「人の褌で相撲を取る」という言葉がある。ご存知の方も多いと思うが、意味は「他人のものを利用したり、他人に便乗したりして、利益を得ること」とある。
ご覧のようにあまりいい意味では使われない諺だが、今回の一連のオーディオ実験では意図しないうちに結果的に「人の褌で相撲を取る」ことになってしまった。
「反省だけなら猿でもできる」のだが(笑)、以下、弁解かたがたその顛末を記してみよう。
このところ豊富なオーディオ機器に囲まれたMさん(大分市)から次から次に我が家のオーディオに使えそうなものを借り受けている。
ま、借りるというよりも、「うまく鳴ってくれるといいのですが」ということでMさんが興味本位で持参されたものもあるので、お互いに利益を享受していることにもなるが、それはさておくとして・・・。
その借り受けたオーディオ機器とやらを列挙してみると、
1 チャンネル・ディヴァイダー(TR式:クロス3000ヘルツ)
2 サンスイ「SP-30」のエンクロージャーと松下のフルレンジユニット
3 テクニクスのツィーター
4 OTLアンプ
以上4つの機器群だが、実験大好き人間にとってはこういう機器(材料)はまさに宝の山としか言いようがない。
はてさて、どうしてそんなに実験が好きなのか?まずその辺を明らかにしておこう。
オーディオは理論も大切だが、まだまだ理論だけでは解明できないことの方が多い。なぜなら、それぞれの環境要因によって変動指数が無限にあり、出てくる音も千差万別なのが一因だ。
たとえば部屋の大きさとその構造、デジタル系機器の性能、アンプとスピーカーの能力やクセなど、それぞれの要素が複雑に絡み合って、無数の選択肢による音が世界中に鳴り響いているのが現状だ。
したがって、「あの人がいいと言っていた機器を購入してみたがサッパリだった、恨んでやる。」といった悲劇がしょっちゅう起こるのも自宅の環境に合わなかっただけなので“むべなるかな”(笑)。
ついでに、申し述べておくと先般このブログで絶賛したテレビ用の真空管「6FD7」アンプだが、現在はSさん宅で大活躍中だ。
それも使い方にノウハウがあって、プリアンプやマッチングトランスを通すとまったくダメだそうで、CDプレイヤーから直結してアンプ付属のボリュームで調節して「AXIOM80」を駆動すると、これまでで一番良くAXIOM80が鳴っていますよと大満足のご様子。
そういうわけで、オーディオに自然科学における絶対的な公式のようなものはとうてい成り立ちようもなく、ケースバイケースによる個別の実験がとても重要性を帯びてくると思うのは自分だけだろうか。
「オーディオは何でもありだ」と公言する所以でもある。
我が家では大なり小なり毎日のように実験を積み重ねているが、そのたびに新しい発見があり、質的に向上するのを自覚している。ま、錯覚している部分もあるだろうが(笑)。
今回の実験も大いに参考になったので、忘れないようにその経過や結果を記録しておくこととしよう。
それではまず1から。
1 チャンネル・ディヴァイダー(以下「チャンデバ」)
Mさんによると「真空管もTRも原理は同じですよ。」というわけで、どちらかといえばTR式の製作機器が多いが、今回のチャンデバもTR式だった。「このチャンデバはひときわ力を入れて作りました。」とのことで、まず上蓋を開けて覗いてみよう。
非常に丁寧で整然としたツクリなのでいかにもいい音が出そう。
2ウェイ方式でクロスオーバーは3000ヘルツなので、我が家のJBL「D130」+テクニクスの「ツィーター」にそのまま使える。わざわざ我が家向きにあつらえたようなチャンデバで、まるで「猫に鰹節」(笑)。
ネットワーク方式に比べてチャンデバは周波数帯域ごとにアンプを使い分けできるところがいい。散々迷った挙句、次の構成にした。
<~3000ヘルツ>
パワーアンプ「71Aプッシュプル」 → スピーカー JBL「D130」
<3000ヘルツ~>
パワーアンプ「6SN7プッシュプル」 → スピーカー テクニクス「ツィーター」
いよいよ音出しだが、チャンデバの妙味は低音域と高音域のボリューム調整にあり、そこに使用者のセンスがモロに出てくるが、いろいろ調整した結果、低音域のボリュームをフルにし、高音域が13時の位置でようやくバランスが取れた。
こじんまりと音がまとまっていた感があるネットワーク方式のときに比べて、チャンデバにすると低音域の充実度が飛躍的に高まり、雄大なスケール感が醸し出されるところがいい。
それにアンプ2台を駆使することによって、音楽ソースに対する音のコントロールの自由度が大いに高まる。
良し、これでこのシステムは決まりだ!
このチャンデバをぜひ譲っていただくことにしよう~(笑)。