最高級(死語)プリメインアンプです。発表は1965年というから1回目の東京オリンピックの翌年という半世紀以上前の骨董。デザイナーはもちろんアーノルド・ウォルフ。
JBL SE400Sで発表されたTサーキットと呼ばれるDCアンプにプリミティブなプリアンプを接続したものという解説が一般的。
あくまでもデザイン優先のアンプでフロントマスクの美しさはもとより、リアパネルはJBL SE401から受け継いだもの。というかフロントパネルにプリアンプがくっついて、リアパネルにメインアンプがくっついた構造。したがってプリメインアンプに必要な入出力端子はなんと下側から取り出すというもの。
分解してのメインテナンスのやり辛いこと!
ツマミも高級。パネルとの隙間は同心円である必要があるため加工精度が求められる。
フロントパネルはこのアンプの命なので取り外して保管。このように3分割のグタグタになる。ここはコネクターだろう!!、、と愚痴が出る。
プリアンプ部。コンデンサーが大量使用。以前一部が交換された既往あり。
リアパネルはヒートシンクを兼ねていて重量のあるキャスト。部品の配置はほぼ単品のメインアンプと同じ。
こちらはJBL SG520プリアンプの回路図です。JBL SA600のプリアンプ部は簡易的なものと言われていますが、比べてみるとEQ段、ボリュームコントロール段、トーンコントロール段とほとんど一緒です。
JBL SA600のマニュアルでもトランジスターの品番は公表されていない。現物を見ると全てモールドタイプなのでシリコントランジスターと思われる。でもなぜか塗装されていて品番がよく見えないのは困ります。
JBL SA600は回路的にはJBL SG520とJBL SE400Sを合体させたものと考えて良いようです。(しかし個人的には大きな違いを感じていますので後述させていただきます)
さて現在の状態ですが音は出るのですが電源スイッチを入れた時のノイズが酷く、DC漏れの可能性もあるため大切なスピーカーは接続できない、、という惨状。とりあえずスピーカー出力の電位を測ってみましょう。
、、確かにDCが出力されますが半固定抵抗で調節できます。マニュアルでは±0.1Vが正常とのことです。半固定抵抗は外観はやはり劣化(サビなど)ありますのでJBL SE460の時と同様に分解整備してみます。
どうしてもプリとメインの接続部を外さないと作業ができない。メインアンプの入力はRCAジャックになっていて外部プリを接続できる構造にはなっています。しかしシールドコードを引き込むスペースはなく猛者はケースに穴を開けていた写真を見たことがあります!潔く切断して作業開始。
これで組んでみるとDC漏れは十分に規定値以内に抑えることができます。またノイズなども感じられない、、ということでこの個体もここまでの修理にしました。(修理というより単に清掃か)
リアパネルです。後ろの美しさにこだわるのはスティーブ・ジョブズと一緒。
問題の端子類です。銘板は両面テープで固定されている。今回古いのを苦労して剥がしてやりかえました。メインアンプのみ引き出すにはリアパネルを止めているネジ4本を抜けば可能です。
ピンコードはアンプを直置きするとかなり曲げられて無理がかかるのでいつもかさ上げが必要なのです。美しくないんですけど。。
この状態でしばらく聴き込んでみました。
やはりJBL SG520 + JBL SE460とはニュアンスが異なります。一言ではより今風、現代的。
静寂の中に広がる音場。いわゆるソリッドステートの音。普通の音。一定の水準のステレオコンポーネントであれば再現するのでは。機能が限定されて構造がコンパクトである事から一般的な音質の評価はJBL SG520 + JBL SE400SよりもJBL SA600単体の方が高いのも頷けます。
故瀬川冬樹氏が初めてJBL SA600を聴いた時の衝撃についての記述はオーディオ史の銘文として紙面に幾度となく登場します。氏はMarantz #7を聴いてプリアンプを自作することをやめ、JBL SA600を聴いて仕事を放り出して寝食忘れてレコードを聴いて、マークレビンソンに陶酔したのち人生の終焉を迎えました。まだCDが発売される以前の時代です。ご自身でオーディオの黄金期を体験され冴筆で多くの人々に夢を見せてくれました。今なお中古市場の相場を見るといかにその影響が大きかったかわかります。
晩年、ご自身のオーディオ遍歴を振り返った文章で「時代の先端を行く技術は常に後発に追い抜かれる運命にある」「一方でその個性を追求したものはそうはならない」という観点でMarantzとMcintosh製品を比較しています。現代(当時80年代)のMarantz#7の価値は何かと考えるとそれは「デザイン」。なんとクールな視点か。。でもそっくりJBL SA600にも言えるように思います。インダストリアルデザインの名器としての価値は他のJBLのアンプと同様に衰えることはないと確信しています。オーディオ評論家だった氏の多くのオーディオ遍歴の中で一番驚嘆したのはJBL SA600を聴いた時との事。50年後に当時の情景を思い浮かべながら夢の機器に触れることができて感謝です。
お読みいただきありがとうございました。
後日談
内蔵のプリ部をJBL SG520に置き換えて聴いてみました。
気のせいかゲルマニウムとシリコンの差を感じます。phono入力ではもっと違いが出そう。それよりもJBL SG520のS/Nの悪さが気になる。。(蓋外してたからかもしれないが)この個体はノーメンテだったので新たな課題が。。
JBL SE400Sで発表されたTサーキットと呼ばれるDCアンプにプリミティブなプリアンプを接続したものという解説が一般的。
あくまでもデザイン優先のアンプでフロントマスクの美しさはもとより、リアパネルはJBL SE401から受け継いだもの。というかフロントパネルにプリアンプがくっついて、リアパネルにメインアンプがくっついた構造。したがってプリメインアンプに必要な入出力端子はなんと下側から取り出すというもの。
分解してのメインテナンスのやり辛いこと!
ツマミも高級。パネルとの隙間は同心円である必要があるため加工精度が求められる。
フロントパネルはこのアンプの命なので取り外して保管。このように3分割のグタグタになる。ここはコネクターだろう!!、、と愚痴が出る。
プリアンプ部。コンデンサーが大量使用。以前一部が交換された既往あり。
リアパネルはヒートシンクを兼ねていて重量のあるキャスト。部品の配置はほぼ単品のメインアンプと同じ。
こちらはJBL SG520プリアンプの回路図です。JBL SA600のプリアンプ部は簡易的なものと言われていますが、比べてみるとEQ段、ボリュームコントロール段、トーンコントロール段とほとんど一緒です。
JBL SA600のマニュアルでもトランジスターの品番は公表されていない。現物を見ると全てモールドタイプなのでシリコントランジスターと思われる。でもなぜか塗装されていて品番がよく見えないのは困ります。
JBL SA600は回路的にはJBL SG520とJBL SE400Sを合体させたものと考えて良いようです。(しかし個人的には大きな違いを感じていますので後述させていただきます)
さて現在の状態ですが音は出るのですが電源スイッチを入れた時のノイズが酷く、DC漏れの可能性もあるため大切なスピーカーは接続できない、、という惨状。とりあえずスピーカー出力の電位を測ってみましょう。
、、確かにDCが出力されますが半固定抵抗で調節できます。マニュアルでは±0.1Vが正常とのことです。半固定抵抗は外観はやはり劣化(サビなど)ありますのでJBL SE460の時と同様に分解整備してみます。
どうしてもプリとメインの接続部を外さないと作業ができない。メインアンプの入力はRCAジャックになっていて外部プリを接続できる構造にはなっています。しかしシールドコードを引き込むスペースはなく猛者はケースに穴を開けていた写真を見たことがあります!潔く切断して作業開始。
これで組んでみるとDC漏れは十分に規定値以内に抑えることができます。またノイズなども感じられない、、ということでこの個体もここまでの修理にしました。(修理というより単に清掃か)
リアパネルです。後ろの美しさにこだわるのはスティーブ・ジョブズと一緒。
問題の端子類です。銘板は両面テープで固定されている。今回古いのを苦労して剥がしてやりかえました。メインアンプのみ引き出すにはリアパネルを止めているネジ4本を抜けば可能です。
ピンコードはアンプを直置きするとかなり曲げられて無理がかかるのでいつもかさ上げが必要なのです。美しくないんですけど。。
この状態でしばらく聴き込んでみました。
やはりJBL SG520 + JBL SE460とはニュアンスが異なります。一言ではより今風、現代的。
静寂の中に広がる音場。いわゆるソリッドステートの音。普通の音。一定の水準のステレオコンポーネントであれば再現するのでは。機能が限定されて構造がコンパクトである事から一般的な音質の評価はJBL SG520 + JBL SE400SよりもJBL SA600単体の方が高いのも頷けます。
故瀬川冬樹氏が初めてJBL SA600を聴いた時の衝撃についての記述はオーディオ史の銘文として紙面に幾度となく登場します。氏はMarantz #7を聴いてプリアンプを自作することをやめ、JBL SA600を聴いて仕事を放り出して寝食忘れてレコードを聴いて、マークレビンソンに陶酔したのち人生の終焉を迎えました。まだCDが発売される以前の時代です。ご自身でオーディオの黄金期を体験され冴筆で多くの人々に夢を見せてくれました。今なお中古市場の相場を見るといかにその影響が大きかったかわかります。
晩年、ご自身のオーディオ遍歴を振り返った文章で「時代の先端を行く技術は常に後発に追い抜かれる運命にある」「一方でその個性を追求したものはそうはならない」という観点でMarantzとMcintosh製品を比較しています。現代(当時80年代)のMarantz#7の価値は何かと考えるとそれは「デザイン」。なんとクールな視点か。。でもそっくりJBL SA600にも言えるように思います。インダストリアルデザインの名器としての価値は他のJBLのアンプと同様に衰えることはないと確信しています。オーディオ評論家だった氏の多くのオーディオ遍歴の中で一番驚嘆したのはJBL SA600を聴いた時との事。50年後に当時の情景を思い浮かべながら夢の機器に触れることができて感謝です。
お読みいただきありがとうございました。
後日談
内蔵のプリ部をJBL SG520に置き換えて聴いてみました。
気のせいかゲルマニウムとシリコンの差を感じます。phono入力ではもっと違いが出そう。それよりもJBL SG520のS/Nの悪さが気になる。。(蓋外してたからかもしれないが)この個体はノーメンテだったので新たな課題が。。
電源のコンデンサは無事でしたか?
私はSA660を入手したのですが、電源のコンデンサが国産に変えられていて、なんとかしてオリジナルに戻したいと考えています。
SA660は薄い緑色のサンガモが使用されているようです。
どこかにないですかね。
プリ部の電解コンデンサは替えた方が良いですか?
社長からアドバイスをいただいたのですが〜〜。