つい先日(14日)、お寺の大きな本堂で開催された「クラシック音楽会」(ブログ掲載済)。
いろんな曲目を聴かせてもらったが、中でも「オッ、これはいい!」と魅せられたのがコレッリの合奏協奏曲(OP.6)だった。実は昔から、この曲が大好きでイ・ムジチ(フェリックス・アーヨ版)のレコード(4枚組)を繰り返し聴いたものだった。
レコードからCDに切り替えたときに、アーヨ版のCDが復刻して発売されないものかと執念深くずっと追いかけたがとうとう発売されず仕舞い。
とりたてて高邁な(?)曲ではないが、弦合奏の響きが実に心地よくて聴いているだけで天国的な気分に浸れるのがいい。
今回聴かせてもらった演奏はイ・ムジチとは違った斬新さがあったので注目したわけだが、演奏者を確認したところ「エイヴィソン アンサンブル」(イギリス)というのが分かったので、すぐにメモして帰宅するなりHMVに注文し、ようやく自宅に到着したのが20日(土)の午後。
いずれも2枚組の「SACD」だが、画像右側のヴィヴァルディの「和声と創意への試み」(「四季」)は、これも昔イ・ムジチの演奏で一世を風靡したものだが、買い物ついでのおまけ程度で一緒に注文した。
音楽を聴くのにふさわしい季節になったことだし、土曜の午後から月曜にかけてずっと聴き耽ったが100%満足かと問われると、まあ85%ぐらい~。
あの大きな本堂で聴かせてもらったときの豊かな音響空間の拡がりには到底かないっこなく、それに比べると我が家の音はまるで箱庭で聴くみたい(笑)。
俗に「(女性の)色の白さは七難隠す」という言葉があるが、広大な音響空間に恵まれるとシステムのアラはすべて覆い隠されるといっても過言ではあるまい。
それにしても、このCDの録音の良さは特筆すべきで所有している中ではまさにダントツの存在。「LINNの超ハイファイ録音」ということに心から納得!これから「リファレンスCD」として大いに活躍してもらうことにした。
そこで、このCDをテスト盤として丁度よい機会とばかりに手元の4台の真空管アンプの聴き比べを行ってみた。スピーカーはもちろん「AXIOM80」を使用。それぞれのアンプの個性がよく分かって実に楽しい実験だった。
はじめにトップバッターとして「71Aシングル」の登場。
71Aは知る人ぞ知る名管である。さんざん真空管遍歴を重ねた人が最後に行き着くのがこの71Aとも言われている。このすっきりと見通しのいい透明感を知っているマニアは幸せなるかな!
こんな音を聴かされると、低音不足なんかどうでもよくなってしまうから不思議。以前、どなたかから「(周波数)レンジを追いかけるとキリがないよ」と忠告された記憶があるが、その言葉の持つ意味がこのアンプの導入によってようやく分かってきた。
優れた真空管は持ち主を大いに啓発してくれるが、このアンプの出力がたかだか0.5~1ワット程度とはとても信じられない!
次に「刻印付き2A3シングル」。
音の重心が少し下がってきて、全体的にうまくバランスが取れた音になる。情報量も十分だし、響きも艶やかで注文を付けるところがない。これ1台あれば、もうほかのアンプは要らないと思わせるほどの説得力がある。先日の「AXIOM80愛好者の集い」(4名)でも評判がもっとも良かった。「刻印付き2A3」はどうしてこんなにいい音がするんだろう!
次に「PX25シングル」。
最近、「71A」や「刻印付き2A3」に押されて、なかなか出番の来ないアンプだったが、ようやく久しぶりの登場となった。一言でいって過不足のない音でとりたてて不満はないが、いかんせん、絶対にこの音でなければいけないという魅力に乏しいようだ。
欧州の名三極管とまで言われる「PX25」が、こんなはずではないと思ったので出力管を純正のPX25(イギリス VR40)に交換。これまで聴いていたのは実はチェコ製のPX25だった!ついでに本気度を示して整流管を「WE422A」と奮発。
差し換えて一聴した途端に「これだ、この音なんだ!」と思わず頷いた。中高域方向に独特の音づくりがしてあって、ヴァイオリンが実物以上に美しく聴こえる!しかし、この辺は“装飾過多”として好き嫌いが大きく分かれるところだろう。自分は大好き~(笑)。それにしても出力管次第でガラッと印象が変わるのだから真空管は奥が深い。
最後に真打の「WE300B(オールド)シングル」の登場。
これは手持ちのアンプの中でもっとも“金食い虫”のアンプである。おそらく現在の時価総額に引き直しても“まあまあ”のレベルに到達するはず。もともと、根が貧乏性のせいか元を取り返したい一心なので一番良く鳴ってほしいアンプである(笑)。
先日の「AXIOM80愛好者の集い」では惨敗を喫したが、あれからいろいろチャレンジするうち一番効果があったのがドライバー管を英国マツダのAC/HL(μ=35)からムラードのTT4(μ=6)に差し換えたところ、これがバッチリ。
さて、その試聴結果は?
“四番煎じ”は好ましくないのでここではクドクド言うまい!「美は人を沈黙させる」(小林秀雄)とだけ述べておこう。
総括すると、4台のアンプそれぞれが他では得られない持ち味を発揮してくれて、よくもこれだけ粒ぞろいのアンプを揃えたものだと我ながら感心した。誰かの言葉ではないが「自分で自分を褒めてやりたい」(笑)。
最後に、前二者のアンプの試聴はDAコンバーター(ワディア製:ボリューム付き)にプリアンプを接続した方がGOODだったが、後ろの二者のアンプは出力に恵まれていたせいか、プリアンプを外した方が聴きやすかった。
この辺りはプリアンプの功罪を含めて研究の余地がまだありそうで、次回に「AXIOM80」仲間がお見えになったときに比較試聴のうえ確認してもらうことにしよう。