「音楽&オーディオ」の小部屋

クラシック・オーディオ歴40年以上・・身の回りの出来事を織り交ぜて書き記したブログです。

オーディオ談義~「真空管PX25とWE300Bの聴き比べ」

2010年07月28日 | オーディオ談義

「アンプの改修が終わったよ。持って行きたいけど、明日の火曜日の午後は空いてる?」と、オーディオ仲間のM崎さんから電話。

「出来ましたか、それは楽しみですね。もちろん空いてますよ」

今年の1月にオークションで落札した真空管アンプ「PX25シングル」はひどい代物だった。左右のレベルの音がマチマチだし、ブ~ンというハム音がするしと、もうアタマを抱えっぱなし。

オークションの品物を購入する以上、博打はある程度覚悟の上だったが残念なことに期待ハズレだった。

しかし、使ってある出力トランスがオルトフォンのカートリッジで一世を風靡したあのデンマークの「JS社」製のもので「素性がいい」のは疑いを容れないのでなんとしても生かしたいところ。

「煮て食おうと、焼いて食おうと勝手にしてください。お任せしますのでとにかく全面改修をお願いします。」と、M崎さんに全幅の信頼を寄せて2週間ほど前に預けていたアンプがようやく手元に戻ってくる。

その間は手持ちの真空管アンプWE300Bで代用していたわけだが、いよいよ両者の全面対決が実現するので胸がワクワク。

PX25(イギリス)は欧州を代表する出力菅、片やWE300B(オールド)はアメリカを代表する銘菅。マニアの間でも優劣の論議が果てしない夢の対決~。

火曜日の早朝、テレビの天気予報で午後から急に天気が崩れて大雨が降ると言ってるので慌てて電話。「午後から大雨の予報です。運び入れる最中にアンプが濡れるとまずいので午前中に来てくれませんか?」

フッ、フッ、フ、「善は急げ」で一石二鳥とはこのこと。

「そうだな、11時ごろに着くように行くよ。久しぶりに一緒に飯を食べるかな」

さ~て、ちょっと早めにお見えになったM崎さん、出来上がってきたアンプを聴く前に、WE300Bのアンプのほうでまず試聴。

テスト盤はM崎さんの所望で内田光子さんが弾くベートーヴェンのピアノソナタ31番〔作品110)の第三楽章。終り際に強烈な低音が入っている。

ひとしきり聴いた後、いよいよ全面改修を施したPX25のアンプに入れ替え。結線を済ませてスイッチ・オン。「アキシオム80」ユニットにピタリと耳をくっつけてハム音を確認するもかすかなサーッという音。完璧、合格。見事なまでに治っている。

           

次に音出し。これまで聴いたことがないような澄んだ音が部屋中に広がっていく。

「素晴らしい!いやあ、こんな音が聴きたかったんです」と感激のあまり思わず口に出た。

「どこをどんな風に変えたんですか?」

「このアンプはどうもわけのわからない人が作ったみたいで、ちょっと回路がお粗末だったね。まず部品を全部バラしたうえで、最短距離で結線、部品をシャーシからできるだけ離す、シンプルな回路、アース一点主義といったところかな。測定器を見ながらハム音を最小に抑えるだけで3日間ほどかかってしんどかったよ。」

そして両菅の試聴結果については?

「やはりPX25のほうがクラシック向きだな。内田光子さんが目をつむって瞑想しながら弾いてる感じがするが、300Bの方は目をはっきり見開いて演奏してる印象。ジャズとかポピュラーを聴くのなら出番が回ってくるくらいかな」

まったく同感だった。伝統あるイギリスのお国柄を偲ばせる奥ゆかしくて渋い、それでいて芯と艶のあるPX25のサウンドに改めて敬服。やはりクラシックを聴くのならイングリッシュ・サウンドで決まりとの感を深くした。

ふと、今年の3月末に福岡で聴かせてもらったS木さん宅での音を思い出した。老練なイギリス人が作ったとされる世界で2セットしかないアンプとアキシオム80との組み合わせだったが、あの素直で抜けのいい音にせまる勢い。

こうなると次から次に聴きたくなる。次の試聴盤はベートーヴェンの後期弦楽四重奏曲12番。演奏はもちろんアルバン・ベルク・カルテット。

「ネット情報ではアルバン・ベルクの演奏は高音がキンキンしているといって大変評判が良くない難しいソースだが、こうして聴いてみると全然うるさくないなあ」

「ベートーヴェン後期の弦楽四重奏曲群はあまりの完璧な出来栄えに、後世の作曲家たちが手も足も出ないと嘆いたそうですね」

うん、これに匹敵するのはバルトークの作品くらいだと言われてるけど、ちょっととっつきにくいよね。たしかバルトークは餓死したんだっけ」

「そうです。在世中にまったく評価されず貧窮を極めたそうです。まあ、ホンモノの芸術家とはそんなものでしょう。一方、在世中に評価されて境遇に恵まれた人は後世に名は遺らないとおおかた相場は決まってます。神様はじつに公平でよくしたものです。」

雑談はさておき、これからずっとこんな音で聴けるなんてと、まるで夢のような毎日が始まりそうだが、これまでの経験からするといつも聴き込んでいく内に何らかの不満が出てくる


早くオーディオを卒業して音楽に専念したいのは山々で今度こそはと思うのだが・・・。

 

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