ごっとさんのブログ

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ゲノム医療で探るガン治療法

2017-08-06 10:52:53 | 健康・医療
患者の遺伝情報を網羅的に調べて最適な治療法を探る「ゲノム医療」がガン治療に取り入れられ始めたようです。

私はこのブログでも書いているように、ガンは遺伝子の異常による細胞の病気と考えています。確かに肺の細胞と肝臓の細胞では大きく違っていますが、ガン化した場合はその差は非常に少ないと思われます。

また現在よく使われている抗がん剤は、いわゆる細胞毒性物質であり、頻繁に分裂する細胞を攻撃するものです。したがって抗ガン剤はどこの細胞であろうと区別するとは考えにくいのですが、現在の医療制度では治験を行ったガンにのみ使用が許可され、胃ガンの薬とか肺ガンの薬と区別されています。

ガンの場合は遺伝子のどの部分が変異してガン化したかが重要であり、原発部位がどこかはそれほど重要ではないと考えています(化学療法の場合は)。

つまり胃ガンの薬であっても、ある遺伝子変異によく効く場合は、類似の変異を持つ肺ガンにも有効なはずです。ですからガンの遺伝子変異部位を特定し、そういったガンに効く治療薬を用いるのが効率的な治療と言えます。

最近国立がんセンター中央病院では、ガン細胞にどんな遺伝子変異が起こっているかを調べるということが始まっているようです。中央病院は2013年に114種類の遺伝子を調べ、治療や研究に役立てるプロジェクトを開始しました。これまで約200人が受け、65%にどの治療法が良いかの判断に有用な情報が得られ、15%が遺伝子異常に合った治療薬の選択につながったとしています。

こういった遺伝子検査は徐々に広がっており、横浜市立大学でも400以上の遺伝子を調べる「ガン遺伝子外来」を始めています。京都大学も2015年からオンコプライムという検査をはじめ、標準的な治療がうまくいかなかった人やまれなガン、原因不明のガンの患者が対象になっています。

この方法で多数の臓器にガンがありどこから発生したかわからない患者にこの検査を行い、遺伝子異常からある種の抗ガン剤が有効になったという例もあるようです。

しかし問題はこういった遺伝子検査が保険が適用されておらず、治験に参加するような場合以外は患者の負担がかなり多くなってしまうことです。京都大学でも2年間で155人が検査を受け、約9割の患者の解析に成功し、122人に候補となる治療薬が見つかっています。
しかし実際に治療したのは18人にとどまっており、全身状態の悪化ややはり医療費の問題があるようです。

このように遺伝子検査からのゲノム医療という手法が広く一般化するまでにはいろいろな壁がありそうですが、国もこういった個別化医療を推進していますので、もっと簡便な検査法などの研究が進むことを期待しています。