自分の「音楽&オーディオ」の歴史をふり返ってみるとおよそ半世紀近くにもなる。
よくもまあこれだけ長く飽きもせずといったところだが、おそらく単発の趣味だと早晩行き詰まっていただろうが、音楽とオーディオの両者がうまく絡み合ったところに飽きが来ない理由が隠されているような気がしている。
何しろオーディオ次第で音楽鑑賞の趣がコロッと変わるのだからとても変化に富んでいる。
さて、そういう中で何と言っても大きな位置づけを占めているのがイギリスの名門スピーカー「タンノイ」さん。
前回のブログに記したように20代の頃に五味康祐さん(故人、作家)の著作「西方の音」に多大の影響を受けて以降、しばらくはタンノイ一辺倒だった。もちろんクラシックが好きだったこともその一因。
最初に購入したのがあの有名な「ⅢLZ」(オリジナル・イン・キャビ:25センチ口径)で、それで満足しておれば良かったものの、ついつまらぬ「欲」を出してしまい「インパルス」(38センチ口径)、そして「ウェストミンスター」へと手を広げてしまった。
実際に音を聴いて惚れ込んで購入したのなら納得もし長続きもしたのだろうが、多分に空想に耽った夢物語の延長だったものだからいわば「砂上の楼閣」みたいなもので、早晩描いていたイメージが崩れ去るのは時間の問題だった。
何と言ってもあの中低音域のぼんやりとした音に我慢がならなくなった。もちろんそれが“いい”という人も沢山いるので、あくまでも好みの問題に帰するのだが自分なりにもっと量感と分解能が両立して欲しいと切実に願った。
そういうわけでつい無茶をやってしまい、タンノイのユニット「HPDー385」を取り外してJBLの「D-130」を取りつける羽目になってしまった。取り替える際に、はじめてウェストミンスターの裏蓋の20個ほどもあるネジをこじ開けるときは戦々恐々としていたのが今となっては非常に懐かしい(笑)。
それ以降通算するとおそらく10回以上裏蓋を開け閉めしているし、エンクロ-ジャーの内部もネットワークの部品を取り払い、内部空間を大きくしたりして大改造を施している。オリジナルの面影はすっかり払拭されているのでおそらくオークションに出してもきっと二束三文に叩かれるに違いない。こうなりゃもうタンノイさんと心中だあ~(笑)。
ところがそれほどまでして取り付けたJBLさんだがどうも望んだようには鳴ってくれない。
タンノイのユニット専用に作られた箱にそれ以外のユニットを取りつけてもうまくいかないのは当たり前だが、そこに気付かないのが欲に目がくらんだ素人の悲しさ。ほんとうに「ストレイシープ」の状態になってしまい彷徨すること10年以上。
JBLのユニットを弄り散らしては「ああでもない、こうでもない」とさんざんもがいた挙句、とうとうそのJBLと決別する日がやってきた。
「周波数レンジ」よりも「音像定位感」を重視しようとの方向転換である。
作業はこの26日(金)のことだった。朝から昼過ぎまでおよそ半日がかりの仕事となったが、重たいユニットの取り外しと取りつけなどにホトホトくたびれてしまい、とうとう終わり際には「疲れた~!もう音なんてどうでもいいや」という心境になってしまった(笑)。
湿気を寄せ付けないように厳重に梱包していたタンノイのユニットを押し入れの奥深くから慎重に取り出したのがまず第一歩。同軸2ウェイなので低音用と中高音用のSPターミナルにそれぞれ3m以上のSPコードをハンダ付けした。
JBLのユニットを取り外しこのユニットを取りつけたのがおよそ2時間後。
取り付け後の画像がこれだが、前述どおりエンクロージャー内部を大改造している。ご覧のとおりネットワーク部品を納める上側の棚を取っ払ってしまい、より広いスペースを確保している。もちろん、あの鈍い中低音域(愛用者には失礼!)を少しでも避けるためである。
無事取りつけ作業が済んだものの一難去ってまた一難。肝心のネットワークを構築しなければならない。はじめに、オリジナルの部品を使って「クロスオーバー1000ヘルツ」(12db/oct)でやってみたものの、どうもあまり芳しくない。
3日間ほどの試行錯誤を通じてやっと落ち着いたのがこれ。
名門「ウェスタン社」の鉄芯入りコイル(1.96mh:ミリヘンリー)を使って「クロスオーバー650ヘルツ前後」(6db/oct)、そして中高音域用に「22μF:マイクロファラッド」のコンデンサーを使って「クロスオーバー900ヘルツ前後」(6db/oct)にしてみたところ、どうやら繋がりがうまくいった。
正直言ってタンノイさんのネットワーク部品はあまりよろしくないとの感想を持っている。ここだけの話だが(笑)。
3台のアンプの相性選びも大変だったが結局、最後には次のように落ち着いた。
低音域(~650ヘルツ)
DAコンバーター「ワディア」 → 「WE300Bアンプ」 → 「HPDー385」低音域部分
中高音域(900ヘルツ~)
DAコンバーター「ワディア」 → 「71Aプッシュプルアンプ」 → 「HPDー385」中高音域部分
高音域(15000ヘルツ~)
DAコンバーター「ワディア」 → 「71Aシングルアンプ」 → 「JBL075ツィーター」
つまり「JBL3ウェイ・マルチ方式」転じて「タンノイ3ウェイ・マルチ方式」となった。
はたしてツィーターが要るのかどうか、慎重にテストしたが有るのと無いのとでは大違いで我が家では絶対の必需品だった。完成後は次のように非常にすっきりした形になった。
そして肝心の音の方は・・・。
自画自賛は“はしたない”ので遠慮しておくが、オリジナルに比べると「ずっとヌケが良くてバランスの取れた音」とだけ言っておこう~。
ただし、オーディオは将来どういうことが起こるか分からないので取り外したJBLのユニットはすべてきちんと保管しておく積もり(笑)。