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ミステリ感想-『伊藤博文邸の怪事件』岡田秀文

2013年11月24日 | ミステリ感想
~あらすじ~
明治17年。憲法制定に尽力する伊藤博文邸に書生として入った杉山潤之助と月輪龍太郎。
だが数日も経ずに書生仲間の一人が不可解な状況下で殺された。
何者かの足跡。怪しい新聞記者。美貌の少女。密室の死。邸内に漂う不穏な空気の正体とは?


~感想~
本作は明治時代が舞台だが、作者が古書店で手に入れた杉山の手記を現代語訳し、注を付けて出版したという体裁のため文章はいたって読みやすく、事細かに注釈が入るので予備知識が無くとも問題ない。
歴史小説を多くものしている作者だけに、伊藤博文にも明治時代にもさほど興味が無い読者も飽きさせずに読ませる筆運びは秀逸。むしろ題材のわりに頁数の少ない作品なので、もっと伊藤博文の独白や時代背景を読みたくなってしまう。
ミステリとしての強度も抜群で、終盤のどんでん返しの連打や豊富な伏線、言われてみれば当然と納得させる手掛かりの数々、そして何よりこれが真相に絡んできたら面白いなと思ったさりげない伏線が、絡むどころか真相そのものとして立ち上がってきたのには驚かされた。
今年の意外な収穫や賞レースのダークホースというよりも、隠れた本命になるかも知れない秀作である。


13.11.22
評価:★★★★ 8

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