「音楽&オーディオ」の小部屋

クラシック・オーディオ歴40年以上・・身の回りの出来事を織り交ぜて書き記したブログです。

魅惑の真空管アンプ~その4~

2016年10月25日 | 魅惑の真空管アンプ

この「魅惑の真空管アンプ シリ~ズ」も早くも4回目を迎えた。最初の稿を登載してから丁度1週間が経過したが、なかなかの反響振りで、まず1日当たりのアクセス数がこれまでで最高の「800 IP」台に到達するなど通常の2割増し近い伸びには驚いた(笑)。

おそらく、巷には高額な真空管アンプが溢れかえっており、少々食傷気味のところに「安価なテレビ用の真空管からいい音が出る!」
という意外性と新鮮さが受けたのだろう。

改めて製作関係者に敬意を表し、「真空管オーディオの真髄ここにあり」と言いたいところだが、「いい音」かどうかを最後に決めるのは当事者である。

関西の読者の方(仮にMさんとしておこう)から「JBL、アルテックのスピーカーを使ってますが低音不足に悩んでいます。6FD7の記事を拝見して、これだと思いました。ぜひアンプ製作の依頼をしたいのでお願いします。」という趣旨のメールが届いた。

当方の記事の内容を信じていただいたのはありがたいし、まことに光栄の至りだが、自分は過去にオーディオ専門誌の記事を鵜呑みにして散々涙を流してきたのでMさんに同じ轍(てつ)だけは踏んでほしくない(笑)。

そこで「音の好みやシステムとの相性の問題がありますので、一度試聴されてから決めた方がいいと思いますよ。試聴が一段落したらこのアンプを送付しますのでしばらくお待ちください。」と、返事した。

真空管アンプの低音域の問題は自分もメチャ苦しんできたのでMさんのお気持ちは痛いほどよく分る。できるだけ早く送ってあげよう。

さて、オーディオ仲間のNさん(大分市)にお貸ししていた「6FD7」アンプだが、貸与期間の三日が経過したのでさっそく回収に出かけて持ち帰った。結局Nさんから「このまま置いていって欲しい」という言葉は最後まで聞けなかった(笑)。

しかし、このアンプはまだ来たばかりなので、いろいろ鳴らし方を研究するところがあって興味が尽きない。

不在中の3日間で頭に描いていたのが「今度はプリアンプを通さずに聴いてみよう」だった。これほど(音の)重心の低いアンプならプリアンプ無しでもうまく鳴ってくれそうな気がする。

レコードと違ってCDオンリーの愛好家の場合「プリアンプ不要論」は延々と続く「古くて新しいテーマ」である。

何ごとも「シンプル・イズ・ベスト」なので、プリアンプ無しでいい音が出ればそれに越したことはない。「プリアンプは必要悪だ」という思いはずっと変わらない。

ちなみに6年半ほど前に投稿した「プリアンプはもう要らない?」は、いまだに過去記事の閲覧数ではいつも上位に食い込むほどの常連組だ。

そのくらい「プリアンプ不要論」に対して読者の関心度の高さが伺えるわけだが、当時と違ってこのテーマに対する(現時点の)じぶんの結論は「結局、相性の問題に尽きる」と考えている。

つまりDAコンバーター、メインアンプ、スピーカーがそれぞれの長所と欠点を補い合い「三位一体」として、うまく調和してくれればそれでヨシ、もし、そうじゃないときはプリアンプを介入させた方がマシ。

もちろんDAコンバーターにボリューム調整機能が付いていることが前提条件である。プリアンプの代わりにアッテネーターを使うなんてのは論外だ(笑)。

今回の実験ではDAコンバーターに「27ixVer3.0」(ワディア)、メインアンプに「6FD7シングル」、スピーカーに「AXIOM110」(グッドマン:箱はウェストミンスター)という組み合わせだった。

ちなみにこのDAコンバーターは初めからプリアンプを使用しなくてもいいような仕様になっており、出力インピーダンスは「1Ω以下」となっている。

胸をワクワクさせながら聴いてみたところ、これぞこれまで聴いた中でベストのサウンドだと唸ったねえ!(笑)。

周波数レンジの広さ、音の立ち上がりの早さ、低音域の力感と制動力も申し分なし。しかもDAコンバーターのボリュームが「60/100」あたりで十分な音量が確保できるのでエネルギー感にも余裕がある。さらにプリアンプを入れていた時よりも明らかに高音域が素直になっている!

これなら「WE300B」アンプや「PX25」アンプの出番はもうないと一瞬思ったが、瞬間風速での感想は危険だし、後々ブログが書きづらくなるので、断言するのは止めておこう(笑)。

このアンプの生みの親の「北国の博士」にこの状況をぶつけてみると「ケース・バイ・ケースですがプリアンプを入れると、どうしてもレンジが狭くなりがちです。その点この6FD7アンプは低音域から高音域までレンジの広さが持ち味なのでたしかに直結の方がいいかもしれませんね。」

そういうわけで、これからこのアンプを持っていって他流試合をする場合、プリアンプを使わなくて済むように予備のワディアのDAコンバーターも携帯してセットにして試聴しようと決めた。

実は思い当たる節がある。このDAコンバーターはつい最近コンデンサーを36個も替えたりしてオーバー・ホールしたのだが、その効果が如実に出てきたようなのである。以前、パワーアンプと直結したときにはもっとボンヤリした音だった記憶がある。成る程、あのときは10年以上も経過してコンデンサーが劣化していたせいで性能をフルに発揮できなかったのか・・・。

大枚をはたいて懐が痛かったけど、やっぱり修繕して良かった(笑)。

             

というわけで、調子に乗って次から次にテスト盤を試聴した。

エンヤの「Caribbean Blue」では冒頭の「ガツン」という衝撃音に対して真空管アンプによってはスピーカーから「ザザッ」という音が出て(アンプが)クリップするのが常だったが、この「6FD7」アンプはその気配が微塵もなくスンナリ通り過ぎていったのには感激。

ジャズの「サキソフォン・コロッサス」(ソニー・ロリンズ)の1曲目「セント・トーマス」の冒頭のシンバル(マックス・ローチ)はマニア泣かせの一撃だが、こればかりは惜しいことにきらびやかさがイマイチだった。

これは明らかにスピーカー(フルレンジ)のせいだろう。こういう音はJBL「075ツィーター」の独壇場だが、もう拘らないことに決めた。

これまでこの1曲のためにどれだけ苦労し、そのせいでシステム全体がおかしくなったか、身を持って体験している。

オーディオは捨てることも肝心だ。

と、偉そうに吐(ぬ)かしてみたが、単に根気が失くなってしまっただけかもしれない…(笑)。
 

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