医療裁判傍聴記

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志布志事件:捜査は違法…国と県に賠償命令 鹿児島地裁

2015-05-15 22:41:44 | 法曹界
 2003年4月の鹿児島県議選を巡る選挙違反事件(志布志事件)で無罪が確定した元被告ら17人が、国と県に2億8600万円の賠償を求めた訴訟で、鹿児島地裁は15日、双方に総額5980万円の支払いを命じる判決を言い渡した。吉村真幸裁判長(川崎聡子裁判長代読)は「自白を強要した警察の取り調べは違法。漫然と公判を継続した検察にも合理性はない」と違法性を認めた。

 同種事件で警察(県)側に賠償を命じた裁判としては、強姦(ごうかん)・強姦未遂事件で男性の再審無罪が確定した富山県の「氷見(ひみ)事件」を巡る判決(今年3月)がある。起訴・公判を担当する検察(国)の賠償責任が認められるのは異例。

 最大の争点は捜査の適法性。初当選した中山信一元被告側が計4回の会合で現金計191万円を渡して買収したという起訴内容だったが、アリバイがあり1回目の会合に参加できないはずの元被告が含まれていることから、判決は「裏付けに乏しく、会合が存在していたとは考えられない。虚偽の自白」と判断した。

 県警の取り調べについて、逮捕を予告したり、買収の金額について供述をどう喝や誘導で強要したりしており「任意捜査の限度を超えている。社会通念上許されない」として違法性を認めた。検察に関しては、全被告が否認に転じても公判を継続した点を問題視し、注意義務違反を認定した。

 原告は、公職選挙法違反(買収・被買収)で起訴された元被告13人全員(うち2人は死亡)の本人か遺族。最長395日身柄を拘束され最高約500万円の刑事補償を受けた。今回の裁判は精神的な苦痛に対する慰謝料などを求めるもので07年10月、提訴した。志布志事件などを受け、一部の事件・過程で取り調べの録音・録画(可視化)が導入された。【鈴木一生】

 ▽井上順夫弁護団長の話 違法性を認めた一定の評価ができる判決。

 ▽鹿児島県警の今村順二首席監察官の話 判決内容を検討し適切に対応する。

 ▽鹿児島地検の平野大輔次席検事の話 関係機関、上級庁と協議して対応を検討したい。

2015年05月15日11時08分(最終更新 05月15日 12時45分)毎日新聞
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