見もの・読みもの日記

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劇場空間の成長/歌舞伎 江戸の芝居小屋(サントリー美術館)

2013-02-20 22:15:17 | 行ったもの(美術館・見仏)
サントリー美術館 『歌舞伎-江戸の芝居小屋-』(2013年2月6日~3月31日)

 私は、いまの歌舞伎は全く見ないので、大丈夫かな(楽しめるかな)?と少し心配しながら見に行ったが、面白かった。特に「第1部 劇場空間の成立」には、桃山~江戸初期の絵画資料がたくさん出ていて、さすが「屏風の」サントリー美術館だな、と思った。他館からの出陳資料も多い。多すぎて、展示替えがものすごくややこしいことになっているのは、何とかならないものか。

 本展のチラシや公式サイトのバナーを飾っている華やかな画像は、徳川美術館所蔵の『歌舞伎図巻』。私は幸い、見ることができたが、展示は2/25まで。役者も観客も、緻密な模様の描き込まれた華やかな着物をまとっている。観客の中には、南蛮人や朝鮮人(それとも明人?)の姿も。日本の侍も着物の上に洋風の付け襟をしていたり、腕よりも長いキセルを構えていたり、厭味なくらいお洒落。

 京博の『阿国歌舞伎図屏風』(重文、17世紀)は、まだ人物の動きも硬く、服装もやや地味。私が教科書で覚えた阿国像の原型だが、2/27-3/11展示で、会場では見ることができなかった。

 大和文華館所蔵の『阿国歌舞伎草紙』は、名古屋山三と思しき人物が、舞台の下の客席から立ち上がり、舞台上の阿国と目を見交わしている。山三の隣りの観客が、その様子を振り仰いで驚き呆れている。ああ、丸谷才一さんが言及していた「観客の中から山三の亡霊が出てくる」図だ、と感慨深かった。まさにこの場面を描いた資料は、少ないのではないかしら。

 近代の歌舞伎座関係の資料に見覚えがあったのは、山種美術館の『知られざる歌舞伎座の名画』展と重なるものが多かったためらしい。というか、会場に来てはじめて、この展覧会が、2013年4月に迫った新しい歌舞伎座の開場を祝賀するものだと気づいた。

 歌舞伎ファンの皆さんは、江戸の役者絵や番付を見ても「団十郎よ」「海老蔵だって」と楽しそうだった。なるほど、名跡というシステムには、こういう効果があるのだな。私は月岡芳年描く『岩倉の宗玄 尾上梅幸』に思わぬ再会をしたのが嬉しかった。会期後半は『市川三升 毛剃九右衛門』に展示替え。どっちも好きだなー。

 衣装や小道具も出ていて、贅沢だなあと思ったのは、「助六」揚巻の打掛け。白地に、当代一流の画家が絵を描いている。私が見に行ったときは、山口蓬春の作品と堅山南風の作品が出ていた。展示替えで、前田青邨や東山魁夷の作品も出てくるらしい(世田谷美術館所蔵)。面白いな。いずれ山口晃や会田誠が描いたりしないかしら。

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