見もの・読みもの日記

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浅草文庫の記憶/資料館における情報の歴史(東博・本館16室)

2013-02-21 23:55:45 | 行ったもの(美術館・見仏)
東京国立博物館・本館16室(歴史資料) 東京国立博物館140周年特集陳列『資料館における情報の歴史』(2013年1月8日~3月3日)

 展示趣旨に「資料館は、明治5年の東京国立博物館の開館時に、英国の大英図書館をモデルに設置された日本最初の官立図書館である『書籍館』に由来しています」と、いきなり言われても、一般利用者には何のことか、分からないだろう。私も分からなかった。

 東博のTOPページで、それらしいメニューを捜して「調査・研究」にカーソルをあわせると、「資料館利用案内」というリンクが現れた。「東京国立博物館資料館は、1872年(明治5年)の博物館の創設以来、博物館が収集・保管してきた写真・図書などの学術資料を、研究者を中心に広く公開する施設として、1984年(昭和59年)2月1日に開館しました」とある。なるほど、この施設のことらしい。博物館附設の、ライブラリー兼アーカイブズみたいなものかな、と納得する。

 その資料館の「情報の歴史」を紹介する展示ということだが、最初に目に入ったのが、1990年代のレーザーディスクプレーヤーだったので、この展示、何をする気なんだろうかと苦笑してしまった。確かにLD(レーザーディスク)は、もはや歴史である。Wikiを見に行ったら、1970年代に「誕生」して、2007年には「終焉」していた。

 それ以外は、博物局編の博物図譜とか蕃書調所伝来の洋書とか、ああ、この室でよく見る資料だな、と思っていたら、浅草文庫書庫の写真(和田一郎撮影)というのがあって、目が留まった。



 浅草文庫とは、明治時代初期の短期間(明治7/1875-明治14/1881)浅草蔵前に開設された官立図書館で、博物館の付属施設だった。複雑な由緒・沿革は、なかなか覚えきれないのだが、細身で読みやすい「浅草文庫」の蔵書印は、図書館や古書市で、たびたび目にしたことがある。しかし、建物の写真を見るのは初めてのことで、こんな野ッ原に建っていたのかーと呆れた。ま、国会図書館の関西館の周囲も(開館当時は)こんなものだったけど。

 ↓浅草文庫の鬼瓦。鬼瓦や蔵書印に使われたのは三条実美の字で、その原書を表装した巻子も一緒に展示されていた。



 他にもいろいろ面白い資料があったが、ひとつだけ紹介。明治41年(1908)の例規録である。



 「今般本館ニ文庫ヲ設ケ従来各部各課参考トシテ備置ク所ノ図書ヲ同庫ニ集メ以テ共同閲覧ノ便ヲ開カントス 依テ各部各課ニ現在ノ図書ハ一切庶務課文書掛ニ引継グベシ」という「御達案」を発している総長は、誰あろう、森鴎外である。解説によれば、このとき書籍だけでなく、本館の報告・統計・雑誌などの諸記録および館有の列品台帳・保管証なども一箇所に集められ、共同閲覧の便宜が図られたという。

 ミュージアムの運営には同時にアーカイブズの整備が必要なことを、ちゃんと理解していて実行に移し得た明治人は、いまの文化官僚より数段えらいと思う。そして、綿密な推敲の入った蔵書目録の類を見ていると、博物館の一隅で黙々と仕事に励んだ文庫担当者の姿が想像されて見飽きない。

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