「お久しぶりで~す、お元気ですか?システムを一新しましたので、ご都合がよろしかったら試聴にお見えになりませんか。」
と、クルマで10分ほどの所にお住いのYさんに連絡したのは厄介な18号台風が過ぎ去った昨日(18日)の昼下がりのことだった。
すると「そうですね~、行ってみましょうか。」
Yさんの場合、ご用事がある場合を除いて前向きの回答の確率がおよそ100%なので大いに助かる(笑)。
今回は、我が家が抱えている二つの課題についてYさんのご意見をぜひ参考にさせてもらおうという魂胆である。
1 新しい3ウェイシステムの試聴について
2 あまりうまく鳴ってくれない「AXIOM80」対策の相談
結果的には、この積極性が功を奏することになるのだから、やっぱりオーディオの一寸先は闇だった(笑)。
まず1から。
聴いてもらったのは、ブルックナーの交響曲第8番(チェリビダッケ指揮:伝説のリスボンライブ版)とマーラーの4番(ゲルギエフ指揮)だった。
「音にゆとりが感じられますし、スケール感も凄いですね。膨大な情報量を隅々まで再現していて、チャンデバと2台の真空管アンプが能力をフルに発揮している印象です。とてもいいですよ。」
いつも辛口に終始するYさんからこんなに褒め称える言葉が聞けるのも珍しい。1時間ほど聴いてもらったが、最後に「チャンデバにボリュームが付いているので、DAコンバーターからプリアンプを経由せずにパワーアンプに直結してみても面白そうですね。」と一言。
成る程!そのうち試してみよう。
次に、いよいよ懸案事項の2へと移った。
「どうしてもAXIOM80がうまく鳴ってくれないので困ってますよ」と泣きついたわけだが、しばらく耳を澄ましておられたYさんが次のように述べられた。
「たしかにサ行(サシスセソ)がちょっとキツイですね。これはSPケーブルに原因があるような気がします。何しろ古いユニットですし、製作当時の平凡な撚り線の方が合っているような気がしますよ。」
つい最近のブログでも述べたように「AXIOM80」ほどデリケートなユニットは滅多にない。駆動するアンプはもちろんRCAコードからSPケーブルまでありとあらゆるものにケチをつけてくるのにはほんとうに参ってしまう(笑)。
対策として4つほど手立てを講じて「万策尽きた」と勝手に思っていたわけだが、Yさんのご指摘で、エッ、まだあったんだと驚いた!
先入感がない白紙状態からの他人の意見は完全な盲点を突いてくる!
現在SPケーブルに使っているのは「LANケーブル」だが、JBL「D123」の口径30センチでは完璧といっていいほどの鳴りっぷりなので、その性能を露ほども疑わなかったが、そういえば独特の構造とツクリを持つ古典派タイプの「AXIOM80」には合わないのかもしれない。
思いたったが吉日で、Yさんの目前でごく普通の「撚り線」ケーブルを引っ張り出して接続してみたところ、何と見事にサ行のキツさが低減したのである。
点数にたとえるとこれまで70点だったのが80点まで向上した感じで、これには心の底から驚いた。
と同時に、ナ~ンダと自分の考えの至らなさに、もうガックリ(笑)。
ただし、後日、この「撚り線」ケーブルでJBLの「D123」を聴いたところ音がやや籠った印象を受けてサッパリだった。試しに「LANケーブル」に代えてみたところ、クリアで輝きのある音に大変身で断然こちらの方がいい。LANケーブルがもたらす鮮度はやっぱり凄い。
結局「AXIOM80」と、「JBL」とでSPケーブルを使い分けすることにしたが、面倒だけど仕方がない。
ところで、Yさんが辞去される際にポツリと洩らされた。
「真空管アンプで聴くと歌手の声の湿り気の具合がとてもいいですね。長年、TRアンプを使ってきましたが代えてみたい気がしています。250という真空管がありますが、どんな風でしょうか?」
「250ですか!製作期間が短かったので有名ではないですが、知る人ぞ知るたいへんな名管ですよ。音にウルサイYさんにはピッタリだと思います。
しかし、なかなか古い球なので程度のいい物が手に入らないようです。オークションで購入するのは慣れないとちょっと危険でしょう。そのうち、古典管に詳しい北国の真空管博士に訊いてあげますからしばしお待ちください。」
Yさんはメチャ高価な海外製のTRアンプ(マークレヴィンソン)を使っておられるが、そのYさんでさえこうして真空管アンプに興味を示されるのだから、真空管アンプ・ファンとしては味方が増えて心強い限り(笑)。
話題のついでに、その真空管アンプについて、久しぶりに「71Aプッシュプルアンプ」を登場させてみよう。
オークションで信じられない安値で落札し「北国の真空管博士」から昨年(2016)の1月に大改造していただいたアンプである。
パーマロイ・コアのインターステージ・トランスが回路に組み込んであり、出力トランスはあの有名な「ピアレス」で、とても由緒正しい部品が使ってある。ナス管がズラリと並んだ様(さま)もなかなか壮観である。
右側の4本が前段管の「27」(メッシュプレート)だが、全体的に少し音が硬い印象を受けていたのでこのところ遠ざけていたのだが、思い当たる節があって右端の一次管の2本を「ARCTURAS」の「127」(ブルー管)に代えたところ音がとても柔らかくなって全体的に音に艶が出てきたのには驚いた。
博士が大好きな「ブルー管」の良さはつとに耳にしていたが、たった2本で全体の音質が激変するんだから真空管アンプはやはり奥が深い。これも一寸先は闇だ(笑)。
プッシュプルアンプ独特の音を押し出す力もあって、さっそく「AXIOM80」を鳴らしてみたが、重心の低さはWE300Bシングルアンプに優るとも劣らずで、もしかしてこれが我が家のベストアンプかもしれない。
3ウェイシステムの低音域用に使うか、それとも「AXIOM80」用に使おうかと真剣に思案中(笑)~。