長年オーディオをやってて、「自分はどうしてこうも駄耳なんだろう」と思うことがときどきある。
今回がまさにそうだった。
ウーファーを4発にしてその迫力に酔い痴れていたところ、大分のオーディオ仲間のEさんとOさんのお二人が「聴かせてくれ」とご来訪。
「どうぞ、どうぞ」。7月7日(木)の午後のことだった。
試聴盤として持ってこられたのが童謡歌集。ボーカルを聴けば装置の良し悪しが分かるとのことで、歌手の口の開け閉めが目に見えるようになれば合格とのこと。
ほかにもいろいろと聴いていただいたのだが、その迫力には感心されるものの、お二人ともどうも落ち着かなくて浮かぬ顔。
要は、装置に対して真正面の位置で聴くといいのだが、ちょっとでも横にずれると左右のバランスがくずれて音がゴチャゴチャしてる感じということらしい。
いつも一人で聴いているので、真正面からしか聴かないが、そう言われてみてちょっと横にずれて座って聴いてみると「成る程」と思われて、たしかにご指摘のとおり。
「これは、ちょっと問題あり」。どこに原因があるのかなあ?
2時間半ほど試聴して帰られたが、疑念は晴れぬまま。
そうすると、湯布院のAさんが、丁度大分にご用事があったとかでその帰りの午後6時過ぎ、お立ち寄りになった。
歌劇「マクベス」(ヴェルディ作曲)を聴かせて欲しいとのことで、じっと目を瞑って聴かれていたAさん。
やおら、「どうも”音像定位”に問題があるようです。この前聴かせていただいたジャズのときは気付きませんでしたが、「マクベス」を聴くとよく分かりました。
歌手がステージ(舞台)の上で歌っているというイメージがどうしても湧いてきません。
これは「アキシオム80」(中高域用)をウーファーの横に持ってきたのが原因だと思います。いっそのこと、アキシオム80をウーファーの上に載せたらいかがでしょう。」
エッ、想像もつかないご提案にビックリだが、実験は大好きなので「やってみましょうか」と二人で「よっこらしょ」と持ち上げて直に載せてみた。
すぐに試聴すると「随分良くなりました。これでバッチリ問題解決です。広い部屋ならともかく、やはりスピーカのユニットは縦一列の配置に限りますね。何といっても音像定位が第一です。」
盲点だった。中高域のユニットは耳の高さの位置で聞くのがいいと思っていたので、ツイそのことにとらわれてしまった。
タンノイがあのふやけたような低音と伸びきらない高音(ゴメン!)なのに、それを補って余りあるようになぜこんなに長い生命を保っているのかようやくその秘密の一端を知る思いがした。
低音から高音までを同じユニット(同軸)に収めてあるので、「究極の音像定位」を実現していることにあった。
定位がこれほど重要とは思わず、つい音の迫力に負けてしまった自分がつくづく情けない。
しかし、試聴盤に真っ先にジャズを持ってきたのが悪かったのかもしれない、な~んて別のせいにしたりして。
とにかく翌日は起きると、改めてSP台の製作に取り掛かった。
アキシオム80をウーファーの上に直に載せるのはやはり気になる。
きちんと寸法を測って、量販店で材料をひとまとめで購入し、すぐにペンキ塗り。
幸い梅雨時にもかかわらず、8日はお天気だったので1時間ほどで乾いた。
このところのネジ絞め作業で右手首が痛いが「いい音」のためにはそういうことは言ってられない。
ようやくドリルを駆使して出来上がり。何と午前中一杯かかってしまった。
午後からは仕上げの段階。一人でアキシオム80の入ったSPボックスを下ろしたり載せたりするのはとても無理なのでAさんに応援を頼んだところ、ありがたいことにすぐに来ていただいた。
およそ30分ほどで力仕事が終了して完成した全景が次のとおり。
早速「マクベス」を聴いたところ、音響空間が広大になる中できちんと歌手たちが地に足が着いて歌っている印象。
部屋のどの位置で聴いても違和感がまったく無くなった。
フ~ッと、思わず深いため息が出た。
あとは地震対策。システムがこれだけ高くなるとやはり倒壊の危険性があって無視できない。当地も南海地震が今や遅しと虎視眈々なのでユメユメ油断は出来ない。
壁板に大きなネジをねじ込んで、大きな号数の太い透明の釣り糸で固定することにした。
それにしても、今回は独りではおそらく気付いていなかっただろう様々な弱点を、いろんな方から教えていただいてまったくオーディオ仲間はありがたいもの。
感謝、感謝・・・。