議院で承諾されています。このときは、撤回承諾要求をした時点で、3党合意が成立していました。今回の新・特例公債法案については、参院での過半数での可決・成立の確約が3党でとれていないものと推測されます。逆に、3党による話し合い解散を正面突破する狙いが、政府・民主三役の間で共有されている可能性がある、と私は想像しています。
3党合意をてこに、反転攻勢をする。野田さんは礼儀正しい人ですが、どうやら岡田さん・安住さんのインテリヤクザ国対が、副総理・財務大臣に所を変え、再び地が出てきた気がします。私も逆賊とののしられても、暴漢に刺し殺されても、野田さん、岡田さん、安住さんともに狭い道でも前に進む心構えです。攻撃は最大の防御です。
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