シャンテ サラのたわ言・戯れ言・ウンチクつれづれ記

"独断と偏見" で世相・経済からコミックまで 読んで楽しい 面白い内容を目指します。 

「推定無罪」は日本にはない?

2012年07月14日 | アート/書籍/食事
写真は、パクラ Alan J. Pakula 監督、フォード Harrison Ford 主演の1990年米映画から。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「推定無罪 Presumed Innocent」(1987年トゥロー Scott Turow 原作 1991年 上田公子訳 文春文庫 357+351 ページ)、原作では主人公の検事補が本当に有罪かどうかは最後までわからないのですが、映画も見て2度読んで 真犯人が分かっているのに、またも全巻を読み切りました。
★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★
「米中部の大都市、地方検事選挙戦のさなかに、美人検事補が自宅で全裸の絞殺死体となって発見された。 捜査に乗り出したサビッチ検事補は、実は被害者と愛人関係にあった。 容疑が次第に自分に向けられて ... 」(裏表紙から引用)。
★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★
現職検事補が書いた法廷もの小説ですから、法廷に関する場面が長く 一般人には分かり易いとはいえず、3度読み返してやっと分かったというパートも多い。 法廷で満場を笑わせるような証人の "迷発言シーン" も多く、原作者が実際に見聞きしたことなどを応用して書いたものだろうと想像させます。

殺人の起訴理由は、現場に残されたビールグラスから見つかった指紋 (A)、被害者体内に残された体液 (B)、現場に残されたカーペット繊維の一部 などが、ことごとく検事補のものやその自宅のものと一致したからですが、冤罪と知っているのに証拠物を否定できない主人公のもどかしさと、それらの証拠物から真犯人を推理していく過程が随所にちりばめられ、これに関する下りは真犯人が分かっている読者でなければ よく分からないでしょう。

挿話も多く、それが単調な法廷ものにアクセントやアクションシーンを与える要素にもなっています。 結局 Aの証拠物であるビールグラスの警察内での紛失、Bに関して検死報告書を書いた監察医の不手際などが重なり、陪審員による評決を待たずに裁判所判事が無罪をいい渡す結末となります。

また 読み進むうちに、殺された検事補が必ずしも悲劇の被害者という要素だけではなく、検事補の中でも良い地位を狙って次期地方検事になりそうな人物に近づく 異常な出世欲を持つ様も描いています。

それは、「あいつは下半身を使って出世した」(警察関係者) という表現でも出てきます。 そして その他の警察関係者もクセの多い人種として描いているほか、監察医に日系人を配して これも好ましからざる風貌性格の人物としています。

原作者が付き合った警察関係者たちは、そろいも揃ってクセものばかりだったらしいですね。

警察関係者、判事や殺された検事補が収賄に関わっていたことなど、彼らも “清濁合わせ飲む” 一般人と変わりないことも書いています。 90年代初め 最初読んだ頃 これは米国社会のことで、日本の法曹関係者や警察関係者のことではないと思っていましたが、最近の日本の特捜部の不祥事や、冤罪事件などの経緯の報道を読んだりすると、米国社会特有の出来事だけではないとも感じますね。
……………………………………………………
1つ 作者のプロットの中で疑問に思うことがあります。 それは被疑者とされた主人公は、前述のAやBなどが証拠物件とされていますが、なぜ警察は被疑者の家宅捜索をしないのかということです。

家宅捜索すれば もう1つの証拠物件である “凶器” が見つかった可能性が高く、そうすると話しが違った方向に展開したかもしれません (原作では 法律の専門家である検事補が凶器を自宅に隠し持っているはずがないとして、立件した現職検事が要求しなかったことになっています)。

そして 文庫 357+351 ページは長すぎます。 被疑者の息子や父の話しなどは余計ものです。 登場人物の会話もダラダラと長いものが多く、これらがページ数を膨らませているのだろうと推測します。

もっと削りに削って 会話を短くすれば半分のページで済んだのではないかと想像します。 映画のシナリオは当然 要点要点だけで、被疑者の息子は登場しなかったと記憶しています。

今度は、日本の法廷もの小説を読んでみたいものです。
★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★
推定無罪とは「何人も有罪と宣告されるまでは無罪と推定される (疑わしきは罰せず)」という立証責任の考え方に基づいた近代刑事法の基本原則である (Wikipedia)。
★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★
以上

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。