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ミステリ感想-『屍の命題』門前典之

2017年10月31日 | ミステリ感想
~あらすじ~
とある湖畔の別荘に招かれた6人の男女。数年前に遭難して行方不明となった教授の遺志を受け継ぎ、夫人の手で落成されたその館で、一人また一人と殺されて行き、そして誰もいなくなった。


~感想~
超面白かった! と小学生並みの感想を書いて終わりにしたくなる快作、いや怪作。
冒頭には読者への挑戦状が付されヒントとして「そして、誰もいなくなった」「バラバラな殺人方法」「蘇る死者?」等々のネタバレが過ぎるようなことが書かれているが、このくらいは手の内を明かしても一切問題ないという作者の自信の表れで、さらには本文中にも大きな伏線には丁寧にも傍点が付けられ否が応でも目を引かれるが、読者はどれだけ身構えてもこの強烈な真相にたどり着くのは容易ではあるまい。

内容は「やべえ教授が建てた洋館が雪の山荘で連続殺人のギロチンは足跡のない密室」といったコード型本格に、バカトリックの連打が詰め込まれたエンタテインメント性あふれるもので、特に読者への挑戦状の次に挟まれた「巨大なカブトムシの亡霊」と「遭難した男?と湖に現れる天女」を描いた断章は、その真相が明かされるや度肝を抜かれるとともに爆笑必至。
読んだ人はみんな一様に「カブトムシは笑った」と絶賛しているがこんなの笑うに決まってるわ!

その他にも二人の人物に手記を書かせて、後発の名探偵の捜査を助けさせる趣向、冒頭の挑戦状で上げに上げたハードルを飛び越えつつ貫くフェアプレイ精神、被害者たちをつなぐ豪快なミッシングリンクに、最後の最後に現れる悪魔的真相と、かの小島正樹をも凌駕するやりすぎなほどのトリックとアイデアが満載。

「ガタッ、ガタッ!」「ガシャーン!!」「グゥワシャーン!!」とか擬音をそのまま書いてしまったり、「シュッーン!」「ギジッ、ギッキュー」といった凝りすぎててなんの擬音だかわからない謎の音(※ギロチンの音)や「ヒューゥ」「ハ、ハ、ハ」「オーケー!」とかの脱力する感嘆符に、全てが解決した後にすげえどうでもいいコズミック的仕掛けが現れるあたりはダメミス感を漂わせるが、これだけやってくれればそんな些細な瑕疵など少しも気にならず、読み終えたミステリファンを童心に帰らせ、超面白かった! と言わせずにはいられない本格ミステリの娯楽大作である。


17.10.30
評価:★★★★☆ 9

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