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ミステリ感想-『いわゆる天使の文化祭』似鳥鶏

2012年01月08日 | ミステリ感想
~あらすじ~
文化祭目前のある日、生徒たちが登校すると、目つきの悪いピンクのペンギンとも天使ともつかないイラストが描かれた貼り紙が目に飛び込んできた。
別館中に貼られた、部活にちなんだ様々な怡好の“天使”を不思議に思いつつも、手の込んだ悪戯かと気を抜いていると……。


~感想~
個人的にプッシュしている新鋭のシリーズ第四弾。今度は長編。
巻を重ねるごとにトリック・描写ともに順調に腕を上げている印象だが、今回もまずリーダビリティは抜群。
先輩・後輩取り揃えたギャルゲー並のモテっぷりの、ワトスン役としては(推理能力以外の部分で)破格のスペックを誇る葉山くんを軸に、レギュラーキャラと濃すぎる新キャラが入り乱れて会話するだけでも満足。
というか草食系・巻き込まれ型・窮地に場慣れ・妹よりも小柄・男の娘、と葉山くんは完全にヒロインの役どころを喰ってしまっていると思うんだ。

それはともかく密室トリックはなんてことない強度だが、各所にちらばめられた、微妙に噛み合わない違和感の正体が、思いも寄らないところから降って湧くトリックによって解かれる点は秀逸。
弱めの密室トリックも、物語の全体像の縮図(超ネタバレ→密室トリックも物語全体に仕掛けられた叙述トリックも、時系列と視点をずらすことで成立している)となっているのが面白い。
(トリックについてさらにネタバレ→特に天使のポスターの署名(一度目の事件で現れた模倣犯に対する留意)に関する叙述トリックには唸った。叙述トリックの使い方として、これは新機軸ではなかろうか)

終わってみれば、長編としてはやや短い分量にきっちりと収まり、無駄な描写の一つとてない端正な青春ミステリに仕上がっている。
もうそれだけで作品として成立しそうな、熱のこもったあとがきももちろん見どころ。
似鳥鶏、いよいよ今年こそブレイクなるか。


11.12.25
評価:★★★★ 8

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