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ミステリ感想-『黒面の狐』三津田信三

2016年09月24日 | ミステリ感想
~あらすじ~
満洲の建国大学に入るも学徒動員での軍役を経て、道を見失った物理波矢多は北九州に流れ着き、炭鉱夫となった。
そして落盤事故を皮切りに、奇妙な連続密室殺人事件に巻き込まれ……。


~感想~
もともと刀城言耶シリーズとして構想されていたと聞き購入したが、シリーズの一作として出しても全く遜色ない秀作である。

序盤は舞台説明として復興途上の日本の様子の描写に多くの筆を費やされ、さらに虐げられた朝鮮人たちの歴史が加わるため非常に読みづらく、初期の刀城言耶シリーズを思い出させる。
だが事件が起こってからは怒涛の展開で、矢継ぎ早に第二・第三の事件が出来し、あっという間に解決編まで流れていく。
解決では探偵役に刀城言耶が乗り移ったかのように、多重解決を惜しげもなくきわめて簡潔に披露しては片っ端から破棄していき、真相こそ読み慣れた読者からすればそこしかない当然の場所に着地してしまい少々拍子抜けするものの、豊富な伏線と納得の真相に支えられ十分な満足感は得られるだろう。

続編の存在も匂わせており、天に二物を与えられた主人公が身分を隠して放浪し各地で謎を解く、貴種流離譚のような新シリーズの開幕となれば大歓迎だし、時代設定も近い本家(?)の刀城言耶シリーズと絡めるのも容易で、今後が楽しみでならない。


16.9.22
評価:★★★☆ 7

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