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ミステリ感想-『赤い指』東野圭吾

2006年10月14日 | ミステリ感想
~あらすじ~
息子が幼女を殺した。
認知症の母以外に問題のなかったはずの平凡な家庭が壊れる。
「この家には、隠されている真実がある。それはこの家の中で、彼等自身によって明かされなければならない」
加賀恭一郎がたどり着いた真実とは?
直木賞受賞後の第一作。


~感想~
直木賞を獲ろうが、各賞を総ナメにしようが、氏のスタンスは変わらない。
ある作家は直木賞を獲り「ミステリではなく文学として評価されうれしい」と述べ、ミステリファンからの顰蹙を買った。
しかし東野圭吾は「ミステリで受賞できてうれしい。これからもミステリを書いていきたい」と述べ、喝采を浴びた。
そして受賞第一作。氏は自分の言葉と期待を裏切らなかった。
社会問題や平凡な一家族の抱える闇を描きつつも、あくまでもトリックに奉仕した“ミステリ”を描いてくれた。
真相は「トリックがある」と身構えて臨めば、見抜きやすい。だが、受賞にも惑わず今までどおりの作品をものす、そのミステリにかける心意気がうれしくも心憎いではないか。
小説として見ても、加害者家族の心情や苦渋の選択、迷いと葛藤、そして結末で明かされる悲哀と、決して長くない分量で見事にまとめている。また、僕は初読なので解らないが、加賀恭一郎シリーズとしても見どころの多い作品らしい。
シリーズを知らなくても、刑事と加害者、2つの親子の在り方は心に残る。ミステリ好きも文学好きも安心して手に取れる佳作だろう。


06.10.14
評価:★★★☆ 7

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