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ミステリ感想-『ドラゴンフライ』河合莞爾

2014年04月18日 | ミステリ感想
~あらすじ~
河川敷で発見された死体は臓器を抜き取られ、黒焦げにされていた。
警視庁捜査一課の鏑木が率いる4人の特別捜査班は、ダム建設に揺れる飛龍村へ向かう。
村で起きた20年前の事件。3人の子供たちが目撃した巨大トンボ・メガネウラ。遭難した山奥で自分の家にたどり着いた男。幽霊からの電話。謎をつなぐ鍵はトンボに?


~感想~
冒頭で「遭難した山奥で自分の家にたどり着いた男」と「現代に現れたメガネウラ」というTHE・奇想と呼びたくなるような謎が描かれるものの、それらは脇において猟奇事件を追う捜査が進行する。
捜査の過程でも次々と不可解な謎が浮上し、加えてダム建設をめぐる社会派な陰謀や、盲目の少女を取り巻く人間模様が現れと、話は錯綜していくばかり。
しかしそれらが一本の線につながっていき、冒頭から置き去りにされた謎も解かれ、とどめとばかりに前作終盤の展開まで絡めていく手管は、とても新人の第二作とは思えない。
これだけ多方面に謎も話も枝分かれしながら、終わってみれば腑に落ちない点や余分な話が一つもなく、それどころかあまりにも物語が整理されすぎていて、中盤を過ぎたあたりから、残された謎や伏線から逆算して、真相にあらかた見当がついてしまうという、この驚異的な完成度の高さはただごとではない。
また奇想と謎解きを全面に押し出し、最後に刑事が大勝利する単純な勧善懲悪にもできたところを、登場人物たちの悲哀を描くことに注力し、余韻を残す静かなラストシーンにまとめ上げたのも素晴らしい。
正直言って後半の話の筋は丸分かりで、意外性も何も無いのだが、それが不満ということは全くなく、恐ろしくなるほど良く出来た物語にただただ感心するばかり。
三作目では早くもシリーズを離れたそうだが、「新人離れした」というありきたりな表現では収まらない、これだけのストーリーテリング能力があれば、何を書こうがそうそう外すことはあるまい。河合莞爾、かえすがえすも恐るべし。


14.4.16
評価:★★★★ 8

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