
~あらすじ~
山縣有朋のもとで暗躍した漆原安之丞にもたらされた殺害予告。
間もなく彼は首無し死体で見つかり、秘書の魚住は探偵・月輪龍太郎に調査を依頼する。
山縣有朋の別邸・黒龍荘で月輪を待ち構える第二・第三の惨劇。はたして裏に潜む真相とは?
~感想~
昨年、「伊藤博文邸の怪事件」で一部に賞賛されたものの、知名度の無さから各種ランキングに入るどころか有識(笑)な投票者にそもそもろくに読まれていない惨状で、新規ファンを嘆かせた月輪龍太郎シリーズの第二作。
作者も本作の冒頭で「増刷の連絡などお義理にもなく、書評に取り上げられることさえ皆無で、ささやかな部数の初版本のほとんどが、すみやかに書店の棚から撤去され、返本、断裁という運命をたどった」と多少の脚色をしつつ嘆き節を見せているが、第一作で膨らんだ期待をはるかに上回り今年こそはと思わせる傑作でした。
まず前作と比べて格段にテンポが良く、「第一の惨劇」から「第六の惨劇」までずらりと並ぶ目次を見てもわかるとおり次から次へと古典ミステリさながらの首無し死体や密室が飛び出してくる。
加えてこれまた古色蒼然たる不気味な童謡の見立てが行われ、怪しい影は跋扈し座敷牢で狂人は咆哮、石崎幸二か清涼院流水かと思うほどなす術もなくじゃかすか人が死んでいき、刑事も探偵も事件の進行を指をくわえて見ているだけと、古典ミステリのコードをひたすらなぞるような展開。
さっぱり真相が見えないまま残りページもわずかとなったところで今度は三津田信三の刀城言耶シリーズのように数え上げられる、残された謎はなんと十六。
それらを一気呵成にまとめてぶった斬る解決編は、悪魔的な真相とは裏腹に、細かい伏線回収を端折ってまさに快刀乱麻を断つがごとくに爽快。
古典ミステリのコードを拝借しながらも、終わってみれば明らかになる構図や、次から次へと首無し死体が現れすれっ枯らしのファンなら「誰がどう入れ替わっているのか」と考えさせておいて意表をつく転倒した論理などは、完全に現代本格のそれ。
正直言って到底現実味の無いような強引なトリックではあるのだが、おそらく念頭に置いたと思われる現実の事件を読者の脳裏に思い起こさせることで、有無を言わさず納得させてしまう豪腕に脱帽である。
このトリックを極限まで削り落としていくと、あの某流水大説になるのではなかろうか。(※なりません)
今度は知らなかったとは言わせない。今年こそは、今度こそはランクインを願いたい。
14.9.19
評価:★★★★☆ 9
山縣有朋のもとで暗躍した漆原安之丞にもたらされた殺害予告。
間もなく彼は首無し死体で見つかり、秘書の魚住は探偵・月輪龍太郎に調査を依頼する。
山縣有朋の別邸・黒龍荘で月輪を待ち構える第二・第三の惨劇。はたして裏に潜む真相とは?
~感想~
昨年、「伊藤博文邸の怪事件」で一部に賞賛されたものの、知名度の無さから各種ランキングに入るどころか有識(笑)な投票者にそもそもろくに読まれていない惨状で、新規ファンを嘆かせた月輪龍太郎シリーズの第二作。
作者も本作の冒頭で「増刷の連絡などお義理にもなく、書評に取り上げられることさえ皆無で、ささやかな部数の初版本のほとんどが、すみやかに書店の棚から撤去され、返本、断裁という運命をたどった」と多少の脚色をしつつ嘆き節を見せているが、第一作で膨らんだ期待をはるかに上回り今年こそはと思わせる傑作でした。
まず前作と比べて格段にテンポが良く、「第一の惨劇」から「第六の惨劇」までずらりと並ぶ目次を見てもわかるとおり次から次へと古典ミステリさながらの首無し死体や密室が飛び出してくる。
加えてこれまた古色蒼然たる不気味な童謡の見立てが行われ、怪しい影は跋扈し座敷牢で狂人は咆哮、石崎幸二か清涼院流水かと思うほどなす術もなくじゃかすか人が死んでいき、刑事も探偵も事件の進行を指をくわえて見ているだけと、古典ミステリのコードをひたすらなぞるような展開。
さっぱり真相が見えないまま残りページもわずかとなったところで今度は三津田信三の刀城言耶シリーズのように数え上げられる、残された謎はなんと十六。
それらを一気呵成にまとめてぶった斬る解決編は、悪魔的な真相とは裏腹に、細かい伏線回収を端折ってまさに快刀乱麻を断つがごとくに爽快。
古典ミステリのコードを拝借しながらも、終わってみれば明らかになる構図や、次から次へと首無し死体が現れすれっ枯らしのファンなら「誰がどう入れ替わっているのか」と考えさせておいて意表をつく転倒した論理などは、完全に現代本格のそれ。
正直言って到底現実味の無いような強引なトリックではあるのだが、おそらく念頭に置いたと思われる現実の事件を読者の脳裏に思い起こさせることで、有無を言わさず納得させてしまう豪腕に脱帽である。
このトリックを極限まで削り落としていくと、あの某流水大説になるのではなかろうか。(※なりません)
今度は知らなかったとは言わせない。今年こそは、今度こそはランクインを願いたい。
14.9.19
評価:★★★★☆ 9
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