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ミステリ感想-『死神の浮力』伊坂幸太郎

2016年07月30日 | ミステリ感想
~あらすじ~
娘を殺した犯人が証拠不十分により無罪となり、復讐を狙う作家の山野辺遼と妻の美樹。
だが山野辺のもとに7日間の調査のため死神の千葉が訪れ、飄々とした彼のおかげで復讐計画に次々とズレが生じる。

13年このミス5位、文春5位


~感想~
傑作短編集「死神の精度」に続く第二弾で今回は長編。
夫婦のとりあえずやっちまえ感が満載のずさんな復讐計画が、ただでさえ浮世離れした死神の中でも、さらに異端児(らしい)の千葉にかき回されていく様が単純に楽しい。
絵に描いたようなサイコパスの犯人による、やはりずさんだけどサイコ感に満ち満ちた残虐ファイトと、それを意図せずに破っていく千葉の活躍も見どころで、結末の死神とサイコパスの対決(?)は手に汗握らせるもの。
この作者に期待する伏線回収も申し分なく、回収しなくてもいいような伏線をいちいち拾い上げ、伏線大好き人間を喜ばせてくれる。
エピローグの後日談も完璧な着地を決め、前作よりもミステリ味はだいぶ薄まっているが、そんなことは全く問題にならない、死神シリーズの長編としてはもう文句の付けようもない良作である。


16.7.26
評価:★★★★☆ 9

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